16話︰お祭り①
自由はスーパーに買い物に来ると、ある張り紙に目が止まった。
『今年も開催!!古笠祭り!!』
祭りの張り紙だ。でも名前からしてこの村の祭りではなさそうだ。日付は明日と明後日か。なかなか規模も大きそうだし、少し興味がある。あいつらは行くんだろうか。
「なんだもう知ってたのか。もちろん行くぞ」
家でのんびりしているとごはらが尋ねてきた。
「古笠?だっけ。どこなんだそこ」
「隣町の名前だな。古笠市。そこでやる大きい祭りだ。ちょうどそれに誘おうと思って来たんだけどな」
「でもそれ明日じゃなかったか」
「そうだぞ。でも俺ら、毎日暇してる組にとっては一大イベントなわけだ」
「それで何をするんだ」
「浴衣を借りに行く」
「あーいうのって高くなかったか?そんな大金使えないんだが」
「いや、村の小中学校に浴衣が置いてあるんだよ。それを取りに行くんだ」
「なんでそんなとこに置いてるんだよ」
「毎年学生たちが借りようと金払ってたら高いし、せっかくだから楽しんでもらうようにと町が買ったらしいぞ。で、置き場に迷って学校に置いたんだとさ」
「へえー」
「とりあえず行くぞー」
学校まで着るものを選びに行くことになった。
学校に着くと見たことある顔がいっぱいいた。泰葉さん以外の肝試しメンバーと、加奈実の妹のすみれがいる。机の上には大量の着物があった。
「お、来たね」
「こんないっぱいあるのか浴衣」
「そうだぞ、加奈実の妹と高校生ら全員で行くから被らないようにするんだ」
「そんな大人数で行くのか」
「ねえ、これどっちがいいと思うー?」
「お姉ちゃんそれ去年と一緒だよ」
各自それぞれ好きな浴衣を選んでいく。浴衣なんて着たことがないからどんなのにすればいいか分からない。よくありそうな柄はシンプルで黒っぽいやつでいいか。
「あ、自由、黒と紺色は無しな。普通すぎておもんないから」
選択肢が消えた。悩んでも分からないし横に置いてあった鮮やかな青色の浴衣を選んだ。
「とりあえずみんな決まったか」
「うん、私こんな明るい色着るの初めてだなあ」
「僕、浴衣すぐ脱げるから嫌いだな」
「……私も。ていうかあんな人ごみ嫌いだし今年はもういいって言ったのに…」
「でも友華、そんなこと言ってなんだかんだ行ったら行ったで楽しんでるじゃん」
「てかのどか何で2個浴衣持ってんだ?」
「あーこれ?やすねえの分だよ。受験勉強で忙しいからあんま遊べないけど息抜きに祭りは行くらしいから。浴衣は私のおまかせって言われちゃった」
そうか、泰葉さんは受験生か。だからあまり見ることがなかったんだな。なんであんな肝試しなんか来たんだよ。
「てか自由、学校の中はいるの初めてでしょー。せっかくだし校内散策でもしたらー?」
「いいのか」
「別に全然いいだろうけど何も無いからな」
「こういう木製の建物の雰囲気好きだぞ」
校舎は1階建てで横の長さも普通くらい。授業をしている教室は違う学年も一緒の教室で、その年の生徒数によって1つか2つに変わるらしい。
「席はいっぱいまで置いてあるんだな」
「まあ避けとくところもないしね。それにほら、転校とかして席も無くなったらもっと寂しくなりそうだし」
「全員の人数が少ないから、3年前にあのお姉ちゃんいなくなった時も寂しかった」
「すみれ、すごい仲良かったもんね」
加奈実の妹のすみれの仲良かった2つ上の友達も3年前に引っ越して居なくなってしまったらしい。1人抜けるだけで随分寂しいだろう。
学校を出る。この後もなにか遊ぶかと思ったが、のどかは泰葉先輩に浴衣を届けに、森姉妹は牧場の世話、友華は「…眠いから帰る」らしく、男4人が暇していた。
「なにする」
「正浩んとこの食堂で飯でも食うか」
「どうせその後家あがってくるんだろ」
午後は正浩の部屋で喋りながら時間を潰した。浴衣の着方がわからなかったのでついでに教えてもらった。
「いやだからこうだって」
「こうか?」
「なんでこいつこんな下手くそなんだよ」
祭りは昼からも盛りあがっているらしく、昼過ぎには集まるとのこと。途中で眠くならないように早く寝ておこう。
夜、家に帰って浴衣を眺める。浴衣か…適当に選んだけど似合うのか?……1回鏡で見てみよう。
…あれ…あれ、どうやって着るんだっけ。全然着れない。結局着るのに30分くらいかかった。
着方が分からずに暴れている自分が情けなくなってきた。
翌朝、スーパーに向かう。祭りで売っている飲み物は高い気がするので持って行けるくらいだけ買っていくことにした。スーパーがいつもより混んでいる気がするのは気のせいなのか。あいつらいわく、祭りはなかなかの大きさらしいので、この村からも行く人が多いんだろうか。スーパーの中にはこの村に住んでいるらしい小学生たちもいた。
「なあなあ、お祭りにお前はお菓子なに持ってくんだ?」
「俺は500円分グミ持ってくぜ」
「すげえ!俺もいっぱいポテチ持ってくぞ!」
祭りにお菓子を買っていくのかよ。持って行ってあっちで食べてもなんも変わらないだろ。あれ、これはお菓子だからだよな?飲み物はセーフだよな?
