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異界の旅人  作者: ろーりんぐ
《第一章》
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おまけ(楓と百合香は見ていた)

 今回のおまけは、一章の終わりのその後の話です。

 まばゆい光が、早夜達3人を包んでゆく。そして、光が最高潮に達し、ふと消える。

 早夜達三人の姿は、忽然と消えていた。



 そして、その光景を見ていたものが2人、楓と百合香である。



「……なんか今、凄い物を見なかったか?」


 茫然と呟く楓。


「ええ……何かよくアニメや漫画に出てくる魔方陣によく似てたわ……」

 

 今日は何故か、女教師風の百合香が言った。彼女もまた茫然としている。

 すると、それを聞いた楓がでれっと頬を緩める。


「そっかー……早夜チャンは魔女っ子だったのかー……」


 そんな楓を冷たい目で見つめる百合香。

 そして頬に手を当て、ほぉーと息を吐き出し外を見る。


「……それにしてもこの状況、パパやママにどう説明しようかしら……」

「うーん……正直に言って理解されるかどうか……」

「じゃあ、こんなのはどう? いつまでも告白しようとしない亮太に、痺れを切らした蒼が、早夜ちゃんと手に手を取り合い愛の逃避行……亮太はそれを追って愛を探す旅へと――……」

「ぶっ! 何それ、うそくさっ! でもおもしろっ!」

「じゃあ、それでいきましょう……」


 誰もつっこむ者がいないため、二人の暴走は止まらなかった。






「……それ、本気で言ってるのかな……」


 蓮実が静かに言った。

 その顔は笑ってはいたが、彼からは冷たい冷気が流れ込んでくるようだった。

 そんな蓮実の様子に目を泳がせる楓。

 百合香は、はぁーと溜息を吐くと申し訳なさそうに言った。


「私はそんな馬鹿げた話、止めなさいと言ったんですけど……」

「っ!! 百合香! てめっ、裏切ったな! お前が先にっ、ウガッ!!」


 ガシィッ!! と、片手で楓の頭を掴む蓮実。そのままギリギリと指に力を込めてゆく。


「女の子のせいにするなんて、最低だね、楓? 僕はそんな風に育てた覚えはないよ」

「そうだよ、楓。たとえ事実はどうだったとしても、そこは自分が言い出しましたって言わなきゃ……それで? 早夜さんや蒼たちはどうなったって?

 今度は本当の事を話しなさい……」


 茜も怒っているのか静かに言った。

 黙って聞いていた、マリアや翔太郎もこくこくと頷く。


「楓? 早夜さんのお母さんにも、納得いくように説明するんだよ」


 そう言って蓮実は、ようやく楓から手を離した。

 そう、早夜の母、アヤもこの場にいた。

 そしておろおろと落ち着き無く、不安そうにしている。

 突然の報せに化粧もろくにせず、慌ててやってきたアヤ。


「……ううーん、正直に話すけど……例え信じられないような話でも、信じてくれよな。今度のは、本当に本当の話だから……」


 と、そういう前置きをして、真剣な顔で話し出す楓。






 その話を聞いて、皆、信じられないとゆう顔をしていたが、ただ、アヤだけはその話を真剣に聞いていた。そして、顔を真っ青にして震える。

 そして、「そんなまさか……」とか「ありえない……」等とブツブツと呟き始める。

 

「あ、あの、お母さん?」


 さすがに異常に思ったのか、蓮実が声を掛ける。

 すると、アヤは突然ガタンと立ち上がり言った。


「私、探してきます!!」


 そう言って、出て行こうとするアヤに蓮実が言う。


「あ、僕達も探しますよ」


 しかし、アヤは首を振った。、


「恐らく、あなた方には無理でしょう……」


 そう言って、出て行ってしまった。



 シーーンと静まる部屋の中。

 


「と、とにかく本当の事だからっ!」

 

 楓は、居心地の悪いこの空気を吹っ切るように怒鳴った。そして、百合香もそれにかぶせるように言った。


「ええ、彼の言っている事は本当よ。私もこの目で見たわ」


 皆が戸惑う中、翔太郎が口を開いた。


「……分かった、信じる……」


 蓮実と茜が驚いて彼を見る。そしてマリアは、翔太郎を見て頷いた。


「うん、私も2人を信じるよ。ユリちゃんや楓君の目は、真実を言ってる目だよ」

「……翔さん……マリアさん……」

「……パパ……ママ……」


 楓と百合香の声が重なる。2人とも感動していた。



「……? 皆何してるの?」


 その時、漸く起きてきた海里が、皆のその様子にぽかんとしていた。




 ++++++++++




 一方、あのまま家を飛び出したアヤは、自分の家へと向かっていた。


「……早夜……」


 悲痛な顔でケータイを握り締める。

 家に着き、扉を乱暴に開け中に入った。そしてケータイを見つめる。しかし画面ではなく、そのケータイに付いたストラップの方。

 よく見るとそれは、早夜も身に付けていたあのお守りだった。その小さな袋の口をけると、中にあるものをつまみ出し、その手に握りこむ。

 そして、念じた。

(早夜っ!!)

 しかし、何の反応も見せない。それに愕然とする。


「そんなっ! じゃあ、まさか本当にこの世界にいない……」


 口に手を当てて、震え始めるアヤ。

 そして何か思い出したように、お守りの中にあるもうひとつの何かを取り出した。

 それは、小さく折りたたまれた紙だった。

 アヤはそれを丁寧に広げ、何かのお札のようなそれを見つめる。


「……これは、一度しか使えない……でも、確かめてみるべきだろうか……」


 そう言って考え込むと、目を開け頷いた。


「考えていても埒が明かない……あの方に会えば何か分かるかも……」


 何かを決意し、親指に歯を当て、傷つけるとその血を札に押し付けた。

 すると、お札は血を吸い輝きだす。

 そして、深く深呼吸をすると、アヤはそれをビリッと音を立てて破いたのである。


 

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