天邪鬼な織姫は彦星に手を引かれて橋を渡る
七夕ほぼ関係ないですが、去年同様恋愛小説を投稿してみました。
書きたいシチュエーションを書いただけとも言う。
「あ~~!! あっちいー!」
「最高気温35度なんだから当たり前でしょ……あーもう、べとべとする…」
「冷房ガンガンに掛けとくから、部屋が冷えるまでにシャワー浴びちまおうぜ」
「じゃああんたが先で。シャワー浴びたのにまだ暑い部屋に入ってまた汗かきたくないし、一応あんたの部屋だしね」
「一応もなにも俺の部屋だけどな…ま、お言葉に甘えて先に入らせてもらうわ」
アイツが完全に脱衣所に入ったのを確認して、そっと息を吐く。
さっきからチクチクと痛む胸をそっと抑えて、ここまでの道中を振り返る。
…さっきの話、なんであんなつまらなさそうに返しちゃったんだろう。
どうして、きつい言葉しか吐けないんだろう。
アイツは笑ってるけど、嫌われたらどうしよう。
……素直に好きって言えたらいいのに。
「あーさっぱりした。香蓮もどーぞ」
「はいはい、それじゃあ借りるわ」
冷たい水を浴びると、べとべととした汗が排水溝に流れてく。
…一緒にこの暗い感情も、流せたらいいのに。
「…寒い」
くだらないことを考えてたせいで、少し冷えすぎたみたい。
…考え事自体のせいかもしれないけど。
そんな考えを切り替えたくて、いつもより少し乱暴に髪を拭いて、悪い考えを十分に散らしてから部屋に戻った。
「あれ? ドライヤー使わないのか?」
「……これ以上暑くしてどうするの」
「それもそうだな! もうだいぶ冷えたから快適だぜ」
たしかに、部屋は十分すぎるほど冷えていて、今の私には寒いくらいだった。
クッションの上に座ってついていたテレビを見ると、アイツは立ち上がって私の後ろに近づいてきた。
…そしてそのまま、私を包み込むように抱きしめた。
「な…なんで、そんな、ひっついてんの…!?」
「いやー、熱いからって部屋冷やしすぎたみたいでさ、ちょっと寒くなっちまった」
「……バカじゃないの」
ホント、バカみたい。
こんな言葉しか出てこない自分が。
……外みたいに暑かったら、もっとまともな悪あがきができたのに。なんて考えが浮かぶ自分が。
「それにさ、香蓮も寒そうだったし」
「…は? べつに、そんなこと」
「なんか考え事してて冷えすぎたっぽいし」
「それは…」
「どうせまたネガティブ思考になってたんだろ?」
…ほんと、なんでいつもはバカっぽいのに、こういうときだけ察しがいいの。
「お前が不器用なことなんか最初から知ってる。それで好きになったんだから、今更嫌いになったりしねーよ」
「…そう」
…やっぱり敵わないな。だから好きなんだけど。
少しでも、アイツみたいに素直になれたらいいのに。
…今だけでも。
「…やっぱり寒い」
「ちょっと冷房弱めるか?」
「このままでいい……『このまま』で」
「はいよ」
「………ありがと」
タイトルの意味は、自分から踏み出せない女の子と、それを理解したうえで引っ張っていく男の子から連想しました。
七夕に無理やりかこつけただけとも言います。




