こんにちは三番隊
三番隊の宿舎は王宮の北門付近にあった。
一番隊から四番隊までは王宮を取り囲むようにそれぞれ東西南北にわかれ、宿舎と演習場があり生活している。
施設自体はあまり変わり映えしない。たまに合同演習があって他隊のグラウンドにお邪魔することもある。
ありがたいことに、女性騎士は代々個室をいただける。女性が二人以上いれば相部屋になるらしいが、今までそういった歴史も特にない。
クセが強いと評判の三番隊。
はっきりいって馴染める気はしなかった。
実際この目で見てみるまでは…。
「カラスちゃーん、こっちでおいでよ。」
「いやいやこっちだってー!」
「ほらほらみんなカラスちゃんが困ってるから。今日彼女は真ん中僕の隣の席で食べるんだよ。」
「なんですかこれは…」
部屋の移動を済ませた私は夕食を取りに三番隊の食堂へと向かったはずだった。
到着すると同時にわーわーと騒ぐ声が聞こえてくる。
おとなしい貴族のお坊ちゃん揃いの二番隊とは全くことなる雰囲気。
さらにあの騒ぎ。
私がどこで食べるかをみんなで騒いでいた。
結局長テーブルのド真ん中に座らされ隣には隊長のウェザーさん。
呆然とする私の前においしそうなカラアゲ定食が置かれた。どうやらトニーさんが運んで来てくれたらしい。
「はい、じゃあカラスちゃん。改めて自己紹介しようか。護衛は明日からさっそく僕とペアで終日3交代制でしてもらうからね。」
「はい。」
私は立ち上がる。
声を出すために息を少し多めに吸った。
「一月ほどこちらでお世話になることになりました二番隊所属ウォーカーです。至らぬ点あるとは思いますが、よろしくお願い致します。」
当たり障りのない自己紹介を済ませるとみんな口ぐちに「よろしくー!」と言っていた。
違和感がすごい。
なんだろう…なんていうか…。
「ここの隊みんな若いでしょう、ノリも良いし。」
ウェザーさんがご飯を一口食べながら言う。
そう、それだ。
とてつもなく元気だしノリが良い…私の感じる違和感はたぶんそれだったのだ。
「うちは言うなれば学校の延長な感じに養成所的な部分もあるからね。半分は精鋭だけど、半分はほとんど新人だ。うちで育った子は毎年何人か別の隊に配属される。入れ替わりも激しいが仲間意識は強いよ。」
なるほど。
確かにうちとは違って噂どおりに庶民出身らしき人も何人かいる。
きっと身分がなくとも実力がある人が集められているのだろう。
「僕は優秀な人材が好きなんだ。」
私の心を読んだかのようにウェザーさんは呟いた。
なんということだろう…この前のお祭りを彷彿とさせるこの隊の雰囲気…庶民くさく、思いのほか馴染めてしまえそうで戸惑う。
追い打ちのようにウェザーさんには「仲良くしてやってね」と念を押された。
ウインクつきで。
今日も彼は抜かりなくキラキラしている。
(とにかくがんばらなきゃ…)
明日にはいよいよ隣国からの一行がやってくる。
上官殿のことは今は忘れて気を引き締めよう…。