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異界の旅人  作者: ろーりんぐ
《第二章》
104/107

8.大地の色

お久しぶりです。

大分間を空けてしまいました……(反省)


 一体いつから……。


 彼の触れる手は、

 こんなにも優しくなったのだろうか。

 此方を見下ろすその眼差しが、

 こんなにも熱情を孕む様になっていたのだろうか。


 そしてそれは、

 自分が彼に惹かれるのと、一体どちらが先だったのだろうか……。




『貴女に呪いを掛けてあげる。“ナイール”って言えなくなる呪い』


 水底の魔女にそう言われ、その呪いを受けた時、確かにその呪いは、サラサにとって辛いものであった。


 一番好きな歌。

 母なる海のその名前は、大半の歌の中にも含まれていて、歌える曲が限定されてしまう。

 歌う事が好きなサラサにとって、それは一番の痛手であった。

 けれど、一番辛い理由はそれではない事に、サラサはこの世界に来て初めて思い知らされる。




 自分が幸せになる為に、たった一人の肉親である弟への想いを断ち切って、全ての覚悟を持って世界を渡ったサラサの目に最初に飛び込んできたものは、褐色の肌にこげ茶色の髪をした琥珀色の瞳を持った男の姿。

 何処かの部屋の中で、不思議な模様の描かれた床。その上にサラサは立っており、初めて見たそんな色を持った人間を前に、(大地の色だ)とぼんやりと考えながら彼を凝視していた事を、サラサは今でもよく覚えている。

 サラサの世界では、透明に近い白い肌に青系の髪と目の色と決まっていて、しかも、大地の乏しいサラサの世界では、そんな色を見るのは本当に珍しかったのだ。

 植物も少なく、建物や道具に使われる材料は主に石とか貝、巨大魚の骨や鱗、石灰を加工したもの等が使われていた。だから色は白や灰色が多い。色鮮やかなものは、鱗や貝に限られる。

 ただ、サラサが居た神殿では貴重な木材が使われていて、神聖な色だったように思われる。

 だから彼を最初に見た時、その色にただただ見惚れてぼんやりと彼を見つめ続けるしかなかった。

 神殿で外界から遮断されるようにいたサラサには、人の眉目の良し悪しなど見分けもつかないが、ただ彼の持つ大地の色は純粋に綺麗だと思った。


 彼はその時一体何を思っていたのだろうか。


 彼はサラサがぼんやりと見つめるその先で、琥珀色の瞳は此方をじっと見据えていたように思う。

 そしてぼんやりした中で漸く我に返り、サラサは世界を渡って始めて口にした言葉。


『あなただあれ?』


 まるで子供のように無邪気に無心に訊ねたその言葉が彼に伝わったのか、琥珀色の瞳を数度瞬かせると、大地の色を持った彼は興味深そうな眼差しを向けた後、不遜な態度をサラサに向けたのだ。

 まるで見下すように、蔑んだ眼差しを送る彼にサラサは当然腹が立った。

 偉ぶった態度で名を訊ねてくる彼(王様だそうだから当たり前かもしれない)に、サラサは口は開かず睨みつける事で答える。

 いつまでも答えないサラサに、目の前の男は苛立ちを隠そうともせず、睨み返してきたのだ。

 暫く睨み合いを続けた後、先に目を逸らしたのは彼の方であった。

 そして代わりに不適に笑って何かを思いついたように何者かに話しかける。

 その時初めて、サラサはこの部屋に別の人物がいる事を知ったのだ。


『魔学者、この女に部屋を用意しろ。決して逃げられぬように出口の無い、魔法を使っても逃げる事も出来ない部屋だ』


 場違いのように子供がそこにいた。

 変わった容姿をしていて、その作り物めいた容姿に最初は人形だと思ったほどである。それに、その子供の周りには、これまた変わった生き物がちょろちょろと動いており、それこそ人形の類かと思われるような可愛らしく愛らしい小さな生き物であった。

 それらが早夜が言っていた、ピトと魔道生物達。

 サラサはというと、一瞬ピトと魔道生物達に目を奪われたが男の発した言葉に愕然とする。


(冗談じゃない! 何で漸く自由になったのに、また閉じ込められなければならないの!?)


