矢北勇希 心気症
ガラッ
保健室のドアが開き女生徒が苦しそうに入ってくる。
「・・すみません。体調が悪いので休ませてください」
「あらあら大丈夫?1人で歩ける?」
北斗が寄り添う。
「はい大丈夫です。ちょっと薬飲んでいいですか」
生徒はガサガサと薬を取り出した。
『ふーん。レバミパド?』
ポツリと誠史郎はつぶやく。
薬を飲んで少し落ち着いたようだ。
肩の力が少し落ちる。
「え~と2年生かな?名前は?」
誠史郎が女生徒に近づく。
「山北勇希です」
「んー山北さん。少し落ち着いたようだからベットで横にならずにこっちに来ないかい?」
誠史郎が相談室に指をさす。
「え?相談室?」
「あ、僕スクールカウンセラーの桜井誠史郎です。少しお話がしたくていいかな?」
「保健室の先生じゃないんですか?」
「保健室に『先生』はいないんだよ」
くすりと笑いながら
「大丈夫、体に負担かからないから」
相談室に山北を招き入れる。
「体辛そうだね。いつから?」
「1年の半ば位からです。最近どんどんひどくなって」
「どんな症状なのかな?」
「吐いたり、息苦しくなったり・・おなか痛くなったり・・」
「そして病院で薬をもらったんだね」
「でもあの病院もう行かない。どこも異常ないって言われるし胃薬しかくれないし」
「おなか痛いのはどの辺?」
「ココくらい?」
肋骨の下を指差す
「んー山北さん、もう病院には行かなくても大丈夫だと思うよ」
「え?」
「多分君は内臓の病気じゃないから」
ガタッと勇希は席を立ち、
「あたしがこんなに苦しんでいるのに何、他人事のように言わないで!!」
激しく誠史郎を睨み付ける。
「山北さん君の病気はあえて言うなら多分心気症だと思うな。
お家の方とカウンセリングを受けてみたらどうだろう?
肋骨の下に痛みを訴えるのは心気症の人の典型的例のひとつなんだ。
思いつくことがなければ、きっと無意識のうちになにか
ストレスを感じているんだと思う。それが人間関係か学業などか、わからないけどね」
勇希はバフッとソファに座り込み、
「なにそれ?あたし、すごく重い病気かと思ってるのに。いつも苦しくて病院変えても治らないし・・・」
「でもだいたい処方されるのは胃薬どまりでしょ?」
「うっっっ」
勇気は涙を見せ始める。
「大丈夫。治るんだから、焦らないで。時間をかけて、それが一番大事だよ」
誠史郎に付き添われて相談室を出る勇希。
北斗にも頭を保健室を出ていった。
「どうですか山北さんは?」
「まあきちんと保護者さんとカウンセリング行ってくれれば問題ないでしょう」
「心気症でしたっけ?」
北斗がたずねる。
「はい。ピポコンドリーと言います。彼女は典型的ですね。
息苦しくなったり、胸痛を訴えたり。大体、胸痛があるところに重要な臓器はないんです。
ひどくなって学校にこれない状態にならないようにこちらも注意しないといけませんね」
「まあ、まずはストレスの原因を探さないと」
「行ってもらわないとね。カウンセリング」