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もりみさき  作者: みじ
3/25

3話︰夏休みいらっしゃい

神社を下りまたぶらぶらと歩き出す。しばらくすると、また無人販売所が置いてある。監視カメラも無い、さすが田舎。見慣れない光景に目を惹かれてしまう。


「……………」

「……………」


視線を感じる。視界の端っこになんか映っている。振り向くと男がこちらを見ている。見た感じ歳も体型も同じくらいの高校生だ。その目は睨んでいるようにも見えるし、ただ見ているようにも見える。とりあえず視線は俺を向いてるのだけはわかる。

もしや、見慣れない顔が無人販売所を眺めていたから盗みでもするかと思われているのだろうか。無視したいがここに来て早々盗みだなんて噂を流されたらたまったもんじゃない。弁明だけ、弁明だけしよう。


「あの」

「?」

「別に野菜盗もうとか思ってませんよ」

「え、おう」


あれ、違うのか。じゃあなんで見てくるんだこいつ。料金箱狙いと思われているのか。


「あの」

「?」

「別に金盗もうとか思ってませんよ」

「あ、うん」


金でもないのか。なんで見てくる。もしかして、こんな田舎に知らない奴がいて何しにきたんだと怪しまれているのか?


「あの!」

「?」

「この村に死体捨てに来たとかじゃないです!」

「……さっきから何と勘違いしてんのお前」





「へえ、じゃあ今ここに住んでんだ」

「まあ昨日からだし、急すぎてあんま実感湧いてないがな」

「そんな急に住むことになったんならそうなるよな。

やっぱ前井のじーさんぶっ飛んでるなあ」


ただ野菜を買うのを待っていただけらしく、そのあともなんとなく一緒に歩いていた。この人も勝さんのこと知っている。さすが村の有名人。


「じゃあまだ、この村も知り合いほぼいない感じか」

「ほぼいないな」

「お、じゃあさ、」


立ち止まりこちらを見る。


「今日俺の家でパーティーやることになってるから、お前も来いよ」

「パーティー?誰かの誕生日か?」

「いいや、夏休みいらっしゃいパーティーだ」

「なんだそれ」

「毎年してるぞ、夏休み始まったって感じ出していかないとな」

「暇なのか」

「暇だ」


なんだかこの村で会う人は元気なやつばかりだ。これが田舎効果なのか。


「今日来るやつみんな高校生だし、顔合わせといた方がいいだろ」

「何人くらいくるんだ?」

「来るって言ってるのは6人だったかな。あー村にはもうちょいいるぞ」

「案外いるもんなんだな」

「いや少ないだろ」

「こんな田舎には1人いるかいないかと思ってたからな」

「舐めんな田舎」


少し歩くとこいつの家らしいとこに着いた。表札を見ると、『呉原』と書いてある。


「夜七時になったらここにこいよ」

「誘ってくれるのは嬉しいけど、勝手に行っていいのか?」

「まあすぐ仲良くなるだろ」


とりあえずまあ行ってみることにしよう。





時間になり、またここに戻ってくる。空はぼんやりと暗くなっているがまだ明るい。家の前には昼のあいつが立っている。


「お。良かった、きた」

「流石に無断欠勤はしない」

「都会のやつって約束守るんだな」

「舐めんな都会」


今日会ったばかりの人の家にあがらせてもらうなんて、こんな経験初めてで少し緊張する。家に上がるとふすまの奥が騒がしい。ふすまが開くと、そこには先に3人ほど座っていた。男子1人に女子2人。すると1人の男子と1人の女子が寄ってきた。


「あ、この人かー」

「引っ越してきたとかいう人ね」

「どうも」

「そうそうこいつだ。名前は………あれ、お前名前なんだ?」

「俺もお前の名前知らんぞ」

「なんでお互い知らないのー」

「ごはら親友なったとか言ってたのに」

「なんも考えてなかったわ」

「野津山自由って言います」

「お前そんな名前だったのか。俺は呉原(くれはら)成悟(せいご)だ」

「自由って名前なんかいいよなぁ。あ、僕は筒井(つつい)雄一(ゆういち)。よろしく」

「えっと、(もり)加奈実(かなみ)っていいます、家は牧場やってますー」

「牧場?ここってそんなのもあるのか」


一通り挨拶を終えるが、そういえば部屋にもう1人いたことを思い出す。人影のある方を見る。その白髪の人はじっとこっちを見ている。なんか見た事がある。のどかだ。


「…やっぱり五百円の人だ」

「どうも」


最初は緊張したが、みんな話しやすい人たちだったのもあって、すぐに打ち解けた。あと来るはずだった1人は釣りが絶好調だからドタキャンだと。最初に目のあった2人の雄一と加奈実は高一、のどかと呉原は高二らしい。あと呉原は名前からか「ごはら」と呼ばれていた。あだ名、ちょっとだけ羨ましい。



時計も11時を回り、解散することに。こんな楽しかった夜は久しぶりだ。2人と別れ、途中まではのどかと帰り、そして1人になった。



「海沿いでも歩いて帰るか」


散歩がてら、暗い浜辺の横の道路を街灯を頼りに歩く。聞こえてくる波の音が気持ちいい。浜の端にある堤防はまだ明るかった。


で、……そこに誰かいる。しかも今うっすら叫び声も聞こえた気がしたけど。怖い。でも海の夜は危ないし、軽く注意だけしに行こう。

と、理由をつけたが、正直何をしてるのか気になって見に行きたかっただけだ。これが田舎の日常ならば、俺もいつか堤防で叫ぶ日が来るのか。よし、変な人だったらすぐに逃げよう。

ゆっくりと浜への階段を降りる。



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