 目を見開き、土色を持つ彼、ムハンバード凝視していたが、その事実を実感すると共に、彼に対して怒りが湧き上る。

 その感情を隠しもせずに、サラサは睨みつけていた。


 ふと思いついた。

 自分の手元には、肌身離さず持っている竪琴の存在。

 サラサは内心ほくそ笑む。


『女、喜べ。このクラジバールの王たるわしが、直々にお前を歓迎してやろうではないか。お前は開拓王サーゴ王のただ一人の妃であったソラ王妃によく似ている。これはわしがサーゴ王の再来だと言うしるしかもしれぬな。ククッ、存分に可愛がってやろうではないか』


 ムハンバードは何処までも傲慢に高飛車にのたまった。

 しかし、彼はそれ以上の言葉を発しず、目を剥いてサラサを凝視した。

 サラサが竪琴を鳴らし始めたからだ。

 その繊細な指から紡ぎ出されたとは想像できないような荒々しい音に、ムハンバードは驚きで身動きが取れないようであった。

 そして、次の瞬間落雷の音と共に、大量の水がその部屋に溢れ返りムハンバードを襲おうとした。

 しかしそれは彼の直前でピタリと止まり、遮断されてしまう。

 サラサは驚きのあまり、美しい青い眼を見開かせ、手を止めてしまった。

 突然起こった出来事に瞠目しながらも、ムハンバードはサラサに向かい不適に笑いかける。


『残念だったな、女。今までも呼びだした異界人が、わしらを襲うという事がなくもなかったからな。ちゃんと対策はとってある』


 小馬鹿にしたように笑うムハンバードに、サラサは悔しさでいっぱいになりながら、これでもかと彼を睨みつける。


(なんて腹の立つ男なのかしら! 今後一切口なんてきいてやるもんですか!)


 そんな事を思っていると、これまでずっと黙っていたピトが、顎に手をやりながらサラサの傍までやってきて注意深く床を眺めながら呟いた。


『フム、今のは攻撃ではなく幻術であったようジャの。床が全く濡れておらん』


 サラサはムハンバードに向けていた鋭い眼差しを和らげ、ピトを見下ろす。

 歳は弟よりも上だろうが、子供と言う事がサラサから警戒心を解いてしまう。

 何より、彼の容姿はどこか植物のようで、何だか神聖なものの様にも感じた為だ。

 しかしながら、さっきあの不遜な男はこの子供に向かって自分を閉じ込めるように頼んでいた。

 一応警戒しておこうかと思っていたところ、『スマンの……』と言う呟きと共に、ピトの小さい手がサラサの手の甲に触れた。

 バチンと静電気でも起きたような音と共に、青白く光る模様がその手の甲に浮かび上がる。


(な、何これ!? やだ、落ちない!?)


 擦っても消える様子のないソレに、サラサの心は不安と言い知れない未知への恐怖で埋め尽くされた。

 まるで刻印のように感じられる。

 二度と逃げられない呪いの刻印……。


 サラサの白い肌にその呪印の存在を確認すると、ムハンバードはサラサの傍まで近付いてじっくりとサラサを見下ろした。そして、満足そうに頷くと、なにやら銀色の輪っかを取り出してサラサの首につけようとしてくる。

 何か嫌な感じがして咄嗟にその手を振り払おうと試みるが、あっさりその手を捕まえられてしまって、全く変わらぬ不敵な笑みでその輪っかを素早く着けられてしまった。


『これでもうお前は逃げられんぞ、女。永遠に……お前の死までもわしのものだ』


 実際には、手の甲の刻印よりも、此方の輪っかの方が二度と逃げられないものとなってしまったのだが……。

 憎々しげに目の前の大地の色を持つ男を睨みつけるサラサ。

 しかし、サラサのそんな睨み等ものともせず、クックッと笑うムハンバードに、サラサがカッとなって今度は百の刃に串刺しになる幻術でも見せてやろうかとまた竪琴を鳴らすが、一向に何かが起こる気配がしない。

