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もりみさき  作者: みじ
12/25

12話︰男2人

「ちょっと市場で魚買ってきてちょうだい」


家で食堂をやっている正浩は朝6時に親に起こされていた。


「なんで俺なんだ」

「お母さん、ちょっと腰痛めちゃってさ。代わりに行ってきて」


親がいつも店を経営しているし、食材の調達も親がしている。けどたまにこうやって代わりに市場に行って魚を買ってこいと頼まれることもある。


「ま、早朝の散歩も気持ちいいからいいか」


一昨日から雨が続いていたから昨日も釣りに行けなかった。今日の朝にでも行こうと思っていたが市場に行ったらやる気が失せそうだ。



市場に着くと早朝というのに賑わっていた。男たちの活気ある声が響く。どの店も大量の魚を並べている。正浩は市場に来ると少し嫉妬する。俺が釣りをするとこんな多種な魚釣れないのにと。



「ほいよ。お母さん、いたわってやれよ」


母がいつも買っている店で魚を買う。目的は果たしたし帰ろう。出口に向かうと、知ってる人影が見えた。


「あ、正浩じゃん、何してんの」

「ごはらこそ何してんだ」


ごはらにあった。



「いやさ、昨日自由からここのサーモン丼美味いよなって話されてさー、でも市場なんかめったに用事ないし来ないから食ったことなくて。だからその時思ったんだ、生まれた時からこの町にいる人としてこういうことも知っとくべきだって」

「最近来たやつの方が詳しくなるのが嫌なんだな」

「いやいや、地元を愛する者として美味しいものは食っとくべきだと思うんだ。てことで、」

「?」

「一緒に食いに行くぞ!」

「なんで俺もなんだ」

「暇だろ、どうせ」

「…まあいいけども」


魚はクーラーボックスに入れているからそんなすぐは腐らないだろう。


自由が美味しいと言ったらしいサーモン丼の店に来た。


「ここかー。ここに店があるのは知ってたけど入ったことねえな」

「俺も横を通ったぐらいだ」


この店は朝からやっているらしい。朝取れたばかりの魚を使っていて新鮮なんだとか。


「おっちゃん、サーモン丼ふたつー」

「はいよ」


しばらくしてサーモン丼が届く。食べてみると期待していたよりも美味しい。サーモンばっかりじゃ正直飽きるだろうと思っていたが、全然そんな心配はいらなかった。



目的も果たし、ごはらと市場を出る。


「あそこの店よかったなあ。一緒に常連にでもなるか」

「俺はいい。というよりサーモン丼食べるためだけによくこんな朝早くに来れたな」

「やりたいことがそもそも少ねえんだし、ちょっとでもしたかったら無理やりにでもするべきだろ」

「まあそうかもな」




ごはらとは小さい頃からの親友だ。この村で唯一の同学年の男子だった。小さい頃もこの調子で、昔は陽キャだったからと慣れなかったが、次第に話すようになったし、二人で遊んだり何かすることも増えていった。他の人達とも仲良くなれたきっかけはごはらが作ってくれた。



「嬉しいよなー、同学年男子が増えたの」

「自由のことか。まあでも、学校はどうするんだろうな」

「楽しんでるように見えるし、まあ一旦何も言わなくてもいいだろ。俺らが口出しても余計だろうし」

「そうだな」

「遠慮する事なく下ネタで遊べるやつが増えただけで俺は嬉しいぞ」

「これ以上いらんだろ」


特に中身のある会話はしないが、これが楽しい。どうでもいいような日々を過ごして釣りが出来れば俺の人生なんてそれでいい。あとは…釣り仲間が増えたら良いが。




「そういやあの家もう何年も使ってないな」


ごはらが浜辺にある家を指さして言った。


「ん?ああ、あのボロ屋のことか」

「ボロ屋って言うなよ!青春だったろ!」

「だんだん使わなくなって荒れてきてるな」

「掃除でもして、もっかい使ってみるか」

「めんどくさい」

「えー」

「けど、楽しそうでもある」

「おーし、んじゃまた暇な日にでも掃除やるか」

「毎日暇だろ」



そんなことを話していると家に着いた。時刻はまだ7時半。いろいろした気がするのにまだこんな時間だと、一日が長いようで嬉しい。


魚を母に渡して部屋に戻る。しばらくのんびりしよう。


「あれ、こんな本前来た時あったけ」

「なんで勝手に上がってるんだ」

「お母さんに遊んでいきって言われたしさ」

「まあいいが、なんも無いだろ」





「…することないな」

「だから言ったろ」

「とか言って帰っても暇なんだよ!」

「宿題は?」

「やるわけないだろ」

「そりゃそうか」


こいつがやる訳が無い。たしか去年の夏の課題を12月に出しているのを見た記憶がある。するとごはらが何かを閃いたかのように言い出した。


「なあなあ、お前好きな人とかいるか?」

「急になんだ」

「暇だし恋バナでもしようと思ってさ。たしか正浩の横の人可愛くなかったか?俺ちょっと狙ってみようかと思ってるんだが」

「あいつ彼氏いるぞ」

「えっ」

「知らなかったのか」

「いつからだ」

「半年前」

「嘘だろ!」


ごはらはショックで机の下に潜り込んでしまった。

机の下から顔を出して見てくる。


「なあ…お前はいないのか。好きなの」

「駆け引きが面白いのは…スズキかな」

「鈴木?そんなのいたっけ」

「ものすごく引かれるんだ」

「そんな惹かれるのか?やべえ見た事ねえ」

「前釣っただろ」

「あ……魚のほうね…」



ごはらがまた机の下に潜り込んでいく。そんなに彼氏がいたことがショックだったのか。すまない。



「そうだ、この漫画、この前一気買いしたんだが、読むか?」

「……読む」



今日もまた、無駄で楽しい時間が過ぎていった。

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