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もりみさき  作者: みじ
21/25

21話︰海の駅

俺は気づいた。ここに来て2週間も経っていない。だがこの町に住んでいる人とはかなり仲良くなってきた気がする。


しかし、地域のことをよく分かっていない。昨日だって実は駅があることに気づいた。海沿いを東に進んでいけばスーパーやいつも遊んでいる場所、さらに行けばお祭りのあった大きな街もある。


けれど西に進めば何があるのか。市場はあったがそこまでしか行ったことがない。正確に言えばこの村には西から海沿いを歩いてきた。結構奥には駅があるのは覚えている。けどあの時は市場も見えていないほど何も考えずひたすらくたばるまで歩いていた。



そう、なので俺は今日西へ冒険に行く。1度通ったはずだけども、ほぼ初めてだ。家にあった帽子をかぶって家を出た。



歩いていくとまず市場が見えた。この時間は勝さんはいるんだろうか。けれど今日はここを無視して進む。


少し進むと大きな堤防が見えてきた。正浩がいつもいる堤防よりも何倍も大きい。先まで行ってみようと思ったが、途中で曲がっていて最後が分からない。

めんどくさいしやめとくか。



そこからはしばらく何も無かった。右側にひたすら山があり、左側にひたすら海がある。時々浜辺で遊んでいる家族や子供を見たが、それ以外何も景色は変わらない。そりゃな、こんなとこ歩くとこじゃないからな。

……よく歩いてきたな、俺。


歩き始めて4時間くらいだっただろうか。疲れも溜まってきたところ、突然、海の横に大きな建物が見えてきた。なにかの施設だろうか。車も何台か止まっており、人もそこそこいるようだ。



「海の駅…なのか?」


近づいて見てみると、お土産を売っているように見える。入口にはケースが置いてあった。亀がいた。無表情で固まっている。何考えてるか分からない顔。そう、それが良い。



「かわいいなあ」

「でしょー、癒されるわよねえ」

「わっ」


いつの間にか横に女性が立っていた。店員の服を着ているし、手には餌のようなものを持っている。飼育係の人か。


「どう、君、餌あげてみる?」

「え、いいんですか」

「まあすぐ食べないだろうし、置くだけだけどね」


亀の餌やり?をやらしてもらうことになった。葉を手に取り、そっと横に置く。するとゆっくりと首を曲げて食べだした。かわいい。


「ここに来るの初めて?」

「あ、はい、歩いてたら見つけて」

「じゃあ駅の方からか。観光客かしら?」

「いや、東の方から散歩がてら来まして」

「え、森岬の方から?遠くなかった?」

「まあ遠かったですけど最近ここらに引っ越してきて、近くに何があるか見ておこうと思いまして」

「ほう」

「?」

「あ、ごめんね。違ったら悪いんだけどさ、」

「はい」

「もしかして自由くんって子?」

「えっ」


なんで名前知ってるんだ?こんな遠いところまで引っ越してきたことって広まるのか?それかこの人も森岬村の人なのか。


「あ、合ってた?」

「は、はい、そうですけど…なんで名前知ってるんですか」

「よかったー。成悟(せいご)と仲良くしてくれてるらしいね」

「成悟……あ、ごはらって呼ばれてる人ですか」

「そうそう、私、成悟の母なの」

「えっ!!」


まさかのことに驚く。目の前のたまたまあった人が、あのごはらのお母さんだった。


「ここで働いてらっしゃるんですか」

「そうそう、海の生き物たちとも触れ合えるし、いいなあって思って」

「ここで働いてるとか、全然そんな話ごはらから聞いてなかったです」

「あらそうなの」

「そもそもこっち側にこんな店があるとも知らなかったですし」

「合われたくなかったから、あの子言わなかったのかもね」


この店はずっと前からある海の駅で、お土産の販売とレストラン、あと少しの生き物の飼育がメインらしい。ごはらのお母さんは10年以上前から働いており、主に飼育を担当しているとのこと。


「こんな所にある店の割に意外と広いし、ゆっくりしてってね」


ごはらのお母さんと別れて、店の中を見てみることにした。



中に入るとお土産売り場が広がっている。本州最南端付近であることを売りにしたグッズが多くあった。

2階に上がるとレストランと、海を見渡せる展望デッキがある。外構人観光客もちらほらと見られた。

せっかくなのでレストランで食べていくことにした。


「すいません、オススメってありますか」

「名物じゃないですけど、オムそばとかオススメですね」

「じゃあそれお願いします」


少し時間が遅かったのもあり空いていたので、すぐに料理が届いた。


「おお……でか」


600円と、高い値段ではないのに、割に合わないサイズのオムそばが出てきた。焼きそばは隠れて見えていないのに中にぎゅうぎゅうに詰まっているのがよくわかる。

でもまあ、今はお腹も空いていたし食べれるだろう。




「………きつい」


食べ始めて20分。味が美味しいのもありどんどん食べ進められた。しかし残り4分の1ほどの時点で流石に限界がきた。正直これ以上腹に詰めたら帰り歩ける気がしない。でも、残す訳にはいかない。贅沢な暮らしをしてこなかった俺は食べ物を残すなんて考えはない。


「うおおおおおお!!」


気合いで食べ進めた。そしてついに、完食。やりきった。世界が明るい。この経験は大人になって役立つだろう。多分。



食べ終わった皿を返しに行く。すると店員がびっくりした顔で見てきた。


「あら、全部食べきったんですね。久しぶりに見ましたここで食べきる人」

「そりゃ残す訳には行かないんで。というかほかの人達は残していくんですか?」

「いえ、それに詰めていきますよ」


店員が指さした方向を見ると、持ち帰り用のプラスチック容器が置いてあった。しかもご丁寧に大きな字で『オムそばが食べきれなかった人に!!』と書いている。


………周りを見るって、大事なんだな。

知ってましたけどと言わんばかりの顔をして1階に降りる。



「あ…これダメなやつだ」


降りてきたものの、オムそばのせいで動けない。ゆっくり歩くのすらしんどいのに村まで帰れるわけが無い。端に休憩室と書いているのが見えた。しばらくそこで休憩しよう。ソファ席もあって、静かにヒーリング音楽も流れている。

……これは、寝れる。







「…………あっ!」


すっかり寝てしまっていた。窓の外を見ると赤い。夕方になるまで寝てしまっていたようだ。急いで帰らないと。道中で暗くなってしまったら危ない。急いで店を出ようとした。その時、


「あら、まだいたの」


ごはらのお母さんがちょうど帰ろうとしていた。


「すっかり寝てしまっていて」

「そうなの、今から歩いて帰る予定?」

「はい」

「暗いと危ないし、車、乗っていきなさい」

「え、いいんですか」

「そりゃもちろん、成悟のお友達でしょ」

「ありがとうございます!」


幸運なことに、車で家まで送ってもらえることになった。時間をかけて歩いてきた距離を何倍ものスピードで戻っていく。こういうのを見ると、なんだか歩くのが悲しくなってくる。



無事に家まで送ってもらった。いい方だった。

ごはらにもまたお礼を言っておこう。

足も痛いしお腹もまだキツイ。風呂を軽く済ましてすぐに寝てしまった。



―――――――――



一方ごはら家。


「ただいまー、あ、成悟、今日あの自由くんって子、うちの店まで来てたわよー」

「え、まさかあいつあそこまで自転車で行ったのか?」

「いや、自転車じゃないわ」

「あーよかった、流石にバスか」

「ううん、歩きだったらしいわよ」

「もう怖ぇよあいつ」



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