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もりみさき  作者: みじ
13/25

13話︰プール

家が牧場である加奈実は朝の掃除や餌やりがルーティンだ。やることも終わって家に入ると妹のすみれがランドセルを背負っていた。


「あれすみれ、夏休みなのになんで学校行くの」

「今日は自由水泳があるんですよ」

「あーあれねー。学校のプール開放していつでも行けるやつね」

「そうそう。お姉ちゃんも行く?小中学合併症の学校と言っても生徒数少ないし学生なら誰でも入れるらしいよ」

「絶対行かない」

「あそっか、お姉ちゃん泳げないもんね」


そう。私は全く泳げない。走ることなら結構得意なのに水に入ると犬以下だ。中学の時は先生の目を盗んで水の中で走ったり記録で嘘をついたりしてた。

二度と入らないぞ、プールなんて。






「学校のプール、行こ」


妹が出てしばらくしてからインターホンが鳴った。開けてみるとそこにはのどか、雄一、ごはらがいた。しかも水着を持って。泳ぐ気満々じゃねえか。


「いやだから私は泳げないって知ってるでしょー」

「去年溺れたの小学生に見られたんだしもう失うもん無いだろ」

「トラウマなってんだよそれ」

「まあ行くだけ行ってみようぜ」

「代わりに友華でも誘いなよー」

「誘ったけど居留守されちゃった」


行きたくないなあ。そうだ、水着を持っていかなければいい。袋だけ持って入れるのを忘れたことにしよう。これでいける!泳がなくて済む!




学校のプールに着くと、思ったりよりも人がいた。脇から見てる親もいれば泳いでる子もいる。ほとんど小学生だけど。



「あれ、お姉ちゃん結局来たんだ」


すみれが私たちの方にきた。


「僕たちが無理やり連れてきた」

「ありがとうございます雄一さんたち。お姉ちゃん行く友達いないのかもって心配してました」

「よかったな、優しい妹で」

「うるせえ」


よし、今ここで言おう。


「あっ、水着持ってくるの忘れたー。しかたないから今日は私見学しとくよ」

「大丈夫だよ、お姉ちゃん」


すみれが自信満々に腕を組んだ。


「お姉ちゃん来るかもーって思って」

「思って?」

「お姉ちゃん用の水着も持ってきてるよ!」

「すみれぇ!」


すみれはそう言って取ってきたバッグから水着を出した。終わった。言い訳がなくなった。この妹、だんだん可愛くなくなってきてる。


「よかったな、念入りな妹で」

「………うるせえ」


逃れるすべも見つからず、水着を着てプールに入ることになった。


「ほら加奈実、小中学校のプール出し浅いから大丈夫でしょ」

「前みたいに中で転けたらどうすんのおー」

「知るかそんなもん」


実際小中学生用のプールなのでそんなに深くまでない。高校のプールよりも断然泳ぎやすいし怖くもない。それに今は自由に動き回れる時間なのでいつでも出れる。


でも、逆に小学生がいっぱいいるから怖い。小学生の前で溺れそうになるのは高校生としてのプライドが保てない。去年だって子供を避けようとしたら足が滑って水の中に入りパニックになりかけた。



「で、そもそも何するの」

「んー?なんも考えてないよ」

「てか男どもは?」

「あっちで小学生のおもちゃになってる」


プールの隅の方で小学生らに水をかけられて遊ばれていた。雄一はモルックの布教を行っているが誰も興味を示していなさそう。


だったらと、のどかが提案してきた。


「この機会にでも加奈実泳げるようになろうよ」

「必死こけば10mくらいは行けるし」

「お姉さんが教えてあげよう」

「別に言うてのどかも泳げないでしょー」

「25はいけるし。10に言われたくないし」


2人でとりあえず練習することになった。



――――――――――――



自由はいつも通り暇つぶしに外を歩いていた。すると食堂の前にちょうど正浩がいた。


「あ、正浩ー。その荷物何だ?」

「自由か。さっきごはらから学校のプールに行くと聞いてな。今から行くところだ」

「あれか?プール解放日とか言うやつ」

「多分それだ。自由も行くか?」

「水着まず家にあるかな。そもそも俺は行っていいのか?」

「いいだろ、別に確認もないし。水着なら家にあるの貸すぞ。なんなら何着もあるしやるよ」

「まじか、助かる」


学校にあるプールに行くことになった。他のやつらも来ているらしい。


「よかった、釣竿はもってないんだな」

「さすがにプールにまでは持っていかんぞ」

「持ってくるかもって、ちょっと怖かった」

「俺をなんだと思ってるんだ」


学校に着く。最初に来た時少し見えたところだ。正浩いわくこの村は人も少ないから小中学校の合併校らしい。校舎の裏に回るとプールが見えてきた。笑い声が遠くまで聞こえてくる。


「結構人いそうだな」

「いつもよりなんだか賑わってそうだ」



中に入るとごはらと目が合った。ごはらもずっとニヤニヤしている。


「あ、正浩きたか!それに自由も」

「なんでそんなにみんな笑ってるんだ」

「ちょうどさっきまで面白いのやってたんだけどな」

「やってないからー!」

「何があったんだよ」


小学生たちも騒いでいた。


「森のお姉ちゃん、プールで溺れたー!!」

「また中で滑ったんだってさー」

「えぇ…」

「やめてその目で見るの!」


2年連続浅いプールで溺れかけたことでみんな笑っている。


「お姉ちゃん、」

「…………なに」

「『ギャップ萌え!』ってやつだね!」

「ああああああああ!!」


加奈実のプライドがズタズタにされた日になった。



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