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かなしいこいのものがたり

作者: 北山秋三

絵本風にしてみました。

とおいとおいある国に、それはそれはうつくしい女王さまがいました。


しかしその女王さまはニコリともえがおを見せず、見るものすべてをつめたくみつめるだけなので、いつしか『こおりの女王さま』とよばれました。


こおりの女王さまはすごいまりょくをもっていて、おそろしいまものでさえこおりの女王さまにはかないません。


でも、こおりの女王さまはそのちからをたみにふるうことはありませんでした。


こおりの女王さまとよばれていても、こころはとてもやさしいからです。


こおりの女王さまがそくいする前は、わるい王さまが国をしはいして、ぜいたくばかりしていたのでたみはくるしんでいました。


まちにはおなかをすかせた人たちがいっぱいいて、ぬすみをする人たちもあらわれました。


そこでこおりの女王さまは、とてもたよりになる騎士さまたちといっしょにわるい王さまをたいじしたのです。


わるい王さまはたいじされましたが、たみはこおりの女王さまのすがたからもっとわるい国になるとおもいました。


でも、すぐにそれがまちがいだったとわかります。


こおりの女王さまがそくいしてすぐに、まちでおなかをすかせている人たちにはあたたかいごはんがくばられ、ぬすみをするわるい人たちは騎士さまたちがみんなつかまえました。


こおりの女王さまと騎士さまたちはつぎつぎとわるいきぞくもたいじして、あっというまに国をよくしてしまったのです。


もうおなかをすかせている人も、ぬすみをする人もいません。みんなは、しあわせにくらしていました。


そんなあるひ、こおりの女王さまとけっこんしたいととなりの国のえらい人がいいだしました。


となりの国のえらい人にはわるいうわさがいっぱいあって、このままではまた国がわるくなるとまちの人たちや騎士さまたちはなやみます。


なやんだ騎士さまたちは、なんとかしようとえらいえらいまほうつかいのおじいさんにそうだんしました。


まほうつかいのおじいさんもいっしょうけんめいかんがえ、あることをおもいつきます。


まほうつかいのおじいさんがかんがえたのは、『ゆうしゃさま』のしょうかんでした。


むかしむかしにあらわれた、わるいわるいまおうをたいじしたゆうしゃさまと、こおりの女王さまがさきにけっこんすればとなりの国のえらい人もあきらめてくれるとおもったからです。


騎士さまたちはおおよろこびですぐにやろうといいましたが、まほうつかいのおじいさんはまだなやんでいました。


それでも、こおりの女王さまのためだとかんがえてゆうしゃさまをしょうかんすることにしました。


こおりの女王さまはそのことをしり、おどろいてゆうしゃさまのしょうかんをとめようとしましたが、もうとまりません。


しょうかんされたゆうしゃさまは、くろいかみとくろいめのやさしそうな人でした。


騎士さまたちはおおよろこびをしましたが、とつぜんしょうかんされたゆうしゃさまは騎士さまたちからはなしをきいてこまってしまいました。


なぜなら、ゆうしゃさまにはすでにいとしい人がいたからです。


こんどは騎士さまたちがこまってしまいました。


帰りたいというゆうしゃさまに、それでもなんとかおねがいをして、こおりの女王さまのけっこんあいてのフリをしてもらうことになりました。


となりの国のえらい人はおこってゆうしゃさまをこらしめようとしましたが、こおりの女王さまと騎士さまたちのちからでなんとかゆうしゃさまをまもることができました。


もっともっとおこったとなりの国のえらい人でしたが、もっともっとおこったことでまほうつかいのおじいさんにしょうたいがみやぶられてしまいます。


となりの国のえらい人はなんと、わるいまものだったのです。


わるいまものはこおりの女王さまとけっこんして、となりの国とこの国をじぶんのものにしようとしていました。


まほうつかいのおじいさんにみやぶられたわるいまものはおそろしいかおでおそいかかってきました。


わるいまものはとてもつよく、まほうつかいのおじいさんでも、騎士さまたちでもかないません。


こおりの女王さまもわるいまもののワナにかかってしまい、あぶないところでしたがなんとそこにとなりの国のゆうしゃさまがあらわれて、ゆうしゃさまとちからをあわせてあっというまにわるいまものをたいじしてしまったのです。


