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舞踏会と予感








本日の公務は夜。

内容は舞踏会。






打ち合わせの紙を見た時点でフローリアは嫌な予感しかしなかった。

おそらくエレナ様一行が滞在中何度となく行われるとは思っていたはずなのに。




(精神衛生上こんなにも宜しくないものになるなんて…)



舞踏会の護衛なんてむしろいつもなら華やかな世界を部屋の端っこから見ていられるから楽しみな仕事なのに。




(いや、でも嫌な予感が当たらなければいいのよ…二番隊の仕事だって護衛だもの!まさか舞踏会だからって…)





そう、舞踏会だからってただの護衛がエスコートのパートナーになるなんて…そんな、わけ…ありそうだ。




第一に、エレナ様は今回似合いの年頃のお連れ様がいない。

第二に、彼女とうちの王子殿下に婚約の予定もない。

第三に、彼女は誰の目から見ても上官殿にメロメロ。

第四に…上官殿はこの国でも指折りの貴族の長子だ…しかもサリーさんはまだ縁談中だから立派に独身なわけで…。




ダメだ。

考えれば考えるほど適任でしかない。



好きな人が、好きな人のことを好きな人と踊る。

舞踏会にメインゲストで踊らないわけもない。パートナーを用意しないわけにだっていかない。





(うぅ、いっそのことサリーさんが参加してくれれば!!)





うだうだと悩む。

そうして時間は過ぎた。






結論を述べるならば私の推論は全て的中した。

一つとしてあますことなく。







「ロッドさん、理由は聞かずに私が泣いたら笑ってやってください。」

「安心したまえ、僕は女性の涙を拭くために常に何枚かはハンカチーフを持っている。」



姫様のお着替え待ち。

本当に、最近じゃロッドさんとの掛け合いがしっくり来すぎてこのまま二番隊に帰らないの全然ありだなとすら思う。

多分自暴自棄なのだ。



(報われなさすぎて笑える…)



パイを届けた侍女にはこんな気持ちにはならなかったのに。

エレナ様は違う。

何が違うのだろう。

女性としての魅力?

恋に対する積極性?

上官殿が縁談を迫られれば断れないような相手だから?



多分その全部。



羨ましい。

私も恋を曝け出して相手に触れられたらいいのに。





「ロッドさん、恋を成就させるための秘訣ってなんなんですか?」

「フローリア、君いつの間にか恋してること隠さなくなったのは気が付いているかな?それともそれすらどうでもいいのかな?」

「もう、ふっと吹いたら消えそうな恋なのでいいかなって…」



私は生気もなく言った。

ロッドさんは溜息をつく。



「待ってるだけで努力しない人間に未来はないということだよ。」



珍しく真剣な声色で言うロッドさんの顔を見ると、これまた珍しくいつものにやけたしたり顔はそこになかった。



「今は一ヶ月の中期任務中だ。この仕事が終われば僕たちにはしばらく休暇がもらえるね。だから今回の仕事が終わるまでは辛くとも仕事を頑張りなさい。仕事が終わったら次は恋を頑張りなさい。」

「ロッドさん…」

「これくらいアドバイスしておけば私も後々痛い目に合わなくてすむ…」

「…?なんのことですか?」

「いや、なんでもないよ。」



ちょうどその時、後ろの扉が開いた。

姫様はサーモンピンクの可愛らしいドレスを身に纏っていた。

髪は巻いてから片方で流し、化粧はうっすらと施されている。

侍女に誘導され照れ臭そうに出てくる姫様は素晴らしく愛らしかった。




「フローリア、どうかしら?初めて着る色だから自分ではまだ慣れなくて…」

「とてもお似合いです。私が男なら是非一度ならず踊っていただきたくなるでしょう。」

「ふふ、フローリアが本当に男なら私はきっと何にかえても結婚を申し込んでいたわ。」



ああ、癒される。

明るく笑う姫様は見ているだけで周囲の者の心を癒してくれる。

こんな姫様の護衛が出来るなんて私は鼻が高い。






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