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上官殿と書類















「上官殿は貴族です。私と縁談はできません、騎士でいられなくなるかも…」

「私が父と血の繋がらない私生児だということを知らない貴族はいないし、見れば彼らにはわかるよ。貴族名簿には載っているが私は彼らの求める貴族ではない。」



肩をすくめる上官殿。

ヘビーな話をサラッとされた気がしなくもない。というか、サムエル様は割と上官殿を溺愛されているから全然わからなかった。




「さぁ、ウォーカー、いやフローリア…。あとどれだけ質問に答えれば目の前の書類に署名してくれる?」


「し、しかし…」






私は手元にはピンクの婚約届。

手には割と無理やり持たされたペン。

そして、目の前の上官殿は笑顔の圧がすごい。




ホームなのにアウェーな気分だ。




何この状況。

なにがどうなっているの?

夢?

そうだきっとこれは夢に違いない。

上官殿が急にやってくるわ求婚してくるわ、その場で書類に署名捺印させられそうだわってこんなの夢だわ。

きっとそう。



「上官殿、ちょっと殴って下さい。」


「婚約者の顔を殴るなんて出来ない相談だな。」



いや、いつも演習でばったんばったん容赦なくぶん投げてるじゃないですか。

今さら…。

というか、婚約者って私まだサインしてませんよね?





「それに母上にDVを疑われても困る。」


「ああ、すいません。」






それは確かに…。

気まずすぎる。

婚約者でも上司でも。



「とにかく、上官殿はもう一度考え直される方が良いかと思います。」


「考えたよ。君が入隊してくる少し前からずっと。父上にもその頃には言ってあった。だから君を他の隊員とは仕事外では関わらせなかったし、食事も共にするようにした。君のプライベートも聞き出していただろう?」



えっと、それはつまりどういうことだろう。



「つまり?」


「俺は君を愛している。今回はようやくややこしい話もカタがついた上に、君にいらぬ虫がつきかけたからね。それに上司と部下では交際を持ちかけるよりも縁談の方が手堅い。何も問題はないよ。」


「…私はこの書類にサインしても上官殿にとって問題ないということでしょうか…。」


「ああ、だから頼む。」




いいのか、私。

書いてしまったら私は上官殿と?

婚約?

結婚?

そんな夢みたいな話いいの?












(上官殿と離れなくていい…?)










私はペン先をインク壺に浸した。

書類に署名する手が少し震える。

幸いそこまで字がよれることもなかった。










(本当に、書いてしまった…)









私は書類をまじまじとみた。

どうみても本物。

何度見てもそこには上官殿と私の署名がある。











書類から視線をあげ、上官殿と目が合う。

彼はいつものように優しくにっこり微笑んで言った。







「フローリア、愛してるぞ。」







私はどうやら本当に婚約をしたようです。






















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