第97話 オオムラサキの羽の方ちゃんの思惑《おもわく》
「第2ラウンドをはじめます! オオムラサキの羽の方ちゃんさん! 次の色を指定してください!」
「ディディウスモルフォの羽の方ちゃんとあたしの羽に、共通する色って何かわかるかしら? つまり……。青色を指定するわ!」
オオムラサキの羽の方ちゃんが宣言した瞬間、青い色の服を着ていたフェアリーたちの服の色がそれ以外のさまざまな色に変化した。
だが例によって、羽の色は変えられない。
色が指定された瞬間のディディウスモルフォの羽の方ちゃんだが、オオムラサキの羽の方ちゃんの思惑を外れてヤエヤマムラサキの羽の方ちゃんと追いかけっこをはじめる。
そしてオオムラサキの羽の方ちゃんは、まわりにディディウスモルフォの羽の方ちゃんは疎か誰も近よってこなかった事にしばらく不意を突かれた顔をしたのち僕の方を一瞬チラッと確認し、不機嫌そうにそのままの位置から羽ばたいて見わたせる上空にあがって観察する。
ディディウスモルフォの羽の方ちゃんとヤエヤマムラサキの羽の方ちゃんが、斜に構えた姿勢の見つめあった状態でおたがいに一定の距離を維持したまま高速でジグザグ飛行をして飛んで行くが、僕の視界から離れ過ぎないように高速ジグザグ飛行で僕の視線の向く前方あたりでのフェイント合戦にもどってくる。
他の大部分のフェアリーたちより飛行能力の高いディディウスモルフォの羽の方ちゃんとヤエヤマムラサキの羽の方ちゃんはどちらとも他のフェアリーたちに背中を取られないように、常に位置を変えながらの高速飛行をしている。
その予測不能変幻自在の高速飛行に、モンシロチョウの羽の方ちゃんとナミアゲハの羽の方ちゃんが予測なのか偶然なのか先回りに成功し、斜に構えた姿勢の見つめあった状態でおたがいに一定の距離を維持したまま高速ジグザグ飛行をして飛んで行くのがモンシロチョウの羽の方ちゃんとナミアゲハの羽の方ちゃんをくわえた4匹に増える。
予測不能変幻自在の高速飛行が4匹に増えたと言っても、それにも特徴がある。
新しく加わったモンシロチョウの羽の方ちゃんとナミアゲハの羽の方ちゃんのうち、ナミアゲハの羽の方ちゃんにはわずかながら羽に青色があるため守る必要がありモンシロチョウの羽の方ちゃんには羽をまもる必要がない。
そしてナミアゲハの羽の方ちゃんは、ヤエヤマムラサキの羽の方ちゃんを追いかけ。
モンシロチョウの羽の方ちゃんは羽をまもる必要がないので、ディディウスモルフォの羽の方ちゃんを大胆かつ積極的に距離をつめるため、モンシロチョウの羽の方ちゃんの動きが全体の動きの流れを左右する。
そんな状態にあるにもかかわらず、ディディウスモルフォの羽の方ちゃんとヤエヤマムラサキの羽の方ちゃんはお互いを標的に一定の距離を大きく変えないままフェイント合戦を続ける。
その4匹の高速ジグザグ飛行が僕の視界の真っ正面にもどって来た所で滑空してきたオオムラサキの羽の方ちゃんが、多数のフェアリーたちを羽ばたきで弾き飛ばしながらディディウスモルフォの羽の方ちゃんを捕まえた。
「アイキャッチポイント! オオムラサキの羽の方ちゃんさん20ポイント! 合計10ポイント!」
そして審判の富田林・イブさんから続けて、「カンカンカンカン」とゴングがなる。
すると僕と京太郎くんと山田富士さんと一番槍の丈治がかこんですわっているリビングルームのソファーの前にあるフェアリーたちのオイルパステルによるラクガキだらけのしゃれたアンティークテーブルに、新しく追加されたフェアリーサイズの土俵のラクガキの仕切り線の前におりたち、オオムラサキの羽の方ちゃんとディディウスモルフォの羽の方ちゃんがしこを踏み。
今回も関係ない他のフェアリーたちの何匹かも、土俵のまわりでしこを踏む。
そして、ディディウスモルフォの羽の方ちゃんがさきにしこを踏み終える。
オオムラサキと言うチョウは、「日本の皇帝」と言うぐらい強いチョウで他の昆虫を羽ばたきではじき飛ばして樹液を吸うそうです。
名前を付けるだけでキャラ付けまでしてくれるなんて、大変助かっています。