 サラサが訝しげに竪琴と自分の手を眺めていたら、ムハンバードがニヤリと笑う姿と、ピトが肩を竦める姿が目に入る。


『一時的にジャが魔力を封じさせてもらった。恐らくその楽器が幻術の媒体となるものジャろうが、本人の魔力を封じてしまう事の方が手っ取り早いしの』

『その首輪はわしの所有物だと言う証だ。ありがたく思うがいい』


 ニヤニヤといやらしく笑うムハンバード。それと共に、この首輪の効力も聞かされ、絶望感に打ちひしがれた。




 とまぁ、そんな感じでサラサとムハンバードの出会いは最悪と呼べるものであった。

 それからムハンバードが言っていた魔封じの部屋ができるまでは当面ムハンバードの部屋に囲われる事になり、言葉どおりに散々可愛がられる事になった。

 当然、「口をきかない」という誓いも続行したままで。

 一番の誤算は、散々ムカついた筈のムハンバードに次第に惹かれていってしまった事だ。

 最初、苦痛でしかなかった交わりも、苦痛では無く嬉しいと思うようになったし、そんな自分の感情を隠す為に、彼の前では心を閉ざして悟られないようにもした。

 元々、前の世界では常日頃から感情を押し隠す事に慣れてしまっていた為難しい事ではなかった。



 でも、いつしか彼の指や目や声がどこか優しく思えるようになってくる。

 その頃からサラサは、自分に課した誓いを後悔するようになった。

 口をきかない事。

 それはサラサに気持ちの伝えられないもどかしさを与えた。

 けれど今更口をきくにしても、何を喋ればいいのか。

 言いたい事、伝えたい事が沢山ある。

 その中で一番伝えたい事。

 それはあの言葉。

 歌えない事よりも、故郷の言葉を喋れない事よりも、愛の言葉であるその言葉が言えない事が、その事が何よりも辛かった。

 せめて、彼からその言葉を言ってくれれば。

 そう思ったが、この世界にその言葉は無いのだろう。

 似た音の言葉はあったとしても、同じ意味を持ちはしないのだろう。

 ならば、愛に通ずる言葉が彼の口から聞けたなら、その時は答えようと、サラサは心に決めた。

 けれどムハンバードは、そんな言葉は一切口にしようとはしない。

 言葉だけは出合った時のまま、不遜な態度のままであった。





 目が覚めて、気だるい身体を起こせば、自分以外誰も居ないベットの上。

 そして行為の名残であろうシーツの皴も、身体に残る痕も、この部屋の壁にある呪印のお陰で暫くすれば元通りになる。

 起きた時はいつも本当に彼は居たのかと、夢であったのではと言う思いがサラサの心にあった。

 けれど身体に刻まれた感触や匂いは、記憶としてサラサの脳裏に現実であったと認識させる。

 彼と交わす情事は、感情を抑えているのだからいつも一方的なものになる。更に与えられる刺激にも耐え抜かねばならぬのだから、その行為の後はそのまま深い眠りについてしまう。

