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歩さんとペイちゃんの物語〜発達障害の実話  作者: mckee
母としての壁
13/54

こんな子はいらない

恐れていた事でした。

私が毎日のように我が家へ来させていた1番の理由はあくまでも歩さんの心の休憩所となれるようにするためだったのですが、歩さんの心にはとうに限界が来ていたのです。


ある日の昼下がり、いつもの時間に歩さんが来ました。

しかし、音もなく涙を流していました。


「どうしたの?!」

と聞くと、ヒックヒックと涙を押し殺そうと必死でした。

私はとりあえず中に入るように促し、ペイちゃんを預かりました。


少し時間を置いてから、もう一度尋ねました。

すると、歩さんは

「私ね、ペイを捨てようとしたんだ。mckeeん家の子供たちはみんなアユミ〜アユミ〜って私と楽しく遊んで、大好きって言ってくれる。でも、ペイは私のこと全く必要ないよね?!」

と堰を切ったように言いました。


私はそれを聞いて、

「お前がいなければ、ペイは今生きていない!ミルクをくれる、オムツを替える、大事なことを歩はしてるんだよ。ペイにとって歩は必要なんだよ!」

と言いました。


歩さんはワァ〜!!!っとまた子供のように泣き出しました。

本当に辛いだろうと思いました。どこか私は日中にペイちゃんを面倒見ている事によって、歩さんは救われているのだ、と大きな勘違いをしていたことに気づきました。


私は全く整理できない頭から正しいのかさえも分からない話をしました。

「歩、とりあえずもう無理に笑わなくていい。ペイちゃんのお世話も最低限でいい。時間時間でオムツを替える、ミルクをあげる、それだけでいい。無理して周りに良い母親ぶる必要もない!」

あまりにも無責任な発言であったと後から思いました。


しかし、そんな話でも歩さんは泣きながら、うんうん、と頷いていました。

それからゆっくり話をして、何があったのかを聞きました。


ペイちゃんを産んでからなんとなく頻繁に連絡をとる機会が増えた父親が仕事が忙しかったのか、電話してペイちゃんの最近の様子を伝えようとしたところ、何にも変わりないんだろう?!

と話を遮って、あっという間に電話を切ることになったそうです。


それが頭の中でぐるぐる回り、「ペイさんよ、あなたはじぃじからも必要とされていないみたいよ?普通は孫って可愛いもんじゃないの?あなたは可愛くないみたい。あなたは、私の身内からも必要とされてない。あなたは私の事も嫌いだもんね?あなたなんかいらない。」という思想になり、そのまま道端にベビーカーのまま置いて来たのだそうです。


しかし、立ち止まって思いつめた表情でいたのかは定かではないのですが、付近の店の人が走って出て来て、お母さん!!!!と強く呼び止められたそうです。


その瞬間、歩さんが思った事はなんで引き止めるの?!という怒りだったそうです。

そのお店の人は恐らく戸惑いながらも

「赤ちゃん、忘れてますよ!!」

と言ったそうです。

歩さんは、

「いらないから、置いていったんです。」

と答えるとお店の人はとんでもなく驚いた顔をしたそうです。

その顔を見た瞬間に我に返ったそうです。


それまでの自分の思想などが走馬灯のように頭に走り、なんてことをしてしまったのだろう。

私にこの子を育てる権利があるのだろうか、ともう涙しか出て来なかったそうです。


急ぎ、すいませんすいません!!とそのお店の人に謝りながら逃げるようにベビーカーを押して私の家に向かったそうです。


それをもう涙ながらに聞きました。

正直、私が3番目を妊娠中の時、急な大量出血をして入院する事がありました。

妹が私に代わって上の子2人を面倒みてくれました。その間、三週間。

私は一日中子供達のことを考えて過ごし、医師に絶対に無理をしないから自宅療養に切り替えてほしい、と何度もお願いをし、なんとか許可をとって帰った頃には2番目の子は私に対して人見知りをしていました。


私の妹にピッタリと寄り添い、私に対して泣く姿をみて本当に悲しく思いました。一晩明けてなんとなくじわりじわりと距離が縮まり、夕方にはいつものように笑顔を見せてくれた時には嬉しくて、いまでは薄情者め!と笑い話ですが、たった1日だけ我が子に拒否されただけでこんなにも強烈な記憶として鮮明に残っているのです。


私の偽善者のようなほんの少しのお手伝いでは、歩さんの途方も無い一ヶ月には全く値しないのだと悟ったのです。


あまりに悲しい現実をようやく真剣に理解した瞬間でもありました。

その日はそのまま我が家に泊まるように言いました。


そして、ペイちゃんの顔を見ながら色んな事を考えたのです。

ない頭を振り絞って考えました。


そして、ようやく突破口に辿り着きました。




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