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歩さんとペイちゃんの物語〜発達障害の実話  作者: mckee
全ての始まり
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帝王切開の痛み

わずか二日会っていなかっただけなのですが、陣痛室で陣痛促進剤3日目の疲労感でやつれた歩さんに会った時は涙が出そうになりましました。


しかし、私達の関係は常にコントのような明るいやりとりが主だったので、辛さを紛らわす為にも


「おっ!?ちょっと痩せたんでないか?!」


と声をかけました。

歩さんもホッとした顔をして


「おう!骨皮だわ!!」


とかと冗談を言い合ったりしました。

しかし、私がいる間にも医師団が何度も様子を見に来て、陣痛促進剤の投与を強めていったのです。


その日は3日目、今日で本陣痛に繋がらなければ帝王切開だと、医師団は言っていました。


私には3人の子供がいて、1人目の時に散々陣痛を味わってからの緊急帝王切開を経験し、続く2人も帝王切開なのです。


その経験から、帝王切開とは自分がやるまで楽なお産だと思い込んでいたのですが、どれほど術後が辛いか、正常に戻るまで時間を費やすか、を知っていました。


医師団も帝王切開は本人に対する負担が大きいので、出来れば本陣痛を迎えて経膣分娩に持ち込みたいのだと、話していました。


「歩!頑張れ!帝王切開は後が辛いんだ!!同じ想いはしなくていい!真似っこすんな!」


と、冗談交じりではありましたが、本気で普通分娩になりますように…本陣痛よ早く来い!と強く強く願っていました。


この帝王切開の話が出てから、私は頻繁に歩さんの旦那さんに連絡し、手術になりそうだから、なんとか来れないか、と言い続けていました。さすがに旦那さんも会社と交渉する、と約束しました。


歩さん自身も長く続く痛みに耐えられなくなっていて、もう帝王切開なら帝王切開でいいから早く楽になりたい、と嘆いていました。


私も散々痛みを味わってからの帝王切開だったので、その時の気持ちはよくわかりました。でも、そうじゃないんです。


やった事がある人しか分からない産後の痛みがあるんです。だからこそ、なんとか同じ思いをしないように、と願っていたのです。


普通分娩した人達は産後2〜3日後にはスタスタ歩いています。しかし、帝王切開をした人達は、まず産後2日はベッドで尿管を入れられ、ほぼ寝たきりとなります。


人間、急に2日も寝たきりをすると、いざ体を動かす時の辛さや、それに加えた傷口や産後の痛みや初産であれば初めての子育てが一気に加わるのです。


私は、1人目の出産の時に麻酔の効きが悪く、泣き叫び、暴れていたのも要因だったのか、産後1ヶ月も麻酔の後遺症に悩まされたのです。


もしかしたら‥万が一かもしれないけど、歩さんが同じ思いをするかもしれない。結局、帝王切開も手術には変わりなく、万が一はあるのです。もちろん、経膣分娩も万が一、というリスクはあると理解しています。しかし、その時の私には自分の帝王切開の記憶ばかりが蘇り、ただただ怖かったんです。


でも、願いは虚しく、夕方に差し掛かった頃に医師団が帝王切開にします、と。


その頃旦那さんも到着していたため、私はお帰りください、と帰されました。


そこはやはり本当の血縁ではないので仕方ない、と諦めて帰る事にしました。本当は最後までいたかったけれど、私にも子供がいて、タイムリミットでもありました。


私が帰って約30分後、ペイちゃんはこの世に産まれました。


その瞬間、1番変わったのは旦那さんだったでしょう。生というものを目の前で感じ、感動したのだと思います。とても興奮した様子で私に電話をかけてきたのを覚えています。


以降、旦那さんは女の子も可愛いもんだ!とペイちゃんにベタ惚れとなり、イクメンへと変わっていくのでした。


しかしその時、歩さんは苦しんでいました。

麻酔から覚めた時の絶望的な痛さにもがき苦しんでいたのです。


切った傷跡の痛み、後陣痛なのかなんなのかも初めてのことで訳のわからないお腹の痛み、歩さんは今まで経験したことのない痛みに涙していたそうです。

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