アルバイトの開始
歩さんはアルバイトを開始してから、どんどん生き生きしていきました。ペイちゃんも歩さんにしっかりとなつき、歩さん自身も可愛いと思えるようになってきていたのです。
逆で私は鬱々して行きました。
何をしても泣き止まない、諦める事もない。
私は今までペイちゃんとどうやって過ごして来たのだろう、と思い悩むほどでした。
我が家にはまだ未就園児がいたため、とにかくずっと続く泣き声とまだまだ融通の利かない我が子とを相手にしてちょっとノイローゼ気味になりました。
そして、一ヶ月も過ぎた頃、夜勤をして寝ている旦那から、
「あのさ、もう限界。ペイちゃんがいる日は泣き声が響いて全く寝れない。」
それはそうだ、と思いました。ありったけの力で泣き続けるのですから。
結局決まったバイト内容としては、週に2〜3回平日の10時から14時までの4時間となったのです。
その4時間に対して9時半〜14時半まで預かっていました。そのわずか5時間がとても苦しい時間だったのです。
来る前にミルクを飲んでから来るのですが、一度はミルクの時間があります。そのミルクの時間が飲ませるのにも一苦労。子供の昼を急いで終わらせたり、家のことをしたり、そんな中、全てを中断してやっとペイちゃんにミルクを飲ませても一時間近く飲み時間がかかります。その間、タオル固定したとしても気が気ではなく、常に気を張っている状態の中、我が子と相手をして、イヤイヤ期間のあれも嫌!これも嫌!と大騒ぎされて、歩さんが来てからペイちゃんには大泣きをされながら子供4人をお風呂に入れてさようならをし、そこから晩御飯の支度をしたり夜までドタバタが続くのです。
何度も何度もこんなはずではなかった。というフレーズが頭をよぎりました。それまでペイちゃんは私によくなつき、ペイちゃんの寝かしつけ等は私にとってとても簡単なものだったし、ペイちゃんのお世話に関しても、3人を見ているよりは簡単だと思って過ごしていたのです。
それが逆転し、歩さんが
「じゃあ、お願いします!」
とペイちゃんを私に預けた瞬間から歩さんが帰って来るまで泣いているのです。
一ヶ月も格闘しても進歩はなく、旦那からもギブアップがあり、正直な気持ちを歩さんに相談しました。まず、旦那が寝れないのは仕事に差し障りが出るからこのまま泣き続けるのが続くのは厳しい事。そして、何よりいずれは慣れてくれると思っていたのだけれど、一向に泣き止む気配はないこと。それに対して、どんどん自信をなくして預かると分かっている日は前の日から鬱々した気分になること。夜中でもふと目が覚めて、ペイちゃんの泣き声が聞こえるような幻聴があること。
歩さんが真剣に聞き、
「そうだよね。私、いつも大丈夫かな?って心配してたけど、mckeeなら私より経験豊富だから、うまくやってくれてるんだろうな、と甘く考えてた。ごめん。」
そう言って、まずはお風呂は自分で入れる約束をしました。そして、2人で今後の勤務スタイルについて話し合ったのでした。私はどことなく、3人育てているという歩さんに対する優越感があったのだと思います。それが仇となりました。
大見栄を張った癖にわずか一ヶ月で私自身がギブアップだったのです。
この一ヶ月で、基本は24時間で一ヶ月以上も母親見知りされていた歩さんの気持ちがよく理解できました。
自分がいかに偽善者であったのか、と落ち込みました。
しかし、そこで投げ出す事も出来ませんでした。働くことを言い出したのは私なのです。最後まで責任を取らなければならない、と思っていました。なので、放棄するという選択だけはありませんでした。
2人で話し合った結果、まず平日のシフトに関してはどうしても外せない曜日があり、その曜日のみで大丈夫か確認し、職場から了解をもらいました。また、その平日の曜日は旦那を寝かせるためにも、スペアキーを私がもらい、歩さんの家でお世話をする事にしました。
更に、歩さんはこのアルバイトで得る予定の金額に達することは家計がとても楽になるという理由から時間数を減らしたくはなかったので、旦那さんに相談する事にしたのです。
そして、旦那さんも旦那さん自身の借金のせいで家計が大変なのは理解していたので、休みの日である土曜日を朝から夕方までの8時間勤務をする、という事で話がまとまりました。
これは、たまたまタイミングがよく、話し合いから二週間後からこのスタイルとなりました。
もちろん、旦那さんは一日中泣かれっぱなしです。しかし、イクメンへと変身していた旦那さんは自分の娘なのだし、一週間に一度くらい泣かれてもしょうがないと割り切り、日中の天気の良い時間はベビーカーを使って散歩をしたり、車に乗せてドライブをして寝かしつけたり、とても頑張って対応していきました。