表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もりみさき  作者: みじ
5/12

5話︰7月23日

朝起きると、もう10時を過ぎていた。


「…寝すぎたか」

「よう寝るやつやな」


起きると勝さんがいた。


「なんか問題とかないか見に来たけど、まさかまだ寝てるとは思わんかったわ」

「すいません、昨日帰るのが遅くなって」

「楽しんでそうでなによりや」

「ほんとに、何から何までありがとうございます」


ええねんええねんと手を振って勝さんは帰っていった。楽しんで過ごしと言ってくれたが何をしたものか。家にいても何も無いし、とりあえず外に出よう。またあいつらに会うかもしれない。けど、


「お腹減ってるな」


朝ごはんを食べていない。確か昨日海沿いの道の奥にスーパーがあったような。行ってみることにした。


途中までは昨日と同じ道を歩いていく。少し楕円の形になった海岸をひたすら歩く。よかった、堤防にはもう昨日のやつはいなかった。朝までしているかもと少し心配していた。

スーパーに着く。そこまで大きくはないが、大抵のものは揃ってそうだ。客層はお年寄りが多い。いくつかパンと飲み物を買って店を出ようとする。すると、見たことある顔が通った。


「あ、自由じゃん」

「お、ごはらか」

「何買いに来てるんだ?」

「朝ごはんなかったから買いだめとこうと思ってな。お前は何買うんだ?」

「…勝負に負けて、飲み物買ってくる担当になっちまった。 あ、そうだ、お前も来いよ。みんな集まってるし」


どうやらどこかで集まっているらしい。ごはらの、買い物に付き合い、そのまま一緒に行くことにした。




「戻ったぞー」

「お、帰ってきた帰ってきた。ん、ついでに自由も買ってきたのかな」


公園に来た。そこには知った顔ののどかと筒井もいる。それとあともう1人。


「……」


じっとこっちを見てくる。言葉にしなくても誰だこの人って言葉が顔に書いてある。とりあえず挨拶だけ。


「えっと、2日前くらいからここに住んでます。野津山自由です」

「あ、どうも」

「…どうも」

「この子は細谷友華(ほそやゆか)。今日はたまたまいるけど、よく一人でぶらぶらしてるんだよ」

「どうも」


ここに来て初めておとなしい性格の人にあった。この人もどうやらおなじく高二らしい。


「森はいないのか」

「なんか牧場の手伝いが忙しいってさ。てか、この村の人たちお互いに苗字で呼ぶこと少ないし、加奈実って呼んでいいと思うよ」

「そっか。そういや牧場に住んでるとか言ってたな。で、今何してたんだ?」

「…暇してた」

「することないしな」

「モルックだ」

「特になんにもしてないよ」

「1人だけ意見違うけど」


雄一だけ何か言った。


「ジュース買いに行く人決めるためにやっただけだろ」

「なんでだよ!昔は一緒に世界行くって言ってただろ!」

「人口少ないから目指しやすいって話だろ」

「なんだ?モルックて」

「木投げるだけだ」

「下から投げて倒すだけ」

「なんでそんな事言うんだよ」


雄一以外はモルックに冷めている。雄一はブツブツいいながらブランコを漕ぎ始めた。





「ここってさ、娯楽施設とかないのか」

「んー、隣町まで行けばあるけど、この村にはほぼないね」

「ゲームセンターとか一個あればいいのにと思うのにな。まああっても、こんなところのは大したことないだろ」

「適当にだべって、時間潰してゴロゴロしてるのが続くなあ」

「そんな感じなのか」

「まあ適当にいろいろしてるし、楽しいけどね」

「観光地にしようとしてる訳でもない田舎だから、静かで散歩とかは気持ちいいけどな」

「公園とか誰かの家で集まるのが日課だね」


暇そうな生活だけど、すごく羨ましい。こんな、一生続いていきそうな友情が本当に羨ましかった。


「公園にいても暑いし、家くる?」

「お、いいのかのどか。サンキュ」

「俺も行っていいのか?」

「そりゃあもちろん」



神社への階段を上る。着いた頃には汗だくだった。クーラーの効いた部屋で5人ゴロゴロと過ごす。時間を無駄にしている気がするが、何も嫌な気にはならない。



「すごろくでもする?」

「お、やるか」


すごろくなんて久しぶりで懐かしい。いつも通りのボード、自分の駒、そして…見たことない形のサイコロが出てきた。よく跳ねるゴム状のサイコロで、面が異様に多い。


「これが森岬村伝統の、18面式ゴムサイコロです!」

「いや何これ」

「普通のサイコロだと飽きるしな」

「ま、俺が1回振ってみるから見てな」


そういうとごはらは、壁に向かってポーズを構え始めた。友華が机の下に隠れている。何が始まるんだ。

―その瞬間。どごーん。大きな音とともにサイコロが壁にぶつかる。サイコロは跳ね返り、部屋の中を高速で飛びまわる。そして―


「ぶはっ!」


雄一の顔に直撃した。雄一が倒れる。


「おー、8か。まあまだいいほうか。あ、ちなみに今のは雄一の顔に当たったから、雄一は次の番パスだ」

「なんだその心と体両方を削るルールは」

「自分の番以外興味無さそうにする奴がいたから、そっからこんなルールできちゃって」

「私だ…」


机の下から声が聞こえた。友華が原因らしい。

変なルールだが、実際夢中になってしまっていた。顔に当たったが、衝撃があるだけで案外痛くない。

他にも、反復横跳び手押し相撲とか、自分たちでルールを作って遊んでいるらしい。馬鹿なことをして過ごしているうちに、時間もだいぶ遅くなってきた。


「んーまあそろそろ帰るか」

「そうだな」

「そうだね」


のどかに階段の下まで送ってもらい、その日は解散した。


「晩飯、買って帰らないと」


スーパーによって弁当を買って帰った。

のり弁を異様に推しているスーパーだった。



そして家で―


「…足裏が痛い」


足つぼスクワットのせいだろう。体を鍛えていかないと遊びにもついていけないかもしれない。筋トレしないと。耐えろ、俺。

12時を回る前に眠りにつく。

…モルック、ちょっとしたかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