24話︰自由研究①
久しぶりに加奈実の家の牧場を見に来た。というより誰かいないかと適当に村を歩いていたが、誰にも会わずなんとなくここまで来てしまった。前に来た時たしか勝手に入ってもいいとか言っていたが、いざ来ると誰もいない牧場に入るのは不法侵入みたいで入りにくい。
ふと入口の横を見ると、小さな店があった。これが前言っていた直売所みたいなやつか。
中に入って少し覗いてみる。そこまで広くはなく、冷蔵庫と少しだけ椅子がある。中にある冷蔵庫には、ここで取れたもので作ったであろう牛乳やチーズ、ヨーグルトなどがあった。無人販売所の形式で売っていて、見た感じけっこう売れてそうだ。
「こんな田舎なのに意外と人来るもんなんだな」
「わざわざ買いに来てくれる常連さんもいるんですよ」
「わっ」
後ろをむくと、入口にすみれちゃんが立っていた。荷物を見た感じ買い物帰りのようだ。
「あ、すみれちゃんか」
「どうも。なにか買いに来てくれたんですか?」
「いや、なんとなく散歩してたらここまで来てて。直売所っぽいのがあったから見てみようかなって」
「そうなんですか。でも今お姉ちゃん家に居ませんよ」
「え、そうなの?」
「はい、お父さんとお母さんの手伝いで街の方まで行ったらしいです」
「そうなんだ。まあ別に用事があった訳でもないし大丈夫だけどね」
「じゃあ自由さんは暇ってことですか?」
「そうだね」
「よかったら手伝ってくれませんか」
「もしかして夏休みの宿題?」
「はい。自由研究です」
自由研究か。懐かしい。ほとんど親にやらせてた記憶しかない。でもまあこの歳になったら小学生の手伝いくらい容易だろう。
「全然いいよ。で、何するの?」
「なんも決まってないんですよそれが」
ここでずっと話すのもあれだからと家にあげてもらった。
「めんどうだし、簡単なのがいいよね」
「いや、友達に負けたくないからすごいのしたい!」
「意欲はしっかりあるんだ」
「勝負することになってますから。友達どうし、お互い頼ったりできないんですよ」
「じゃあ俺が手伝ったらアウトじゃない?」
「まあサポートくらいならいいと思いますよ」
「じゃあ、まず俺何したらいい?」
「案を出してください」
「植物観察日記、昆虫採集、100均の実験セット」
「違います!もっと独創的なのがいいんですよ」
意外と考え出すと思い浮かばないものだ。小学生でもできるような難易度で、かつ独創的。
「正浩に手伝ってもらって、ここらで釣れる魚の調査!」
「なんか難しそうだしおもんなさそう。小学生が見ても何も分からなさそうなレポートができそうです」
「俺もそんな気がする」
「のどかに手伝ってもらって、神社の巫女の体験レポート!」
「何年か前に本人が巫女に関するレポートを完璧に書いてたので被っちゃいます」
「その努力を是非とも勉強に当てて欲しいな」
「雄一に手伝ってもらって、モルックというあそ……スポーツに関するレポート!」
「なんかあれですよね、木を投げるだけのやつ。あまり面白そうには見えないですけど」
「俺もやっぱやめた方がいいと思う」
「友華に手伝ってもらって、ゲームセ……いや、なんでもない」
「何言おうとしたんですか」
「俺のこの村に来た感想レポート」
「それもう自由さんの研究ですよね」
「ごはらに手伝ってもらって、……………なんか……ほら、いろいろしてもらったり」
「もう案ないんですね」
「せっかく家が牧場なんだし、他じゃできないこととかあるんじゃない?」
「もう毎年そんなことしてるせいでネタが尽きてきました」
だめだ、何も思いつかない。
「まあ夏休みまだまだあるし、焦らなくてもいつか急に見つかるかもよ」
「まあそうなんですけどね。でもやる気のあるうちにやっとかないと!」
「村のことを調べる研究とかは?」
「村のこと……案内マップ…とか…」
「案内マップか。なんかよさそう」
「よし、それにします」
「いやそんなすぐ決めていいの」
「とりあえず決めないと始まりませんしね」
「でもこの話題じゃ俺はあんま力になれないな」
いろいろこの村でしてきたとしても、案内なんてできるほどじゃない。むしろまだされる側だし。
「私もいきなり書けって言われたら難しいですね」
少し悩んですみれちゃんが何かを思いついた。
「あ、そうだ、村を回りに行きませんか?実際に観光スポットを巡ってそこを書いていくんですよ」
「いいけどそもそもこの村に観光スポットなんてあるの」
「私たちで見つけるんですよ」
すみれちゃんがパタパタとどこかに走っていってノートを持ってきた。
「これに書いて作っていきましょう!」
普通の新品の自由帳。これをマップにするらしい。
「ページ数多いけどこんな書けるの?」
「余ったらちぎればいいんですよ」
「まあ…たしかに」
すみれちゃんがノートや水筒やら準備をしだす。
そして一緒に村の案内マップを作る旅に出た。




