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あまのじゃく

 アヤはコツンと石を蹴った。

 つまらない。

 もう一回、コツン。

 思い浮かぶのは、ユミカに腕を取られて走っていったユウジの姿だ。

「キライ」

 眉をしかめて呟いた。

『スキ!』

 突然しげみから声が響いた。それは甲高いけどがらがら声な、へんてこな声だった。

 びっくりしてしげみをのぞくと、そこには赤黒い肌のズボン一枚履いただけの男の子がいた。

 背格好は子供なのに、顔はなんだかおじいさんのようにも見えたし、でもやっぱり子供のようにも見える。

 声と一緒でやっぱりへんてこな顔だと、アヤは思った。

「あなた、だれ?」

『俺はあまのじゃくだ!』

 男の子は胸を張って言った。

「あまのじゃく?」

『お前、どうしてそんなにつまらなそうなんだ?』

 見透かされて、アヤはむっとした。

「そんな事ないもん。平気だもん」

 そう言ったとたん、あまのじゃくはニヤニヤしながら、アヤとおんなじ口調で言った。

『そうなんだ、つまらないの』

 その笑い方も、正反対のまねっこも腹が立って、アヤは叫んだ。

「違う!」

『そうだよ!』

 あまのじゃくはアヤの言葉と反対のことを同じように繰り返す。

 アヤはイライラした。

「ねえ、あっちへいってよ」

『ねぇ、側にいて』

 そういったあまのじゃくの声はさっきより柔らかくなって、がらがら声じゃなくなってきていた。

 ニヤニヤ笑っているのに、さっきみたいに腹は立たない。

 アヤは黙り込んだ。

「あまのじゃくは、なんでここにいるの?」

 でもまだちょっとしゃくにさわる。

 座り込むアヤのとなりに並んだあまのじゃくに、口をとがらせて尋ねた。

『アヤが面白そうだったからだ!』

 胸を張って言ったあまのじゃくの声は、さっきよりももっと声が綺麗になっていた。

 それは、なんだかアヤの声にだんだんと似てきているようにも聞こえた。

「なにが面白そうなのよ」

 面白い事なんて何一つなかった。

「別に、ユミカちゃんとどこへ行ったかなんてどうでもいいし」

 アヤはぼそっと呟いた。

 とたんにあまのじゃくが声を張り上げた。

『ユミカちゃんとどこへ行ったか気になるよ!』

 それはさっきよりやっぱり少しかわいらしくなっていた。

「気にならない!」

『気になる!』

「違う!」

『本当だよ!』

 ニヤニヤと笑うあまのじゃくから出る声は、もうすっかり女の子の声になっている。

 アヤは真っ赤になって叫んだ。

「ユウジなんてだいっきらいだもん!」

『ユウジのことが大好きなんだもん!』

 あまのじゃくの声は、すっかりアヤと同じ声になっていた。

「なにいって……っ」

 あまのじゃくの言葉に、一番びっくりしたのはアヤだ。

 思ってない! そんなこと思ってないったら、思ってない!!

 慌てて取り消させようとしたその時。

「アヤ、それって……」

 後ろから声がした。

 びっくりしてアヤは振り返る。だってそれはユウジの声だったから。

 違うの、さっきのはあまのじゃくが……。

 アヤはそう言おうとして、やめた。ユウジがうれしそうに笑っていたからだ。

「俺もアヤのことがスキだよ」

 アヤは顔を真っ赤にしてうつむいた。

「さっきのは、嘘だもん……」

『さっきのは、本当だからね』

 もう一つのアヤの声が聞こえる。でも、それを言っているはずのあまのじゃくの姿はどこにもない。

 さっきのは、あまのじゃくが……。

 何にも言えなくなって、ちらりとアヤは目だけでユウジを見上げた。

 ユウジは目の前でにこにこと笑っている。

 そっと手をつながれて、アヤはうつむいたままほんの少し、握り返す。


 あまのじゃくは、だぁれ?



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