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姫様と姫君













「ウェザーさん、今日の段取りですが…」

「おっとカラスちゃん、ダメだよ。今日からは上官殿って呼んでっていったじゃないか。」




彼は今日も無駄にキラキラした笑顔で言った。

そういえば確かにそんなことを言われていたけれど。


(上官殿とは、呼びたくない…)


だってそれは私にとって特別な人のことだから。

だから呼びたくない。



「私の上官殿はあの方だけですので。」



私はきっぱりと言ってみる。

ウェザーさんは意外そうでもなく肩をすくめた。

諦めてくれるのだろうか。


「まぁそう言われると思っていたよ。仕方がないから”ロッドさん”でいいよ。特別にね。」

「…。」


なんだろう、はめられている気がする。

とにもかくにも上官殿と呼ばなくてよくなったことはホッとするべきことだった。

だって本当に呼びたくない。



「あ、でも一回だけ上官殿って言ってよ、あとでいいからさ。」

「…?まぁ、一回くらいなら…でもあとでっていつですか?」


というよりなんでこの人はこんなことでうきうきしているのかがさっぱり理解できない。

彼にとって私はいつだっておもちゃだ。



(きっと賢すぎると頭のネジが普通よりおかしくなるんだわ…)




「あとで僕がウインクして相図を出すからその時に”上官殿”って呼んでほしいな。」

「はぁ…わかりました。」



とりあえず了承したものの、それから2時間なんやかんやウェザーさん改めロッドさんはすくなくとも私にウインクはしなかった。






「フローリア、お久しぶりです!」

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。」

「いいえ、急なことですもの。お客様はまだいらしてないの?」

「今、東の城門で手続きをされておりますのでもうじきこちらにいらっしゃるかと思われます。」

「そう、お客様滞在の間よろしくね。」

「はい、姫様。」



隣国の姫君一行が到着し、私たちも姫様の待機する部屋へと来た。

何度となく姫様の護衛をしてきた私はいつものように挨拶をすませる。



姫様が歌劇にハマって以来、私は姫様のお気に入りなのだ。

街にある大劇場ではキャストが女性のみの歌劇が人気で姫様も新しい公演が始まる度に彼女は足しげく通っている。



「姫様、そろそろおいでになられます。フローリアと私は後ろに控えておりますので。」

「ええ、ではお出迎えに参りましょうか。それにしても…ウェザーとフローリアの組み合わせって見慣れなくって変な感じね…。」

「ですが私はフローリアと以前から挨拶はする仲ですからね。この度彼女が三番隊に来てくれたのはとても喜ばしいことです。」



キラキラといつもの3倍張り付けたような笑顔のロッドさん。姫様もさすがに隊長クラスは覚えているらしい。

というか、ロッドさんさりげに名前で呼ぶのやめてくれないかな…。


「名前で呼び合うとはよほど仲が良いのね。」


ほら、そうなっちゃうじゃない。

私は少し責めるように視線だけロッドさんに向ける。

しかし彼の笑顔は崩れることはない。



姫様と共に玄関広間にくるとそこには両陛下と共に王子殿下もすでに来客を待っていた。

両陛下は一番隊、王子殿下は四番隊が護衛をしているらしい。

初日ということもあってかサムエル様が陛下の傍に立っている。



隣国、サウスバーグ国の姫君一行はなんというか、控えめに言ってエネルギッシュな方々だった。

向こうの貴族には赤毛が多いということは噂程度に聞いていたが、姫君の髪は確かに朱色に近いような綺麗な髪をしていた。他の従者たちはわりと日に焼けているが彼女の肌は白く、無邪気で幼いような容姿なのに発育の良い体つき、極めつけは惜しげもなくさらされた足である。




(文化の違いってすごい)



私でも照れて目を逸らしたくなるようなミニスカート。

こっちの国じゃ肌をさらすのは足首ちらりと首から上、あとは半袖ならば腕が出る程度。

向こうの国より寒いというのもあるがそれ以上にシャイな国民性のせいだろう。



私はうちの姫様の方が好きだ。

可愛いし、素直だし、清楚だし私のような庶民にだって優しくしてくださる。

なによりうちの姫様はお気に入りの護衛の騎士の腕を取ってエスコートなんてさせない。

絶対にさせない。




(なんで触るのなんで触るのなんで触るの!!)




正直に言おう。

内心キー!となっている。

でも、ここまで怒りが出てくるといっそ無表情でいられるから不思議だ。




(上官殿もなんで触られてるのよ…)



理不尽だとはわかっていてもドロドロとした感情が止まらない。

良く見れば他の二番隊はもっと後方にいる。

どうやら上官殿だけ引っ張り出されたらしい。



いっそ、いっそのことこれがサリーさんだったら受け入れられるし当然だと思えるのに…。

(でもきっとサリーさんはあんなはしたない服は着ないし、これ見よがしな腕の組み方はしないわよね…)



上官殿の顔が見れない。

これでもし微笑んでたりしたら私もう二番隊でやっていける気がしない。

たとえそれが営業スマイルでもなんでも無理だ。




両陛下たちとの挨拶もそこそこに昼食へ移動となった時、後ろの方が賑やかになった。



「会いたかったぞ、ダニエル!」

「まぁ!エレナ様、はしたない真似はおやめください!」

「ばあや、良いではないか!久々の再会だぞ!なぁ、ダニエル?」



隣国の姫エレナは侍女が止めるほど”はしたない真似”をしているらしい。

私には振り返る勇気もなくただただ姫様の後を足早について歩く。

上官殿がなんと答えるかも聞きたくなかった。




まぁ、私の少し前を歩くロッドさんは当然のごとくしっかり振り返って上官殿たちの様子を見てニヤついていたけれど…。













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