わるいまものをたいじしたゆうしゃさまは、となりの国からもかんしゃされました。


こおりの女王さまはゆうしゃさまになんどもおれいをして、元のばしょにかならず帰すとやくそくをしました。


いっしょうけんめいみんなで、どうしたらゆうしゃさまが元のばしょに帰れるかかんがえました。


そしてなんにちもたったとき、ようやくゆうしゃさまが帰るほうほうがみつかります。


でも、こおりの女王さまはそのほうほうをゆうしゃさまにひみつにしました。


なぜなら、こおりの女王さまはゆうしゃさまにこいをしてしまい、ゆうしゃさまを元のばしょに帰したくなくなっていたのです。


やくそくをやぶることになり、こおりの女王さまはこころがいたみましたが、それいじょうにゆうしゃさまのことをすきになってしまっていました。


それはほかのみんなや騎士さまたちもおなじでした。なかよくなったゆうしゃさまに帰ってほしくないのです。


なんとかゆうしゃさまにこの国にいてもらおうとしましたが、かってにしょうかんしてしまったことをなやんでいたまほうつかいのおじいさんが、こっそりとゆうしゃさまに帰るほうほうをおしえてしまいました。


こおりの女王さまに帰るほうほうをひみつにされたゆうしゃさまはがっかりしましたが、それまでみんながやさしくしてくれていたのでおこりませんでした。


たださびしそうにわらっていただけです。


そしてついにゆうしゃさまが帰るひがきました。


こおりの女王さまはゆうしゃさまにずっといっしょにいてほしいとおもいましたが、いちどやくそくをやぶってしまったのでいえませんでした。


騎士さまたちもまほうつかいのおじいさんも、なにもいえません。


元のばしょに帰るひのよる、こおりの女王さまとゆうしゃさまはさいごのおはなしをしました。


こおりの女王さまは帰ってしまうゆうしゃさまにしんぱいをさせたくなくて、さいごのさいごにちいさくわらってひとつのやくそくをしました。



また、あいましょう。



ちいさなえがおをみたゆうしゃさまはこころがいたみます。ゆうしゃさまにはこおりの女王さまにも、ほかのだれにもはなしていないひみつがあったのです。


でも、ゆうしゃさまはひみつをだれにもはなすことなく、元のばしょに帰っていきました。


みんなは、ゆうしゃさまは元のばしょでいとしいひととしあわせにくらしていくんだとおもっていました。


ですが、それをきいたとなりの国のゆうしゃさまはものすごくおどろいて、とつぜんなきだしました。


とつぜんなきだしたとなりの国のゆうしゃさまをふしぎにおもったこおりの女王さまがどうしたのかときくと、となりの国のゆうしゃさまはしずかにいいました。


かれは、しぬために元のばしょにかえったんだ。


ゆうしゃさまのいとしいひとはもうしんでしまっていて、ゆうしゃさまはいとしいひとがしんでしまったげんいんのわるいまものよりもつよい、わるいわるいまおうよりもつよいものをとめるために帰ろうとしていたのです。


でもそのわるいまものよりもつよい、わるいわるいまおうよりもつよいものをとめるためにはゆうしゃさまはいのちをすてなければなりません。


ゆうしゃさまは、さいしょからしぬつもりで元のばしょに帰っていったのでした。


そのはなしをきいたみんなはおどろいて、こおりの女王さまはゆうしゃさまを帰してしまったことをかなしみました。


かなしんだこおりの女王さまはもういちどゆうしゃさまをしょうかんしようとしましたが、なんどやってもできません。


どんなにまりょくをつかっても、にどとしょうかんはできませんでした。


かなしんで、かなしんで、こおりの女王さまははじめてこえをだしてなきました。ないたこおりの女王さまは、もうこおりの女王さまではありません。


だれもこおりの女王さまとはよばなくなりました。


こおりの女王さまは、いつしか『なみだの女王さま』とよばれるようになりました。


それからもこの国はなみだの女王さまと騎士さまたちのおかげでへいわにくらせましたが、なみだの女王さまはずっとだれともけっこんしません。


なみだの女王さまは、やくそくをしんじていまでももういちどゆうしゃさまにあえるひをまちつづけます。


でも、そのやくそくはかないません。なみだの女王さまはそのことをじぶんがいちばんよくわかっていました。


それでも、なみだの女王さまはきょうもひとりでゆうしゃさまをまちつづけるのでした。



39度近くの熱が二日続いて、こんな夢を見た。

あまりにも悲しくて、寂しくて、大泣きしながら起きた。

消えていく勇者様の背中が貴方に重なって、怖くなった。

「大丈夫?」

という貴方の心配そうな顔に安心して、貴方に縋り付いてまた大泣きしてしまった。

貴方の温もりを感じることができて、今は、幸せ。

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― 新着の感想 ―
[一言] とても良い話で感動しました!! これからも頑張って下さい(^^)
[一言] 初めまして 本麻香です 小説読ませて頂きました! とても切なかったです… では、最近暑いですがお身体に気をつけて下さいね。 これからも更新頑張って下さい!
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