 そうして気付けば、いつの間にか彼の姿はなく、だるい身体のサラサだけが残されているのもいつもの事なのだ。

 彼は来る時も出て行く時も唐突で自分勝手である。

 いっその事、思いの全てを打ち明けて彼の行為に深く身を委ねてみたいという願いはあるが、サラサはハァと溜息を吐く。

 正直な所怖いのだ。

 幸せになりたくて己の世界から逃げた自分が、果たしてこの想いを受け入れてもらえるのだろうか。

 最初こそ憎く思っていた彼を、今ではこんなにも愛しく思う。彼自身も、暴虐不尽に振舞っていた最初よりも、幾分か此方を憎からず思っているように思う。

 何より、時折自分を触れてくる手や眼差しが優しく感じる時がある。

 その度にこの身が震えそうになるのを、毎回物凄い精神力で止めている。

 そして暫くボーとしてムハンバードの事を思い出していたサラサの脳裏に、彼とは別の人の顔が浮かんだ。

 白磁のような白い肌に漆黒の長く真っ直ぐな髪と同じ色をした瞳を持つ少女。

 サラサはハッと顔を上げてベットから飛び上がった。 





「サヤちゃーん! サ、ヤ、ちゃーん! 何処にいるのー? ムハちゃんはもう居ないわよー!」


 手早く風呂場で身体を洗い着替えたサラサは、部屋の中をあちこち物をひっくり返したり、終いには水差しの中まで覗きながら、サラサは早夜を探し続ける。

 しかし、いくら小柄と言っても当然の事ながらそんな所に居る筈もなく、何処を探してもあの少女の姿を見出す事は出来なかった。




「うう~、やっぱり居ない……」


 覗いていた水差しを元に戻して、サラサはシュンと項垂れる。

 そして、色々と思い出してしまい、今更ながら真っ赤な顔を覆って身悶えるが、過ぎ去った時間はどうにも出来ないものである。


「ああー、恥ずかしいぃ~! 見たのかしら? サヤちゃん見ちゃったのかしら!? 見たとしても一体どこまで!?」


 でもここでハッとして、クローゼットの中を覗きこんだ。

 早夜が居たであろう場所には、赤い血痕が残されていた。その傍らには、先が赤く染まったアクセサリーの金具。


「これで刺しちゃったのね……」


 恐らく、ムハンバードが何かしら音がしたと言った時にはまだ居たのだろう。

 そして、彼が扉を開ける前には姿を消した。

 まじまじと中を観察するけれど、抜け穴の類は確認する事は出来ない。

 サラサはバッと顔を上げると、グッと胸の前で手を組み、


「サヤちゃん魔女っ子だもの! きっとあんなもの見せられた上に怪我までして、怒って魔法でパパッと出てっちゃったんだわ!!」


 そんな考えに達したのだが、すぐに首を傾げる。


「あら? でも、ここでは魔法的なものが使えない筈よねぇ? ……うん?」


 おやおや可笑しいぞ、と更に頭を捻って考えるサラサの目に、床に置かれた楽器が映り込む。

 自分の半身とも呼べる真っ白い竪琴は、サラサが触れるのを待っているかのようだ。

 サラサは無意識にそれに手を伸ばし拾い上げると胸に抱えた。

 そして、何気なくクローゼットのふちに腰を掛けて、体半分クローゼットの中に入れた状態で竪琴の絃を軽く爪弾く。


 絃は震え、高く伸びやかに響く繊細で美しい音色。


 この音を聞くだけで、サラサの心は穏やかな海の波ように静かで落ち着いたものになってゆく。

 それに、クローゼットの中に音が反響しているのか、いつもより耳に響いて気持ちがいい。音が振動して、サラサの身体を優しく刺激しているのが分かる。

 心のマッサージとでも言うのだろうか。

(これからはこの中で弾こうかしら)

