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歩さんとペイちゃんの物語〜発達障害の実話  作者: mckee
母としての壁
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私が母なのに…

病院での生活で少し変化があったようで、退院後ほんの少しペイちゃんの生活スタイルが変わっていました。


朝方まで起きていたのが、夜中の1時や2時には眠りにつくようになったのです。途中授乳はありますが、朝の7時とかまでは寝る時間と認識されたようで、入院から得たものがあった様子でした。


ある意味良かったのかもね、と話したりしながら歩さんにもほんの少し笑顔が戻るようになりました。それからほどなくして事件は起きたのです。


ある日の朝のこと、子供達を送り出してホッと一息でコーヒーを飲みかけた時に歩さんからの電話が鳴りました。


歩さんにとっては、いつもは眠い眠いとだらけている時間だっただけにどうしたのだろう?と首を傾げながら電話に出ました。


「どうしたぁ?」

という間もなく、電話口からは奇声に近いほどのペイちゃんの泣き声がしました。

詳しく聞くと、とにかくおかしいほどに泣き止まないんだ、と本当に困っている様子だったのです。


「ん〜。うんこは?」

と聞くと、

「昨日の夜に大量にしたんだよ。お腹も張ってないし、ちょっと原因がわからない。」

と歩さんは困惑気味でした。


旦那さんが仕事に行ってからずっと泣いているということで、良くわからないが行ってみるか、と話し、電話を切りました。


洗濯を干してから行ったので、電話から約30分ほどは経過していました。

到着して間も無く、外にまで響くほどの奇声が聞こえました。

どれ?どれ?と、玄関口で歩さんが抱っこしていたペイちゃんを抱き上げました。

その瞬間、ピタッと泣き止んだのです。


・・・・・・・・・。


完全に沈黙したのです。

「ハァーハァー」

という泣き止んだ後のペイちゃんの息づかいだけが聞こえました。


私と歩さんは理解できず、何が起きた?と、とりあえずなんとなくペイちゃんを歩さんに返したのです。


すると、

「キィーーーーーぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!キィーーぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

またしても奇声に近い泣き声で泣き出したのです。


私と歩さんは代わる代わる

「え?どういうこと?!」

「なんで?!」

動揺ばかりしてオロオロしました。


正直なところ、私は入院前からあまりペイちゃんを抱っこした覚えがなかったのです。

なぜなら、私の子供の末っ子がヤキモチを焼き、ペイちゃんに対して少し攻撃的な行動をとるようになったので、ペイちゃんを守るためにもあまり抱っこしないようにしていたのです。

というか、どう考えてもほぼ抱っこしていない日々だったのです。


だから、尚更どういうことなの?!

と2人で動揺したのです。


歩さんは戸惑いを隠せない表情で、

「ごめん、もう一度抱っこしてもらってもいい?」

と言いました。


私も戸惑いながらも

「うん。いいよ。」

とペイちゃんを抱っこしました。

またもやピタッと泣き止みました。


何かがおかしい。これはおかしい。

しかし、私も粘りました。抱き方じゃないか?そう思いました。

こうやって、ああやって、ひたすら抱き方の指導をしました。


一時間ばかり試しに試しに試しを重ねましたが、私の試行錯誤は全く意味がありませんでした。

どういう事なのだろう?


本気で全く解決策を見出せない事件となりました。

歩さんは言いました。


「あのさ、人見知りってよく聞くけど、母親…見知り?ってあるの?」

私は冷静に返しました。

「いや、聞いた事ない。」

歩さんももはや冷静に

「だよね。私も聞いた事ない。」


そうして、母親見知り事件は幕を開いたのです。



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