あなたに追いかけられたい
ツイッターが初出
「先輩、好きです…!」
「はいはい、わかったから、コレ資材室まで運んどけよー」
今日も適当に流された。
先輩はお兄ちゃんの同級生だ。
相手にされなくても好きで、何度もこうして告白しているのに、いっつも取り合ってくれない。
「お兄ちゃん、先輩、触っても照れたり赤くなったりしてくれない。どうやって誘惑したら良いかな……」
と、お兄ちゃんに相談を持ちかけてみたけど、私の言葉に真顔で振り返り、沈黙の後「……無理じゃね?」の一言で終わらされた。
「なんで!!」
と怒ったら「その、ない胸に手を当てて、よぉくかんがえてみろ」と、言われた。
「わ、私だって、先輩が全力で追いかけてくるぐらい、いい女になるんだからね……!!」
ない胸に手を当てながら、涙目で叫んだのは、ほんの数日前の話だ。
だから、あれから考えたのだ。
先輩が私を女の子として意識するよう。その為の手段を!
見てろよ、先輩。私の気持ちを適当に流せるのは今日までなんだから!
一念発起して、先輩の前に立ちはだかる。
「なに」
めんどくさそうな声。
ゴクリと息を呑んで、真正面の先輩を見上げた。
先輩の顔は真っ直ぐ前を向いたままで、目だけ見下すように私を見下ろしている。
なに、その相手にするまでもないみたいな顔……!!
こんちくしょう、見てろよ、先輩。そのすました顔、真っ赤に染めてやるんだから……!
そして私は思いっきり背伸びをした。そのまま先輩にぶちゅっとキスを……
ゴツッ
……き、きす、を………
「うぐっ……ぃてぇ!!」
くぐもった先輩のうめき声がする。
キス、を………
背が足りなくて、キスじゃなくて頭突きになった…!!(驚愕)
「い、痛い…!!」
先輩の顔にぶち当たった額を押さえて後ずさる。ずきずきする。涙がにじんだ目で、そおっと先輩を見上げた。
「てめぇ……」
先輩が怒っている。顔を真っ赤にして怒っている。
「痛いのは俺だろうがぁぁぁ!!」
「ごめんなさぁぁぁぁぁい!!」
全力で走って逃げた。後ろから追いかけてくる気配がする!
「ぎゃあぁぁ!!」
走る先にお兄ちゃんがいる。
「お! 良かったじゃん! 全力で追いかけられて!」
満面の笑顔で親指を立てられた。
「お兄ちゃんの、ばかぁぁぁ!!」
先輩の顔は真っ赤になったけど、先輩に追っかけられてるけど、望んでたの、コレじゃないぃぃ……っっ
兄から見た妹の恋愛事情( http://ncode.syosetu.com/n4530co/8/ )を合わせて読むと、良いかもしれません。
同じキャラのつもりはありませんでしたが、セットで問題ないというか、続きと思って読むと、良かったね感が増すのでw