 そんな事を考えながら、何だか楽しくなって口元を綻ばせる。

 この竪琴の音は、サラサにとって精神安定剤のようなものなのだ。気を落ち着かせ、頭を冴え渡らせる。

 サラサは考えをまとめる為に歌を歌う。

 幻楽士としては、初歩中の初歩の曲だが、故郷の事を情緒的に歌ったもので、最も心が穏やかになる歌。

 目を瞑って暫し歌っていたのだが、ふとサラサの耳に懐かしい音が聞こえた気がした。

 サラサにとっては、もう久しく耳にする事の無かった懐かしく恋しく、心焦がれていたあの音。

 打ち寄せては引いてゆく、故郷の海の波の音。

 不思議に思って目を開けたサラサの目に、驚くべき光景が広がっていた。

 この世界に来て何年経ったのか。

 もうずっと、久しく見る事はなかったその光景。

 一面に広がる青と蒼と藍。

 サラサの目の前に紺碧の海が広がっていたのだ。


「……嘘」


 サラサは呆然として呟き、竪琴を爪弾いていた手を止め、クローゼットの縁から降り立った。

 すると、何処までも広がっていた紺碧は消え失せ、ここ数年で見慣れた冷え冷えとした石の壁が自身を取り囲む。


「あ、ら……?」


 まるで夢から覚めたように瞬きを繰り返すサラサ。

 キョロキョロと周りを見回し、そして自分の手の中にある竪琴に目をやり、クローゼットの中を見る。

 暫し動かなかったサラサだが、再び縁に腰掛け、先程の歌を歌ってみた。


 ――ザザァン……――


 先程と同じように波の音が耳に心地よく響く。

 目の前には紺碧。

 ふと絃から手を離す。

 しんと静まる室内。同時に冷たい石の壁。


「………」


 じっと竪琴を見つめた後、今度はさっきとは違う曲を奏でる。

 すると今度は海原を走る美しい船の姿が現れる。

 サラサは試しに歌ったままその場を立ち上がった。

 体が完全にクローゼットから出ると同時に、映像は消えてしまう。


「………」


 サラサは竪琴を弾くのを止め、それでも楽器を胸に抱いたまま天井を見上げて床を見下ろし、そしてクローゼットを見つめると、


「ええぇ~っ!!?」


 これでもかと言うほどに声を張り上げた。












『何だ? 今この中から音がしなかったか?』


 あの時。

 痛みに耐えながらその声を聞いた時、早夜は絶望感に包まれていた。

 そして、殆ど駄目かと思われた時、クローゼットの中で魔力が自分に向けて弾けた様に感じた。

 それは魔法を行使された時の感覚に似ている。同時に、自分からも魔力が溢れた。

 知覚できたのは、クローゼットの奥に施された何かの紋様。

 瞬時に早夜の知識が、それは条件が揃えば行使される呪印の類だと知らせてくる。

 行使された相手の魔力の開放と、何処かへの転送。

(何でこんなものが? 転送……一体何処へ?)


 そして気付けば、早夜は見知らぬ場所に居た。

 決して狭くはない部屋。

 けれど溢れ返る本や書類の山に、かなりの圧迫感を感じる部屋であった。

 壁には本棚が設置されていたが、本の量が量なので、あまり意味がないようである。

 長椅子やテーブル、机など存在はするようであったが、そこにも書類や書物が堆く積み上げられていた。


 ここは一体何処だろう。クラジバール内であろうか。


 そう思って立ち上がろうと思った時、背後の扉が開いた。

 ギクリと肩を震わせる早夜。

 自分を害する者であるかもしれない。

 そろりと見やれば、そこに立っていた人物は早夜が危惧したとおりクラジバールの、しかもそれなりの身分のある人間のように見える。

 彼は左手に羊皮紙の束を抱え、右手で一枚の羊皮紙をチェーン付きの眼鏡越しに難しい顔で睨みつけており、今だ早夜の存在には気付いていないようだ。

 そして、床の上に座り込んで吃驚している早夜の横を素通りして、羊皮紙の束が堆く積み上げられた机の前まで行った時、漸くおや?と言う感じで此方を振り返り、早夜の事を見た。

 早夜の顔がヒクリと引き攣る。

 逃げるとかそういう事は今の早夜には思いつかなかった。

 そして何処の誰とも知れない、唯一クラジバールの人間であろう事は明白なこの人物は暫し瞬きを繰り返すと、早夜の姿をじっくりと見て、フムと頷くと、持っていた書類の束を既に同じような紙で一杯の机に何とか置いて一言こう言った。


「何かお困りですか? 姫」






次回の話で、この章は終わりになるやも。


ああ、また新しいキャラが……。

今回最後に出ていたキャラが、この第二部の中で結構重要なキャラになると思います(現段階で)


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