23話︰モルック
「モルックしないか」
「はい?」
家のドアを開けると雄一が立っていた。ついでによく分からないことを言った気がする。
「どうした急に」
「前、僕がモルック好きだって話はしただろ」
「ああ、なんか言ってたな」
「あの時どうしてもやりたそうな目をしてたから誘ってやろうと思ってな」
「そんなこと思ってないぞ」
「とりあえず、暇だろうし行くぞ」
半強制的にモルックを体験することになった。
そして雄一に浜に連れてこられた。
「じゃ、さっそく勝負するぞ」
「まてまて、まずルール知らん。モルック自体全然聞いたことないし」
「ああそうか。あそこに1から10の数字が書かれた木の棒が1本ずつ置いてあるだろ、それを無地の木の棒を投げて倒す。1本倒れたらその数字の点数。2本以上だと倒れた本数の点が入る。それが50点ぴったりになるまで勝負するんだ。超えると25からやり直しだ」
「ほう。まあなんとなくは分かった」
「やったほうが慣れるさ」
棒を手に取り、遠くに置かれた棒を狙って投げる。
コンッ。
「お、2つ倒れたか。なかなかうまいんじゃね」
最初はたまたま当たった。
が、2回目は当たらなかった。3回目も当たらない。
「地味に遠すぎるんだよあれ。くそっ、また外した!」
「あ、3回連続当たらなかったから失格な」
「なんなんだよそのルール」
その後もしばらく2人でモルックを続けた。だんだん当たるようになってきて何回か勝負もした。
けど。
「あのーすいません。飽きたっす」
「え、もう?」
「いやね、競技としてはいいと思う。楽しいと思う」
「はい」
「でもな、2人でひたすら投げてても盛り上がりに欠ける。俺らがただ水切りしてる子供みたいに思えてきた」
「…………嫌いか」
「あ、いや、俺が合わなかっただけで……ほら、学校には一緒にやる友達もいるんだろ?そいつらと…」
「僕1人だ」
「なんかごめん」
申し訳ない。けどモルックにごはら達が乗り気じゃなかった理由がよくわかった。
でもこのまま帰りにくい。
その時、道路に誰かが歩いているのが見えた。
「あ、友華!」
「へっ!?」
「ちょっときて」
「え、なに…………あ、やっぱいいかな…」
散らかっている木の棒を見て何かを察したようだ。早足でどっかに行こうとする。すると雄一が友華に向かって叫んだ。
「友華!今日こそ倒すから勝負してくれ!」
「倒すって……え、あいつモルック上手いのか?」
「ああ、友華はこの村最強だ」
「この村って…そもそも私たち数人しかやってないでしょ」
それはほんとその通りだ。
雄一の必死の説得により、友華が浜におりてきた。誰が見てわかるくらい乗り気でない顔。でも、どのくらい上手いのかちょっと気になる。
「じゃあ私からね」
特に考える様子もなくサッと投げる。まさか全部倒してしまうのではないか。
コンッ。
棒は1つしか倒れなかった。
「あれ、1個しか倒れてないな。もっと豪快に倒すのかと思ってた」
「いや、よくみろ」
「?」
倒れた木の棒をよく見ると、それは10と書かれた棒だった。
「まさかこいつ、狙ったのか」
「ああ、友華はいつも10だけを倒しにいくんだ」
「プロじゃないか!」
「プロだ。そして確実に毎回これをする」
「へへっ」
恥ずかしそうに笑った。さっきまで嫌そうな顔してたのに。友華は褒めたら案外ちょろい。
その友華と雄一の勝負は一瞬で着いた。雄一が50に行くまでに友華は10の5連続倒しで勝利していた。
「こんなに上手いのにモルックを好きにはならないんだな」
「私が上手すぎて相手がいなくなっちゃうからかな」
「なんかかっけえ。俺もそんなの言いたい」
「僕がもっと上手かったら…」
友華はゲーム全般上手いようだ。ゲームセンターでは乱獲し、このスポーツか遊びかよく分からないものもプロ並。
「友華はなんでも出来るタイプか」
「成績もトップらしいぞ。学年違うからよく知らんけど」
「だったらのどかに勉強教えてやれよ。高校2年であれはやばいと思うんだが」
「教えようとしたことあったけど、途中からこれ時間の無駄かもしれないって気づいた」
「見捨てたるなよ」
そもそもあいつ、大学行く気はあるのかな。
「なんでもできるって言うけど、運動はだめだめだよ」
「これもスポーツ、運動なんだが」
「私の中では遊びに入るかな」
「俺も」
「ううっ」
なんで雄一がこんなプレイ人口少ない競技をガチることになったのか気になる。
「そういや友華はどっか行こうとしてたのか?」
「え、いや、特に何も。散歩かな…」
「暇だったのにモルックやるのは躊躇ったんだな」
「…ほんとはゲーセン行こうとしてた」
「ああ…止めて悪かった」
「友華なにかいったか?」
「なにも」
友華を解放してあげた。そして俺ら2人だけが浜に残った。俺もそろそろ帰りたい。
「…モルック、するか?」
「いいのか!?」
「俺が勝つまでな」
「一生帰らせないからな!」
5分後、俺たちは帰宅した。




