表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歩さんとペイちゃんの物語〜発達障害の実話  作者: mckee
母としての壁
14/54

外へ出るという選択


まず、私は真剣に歩さんに対して精神科へ産後鬱とかの話をし、受診をすすめました。

しかし、どうやって説得しても行くことはありませんでした。


歩さんは精神科というものに対しての抵抗感や、またもや医者というものを信用してしまって全てをありのままで話したりする事で、万が一ベビーカーで置いて来た事とかが公になったりしたら虐待としてペイちゃんと引き離されるかもしれない、という恐怖心もあったのです。そして、精神科だろうがなんだろうが、一度刻まれた医師に対する不信感が全く取れていなかったのです。


私の目からみて、当時の不安定な歩さんの心の中にはペイちゃんに対する愛情も執着心も確かにあったのです。だからこそ、追い詰められてもきちんとペイちゃんの親としてどんなに拒否されてもペイちゃんのお世話を放棄しないのだと思いました。


その愛情の深さを持っているのに、どんなに頑張っても報われない。

これ以上に悲しいことはないだろう、と思いました。

だからこそ、せめて歩さんの心が少しでも安定するように専門医に診てもらいたかったのです。


何度かに渡る受診へのすすめを断られ、私も悩みました。

そこで、せめてペイちゃんと少しでいいから離れる時間は作れないものだろうか、と考えました。

一時保育や保育園への入所、そういったものが可能なのかを調べました。


そして、それを歩さんに打ち明けると、その一時保育や保育園で支払うべき金額が今の家計では厳しいと言われました。


その瞬間、閃いたのです。


「歩、あなた外でアルバイトしてこいよ!!」

とほぼ思いつきに近かったのですが、寝耳に水といった様子で歩さんは


「えっ!?その間ペイはどうするの?!」

と、とても驚いた顔で聞き返してきました。


私はしばし無言で携帯をいじりながら、あるものを必死に検索していました。

何を検索していたかというと、自転車で通える範囲のアルバイトの募集要項でした。一つ目星をつけ、歩さんに携帯を差し出し、

「ここ!!ここに面接の申し込みをして!!歩が働いている間は私が預かるから!!保育園とかはその後様子を見ながら決めよう!!」


「えぇ!?あたし、働くの!?」

しかし、言葉とは裏腹に久しぶりになんとなく生気に満ちていた顔になりました。

実は、元の職場の上司より産後二ヶ月で復帰するように言われ、今の状況ではとても無理だと復職を諦めていたのです。


まず、私がセレクトしたのは平日は週に1〜2回と旦那さんの休みの日を活用したアルバイトが可能で、その後状況に応じてシフトを変えていけるような主婦層の多そうな職場です。


まじまじと求人情報をみて歩さんは

「あたし、この業種できるんだろうか?」

と言いました。私は

「出来る、出来ないじゃない。やるんだよ!これは、決定事項です。」

と言い切りました。


もう笑いながら歩さんも私の考えを悟ったようで、

「だよね。少しでも稼げばお金にゆとりも出来るし、短時間でもペイと離れて冷静になれるかもしれない。わかった!あたし働くわ!旦那にも文句は言わせない!うん!やる!」


そんな思いつきからスタートした話は当日中に面接の予約までこぎつけ、数日中に面接。そして採用の異常なスピードで進みました。


そして、いよいよ働き出しが間近となった生後4カ月半の頃にまたペイちゃんの新たな問題が起きたのです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