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プロローグ
6月のある静かな平日。会社のコンピューターのキーボードは今日も叩かれる。
「秋本くん。」
「あ、はい。」
「これも頼む。」
「はい、分かりました。」
いつもと変わらない会社生活。しかし、こんな生活の中でも小さくて大きい変化が起きた。退社する社員が増えたのだ。秋本の部署でも既に三人が退社した。彼の一番親しい同僚の藤村も昨日、辞職書を出して退社した。そのせいかそのお陰か分からないが、彼はインターンから正社員になった。しかし、彼の顔には「喜び」という気持ちは見えない。隣の席が空いているせいか、彼はそぞろにカバンを隣の席の椅子に置いた。