なぜか自分も間違ってる気がしてきた。
昼過ぎ、バス停前に集まった。今日はちゃんとみんな揃っている。浴衣もみんな着て来ている。
ごはらは派手な赤色、雄一は紫色、正浩は茶色、のどかは白色、加奈実とすみれは姉妹揃って緑色、友華は黄緑色、泰葉さんはオレンジだ。
みんな似合っている。青が派手じゃないか心配だったけど、ごはらの赤を見ればそんな気もなくなった。
バスがくる。中を見るとちらほらと祭りに向かうような人たちも乗っていた。どのくらいの規模なんだろう。見たことないくらいなんだろうか。20分バスに揺られて隣町に向かう。
「よーし着いたか」
前に友華と来たバス停に止まる。
「じゃあ早速行こっかー」
ぞろぞろと歩き出す。祭りの場所へ………ではなく、前来たショッピングモールに。
「え、あれ、祭りのとこに行かないのか」
「暑さ対策でひんやりシートとか虫除けとか買っとくんだ。長い時間いるからな」
たしかにそうか。あれ、でも町のスーパーには売ってなかったけな。横で友華がキョロキョロしながら歩いている。
「友華、」
「!……なに?」
「今からゲームセンターはやめとけよ」
「行かないよ!」
「せっかく来たからちょっとしたいって思ってるだろ」
「思ってないからそんなこと」
「おまえら何話してんだ」
でも実際ちょっと行きたそう。でもやめとけ、お前が行くとどうせ持てなくなるくらい取ってくるんだから。
買い物を済ませ、ショッピングモールを出る。時計を見ると3時を過ぎたあたりだった。
――ショッピングモールから歩いて10分ほど、
ようやく祭りが見えてきた。
「おー、相変わらずこの時間から賑わってるな」
「あれ、これ去年よりも人増えてない?」
「たしかどっかのテレビで取り上げられてたらしいよ」
「僕はこのくらい賑わってる方が好きだけどな」
昼間からほんとにたくさんの人がいた。西から海へ流れる大きな川を真ん中に、北と南の両方に上流の方から屋台がナランデイル。全部回るとなるとかなり時間がかかりそうだ。
「よーし、じゃあグッパしますか」
「あれ、全員で回らないのか」
「こんなに混んでるとはぐれちゃいそうだしね。それに行きたい屋台とかあったら9人だとなかなか回れないからねー」
「それもそっか」
じゃんけんで二手に別れることになった。そして、これが考えうる中で最悪の別れ方をしてしまった。
「…えーと、私は妹とペアだから、のどかとやすねえと自由の5人だね」
「え、男1人?」
「まあ大丈夫でしょ、私の家にエロ本読みに来るぐらいなんだし」
「お前何やってんだ?」
「のどかの言い方が悪い」
まあ男1人でも別に何も問題はないだろう。ただ心配なのはもう1つのグループだ。
「ごはらと、正浩と、雄一と、……友華か」
「えっ、えっ、女子…1人?」
「そんな嫌そうな顔するなよ、泣くぞ俺たち」
嫌そうというより戸惑ってるな。なにか励ましておくか。この状況を喜んで貰えるような一言…
「友華、」
「?」
「よかったな、逆ハーレムだ」
「…うっさい」
「あーあ怒らせた」
「フォローするつもりならだいぶ下手くそだね」
やっぱダメだった。友華とグループを変わろうかとも思ったが、のどかが「なんとかなるでしょ」と言ったのでこのまま回ることになってしまった。
俺らのグループは北側、ごはらたちのグループは南側の屋から回ることになった。




