17話︰お祭り②
橋を渡ると川に北側に着いた。ここから河口まで屋台が続いている。屋台のないところもあるが、1kmくらいはありそうだ。
それにしても、南側よりかは人も少ない気がする。
「花火は南側でやるから北側は比較的空いてるんですよ」
「そうなんだ。花火って何時からなんだ?」
「19時30分からだそうですよ」
「すみれちゃんよく調べてて偉いねえ」
「お姉ちゃんをサポートしなきゃなので!」
「加奈実、妹から全然信用されてないじゃん」
「牧場の仕事はちゃんとやってるんだけどねー」
屋台の待ち時間も短く、スムーズに回れる。男子1人と女子4人で何回ってんだ、という視線がある気もするが。そんな中、泰葉さんの行動が気になる。
「すみれちゃん、なにか並ぶ?」
「すみれちゃん、袖にソース付きそうだよ」
「すみれちゃん、お姉さんが何か買ってあげるよー」
異様にすみれに対して優しく接している。すみれは5年生の割にしっかりしていて、敬語も使うし奢られるのも遠慮していた。断られた時は泰葉さんちょっと悲しそうだった。
こっそりと泰葉さんに聞いてみる。
「すみれのこと、結構気に入ってますね」
「そりゃああんなに可愛いんだもん。礼儀正しいけどところどころ子供っぽいところもあるし、いいよねえギャップ萌え」
「ギャップ萌えなんですかそれ。てか子供っぽいとこ見たことないですけどね」
「意外とお菓子で釣れたりするんだよ」
「え、釣ったんですか」
「村で見かけた時にうちがお菓子あげるから家来なよって言ったら来てくれたよ。ついでに泊まってってくれないかなって思って」
「誘拐じゃないすか」
「でも加奈実が迎えに来てすみれちゃん連れてかれちゃった」
「犯罪者にならないでくださいよ」
まあこの人なら大丈夫だろう。もし泰葉さんが男だったら……うん、女でよかった。
こうやって屋台を見て回るのは懐かしい。せっかくだし全力で楽しもうと思ったが、なんせ屋台なので高い。唐揚げ数個でいつもののり弁が買える。のどかは比較的安いきゅうりの浅漬けを両手に持ってかじっている。加奈実はずっとすみれのことを気にかけていた。仲のいい姉妹で微笑ましい。泰葉さんは時々すみれに餌付けしている光景が見られた。
「……おい、あれって時田のどかさんだよな」
「ほんとだ。あれ、横のやつ男子じゃないか」
「村の奴らじゃないのか?」
「見たことないぞ、あんなやつ」
少し離れたところから何やら会話が聞こえる。たしかごはらたちに聞いた話だと、学校ではのどかは神聖な巫女さんで明るい優等生のイメージ。きゅうりを両手に頬張っているけどこれはいいのか?のどか本人はまだ気づいていなさそう。こっそり教えるか。
「…なあのどか、同級生っぽそうなやつらが見てるぞ」
「え、どこどこ」
キョロキョロしだしたのどかに同級生たちの居場所を教えると、のどかは2本のきゅうりを片手で持ち、笑ってそいつらに手を振った。
「やっほー、来てたんだね」
「お、おう!そうそう!今来たとこ!」
「じゃあねー!」
「あ、おう!」
男たちならすぐ好きになりそうなかわいい笑顔。あっさり別れちゃったけど。本人はただ普通に接しているだけなのに。崇められても無理はないなこれ。
「お前、やるな」
「え、なにが?」
こいつはいったい何人を男子を犠牲者にしたのか。
無自覚な美人って、怖い。
箸巻きの店があり、食べたかった俺と加奈実が並んだ。のどかとすみれと泰葉さんはベビーカステラに並びに行った。後ろ姿を見ると2人しかいない。多分泰葉さん、すみれ抱き抱えてるな。
「なあ、村の小中学生たちもこの祭り来るんだろ?」
「あー、来てると思うよー。何人か親も同伴だろうけどね」
「でも、すみれは俺らと回ってるけどいいのか?」
小学生も来ると言っていた話を聞いて、少し気になっていた。
「あーすみれはねー、何年か前までは小学生らの方で行ってたけど最近は私らと回ってるね」
「それって、、、ああ、そうなんだな」
「? あー、親に見守られてる感が嫌!って言ってたよー」
「そうなんだ」
一瞬、3年前に引っ越した子がいなくなったからかと聞いてしまいそうになった。聞いていたら失礼だったかもしれない。
箸巻きを貰い、3人の元へ向かう。
すると加奈実が口を開いた。
「すみれ、しっかりしてるでしょ」
「え、ああ。小学生じゃないみたいだな」
「お母さんが亡くなってから自分がまともにならないとーって思い込んじゃってるらしいんだよね」
「えっ」
お母さんがいないだなんて聞いていなかった。
「あれ、言ってなかったけ」
「聞いてないぞ」
「てっきりもう言ったつもりでいたよー。牧場にも来てたし」
「牧場の仕事、大丈夫なのか」
「うん、お父さんも別の仕事がない時やってくれるし、手伝ってくれてる人もいるから」
「じゃあよかった」
「うん。だからすみれを甘えさせてあげてねー」
「??」
「私はね、あいつを甘えん坊にしてやりたい」
「もう無理じゃないか?俺よりしっかりしてる気がするぞ」
「いけるよー。まあ、その前に私が頼られるようにならないとねー。やすねえは甘やかしてくれるから私からしたら助かってる」
「甘やかし過ぎな気もするけど」
「家連れ帰った時はさすがに取り返した」
「あっ、それさっき聞いたわ」
並び終えていたのどかたちのところに着いた。
「うっ……きゅうり2本が思ったよりお腹に来た…」
のどかはもう少し苦しそうだった。
「うちのベビーカステラあげるよー!」
「あ、いえ、私も買ったので大丈夫ですよ」
こっちは相変わらずだった。
海の近くまで来ると、そこにも橋があった。橋を渡った先の南側での海沿いで花火をあげるらしい。今の時刻は5時。南側を回るには十分時間がある。
「混んでくる前に南側も見に行こっか」
「私…もうあんま食べれない…」
「別に食べなくていいだろ」
そういやもう1つのグループは大丈夫なのかな。友華が上手くやれているかどうかだ。
まあ、ごはらがなんとかしてるか。




