第93話 応援的《おうえんてき》な意味です!
「藤咲さま♡ それで藤咲さまの気持ちはともかく、それ以外に藤咲さまの事を好きになっていた女性に心当たりはありませんか?」
「37才ぐらいに『確実に小説新人賞の大賞を取れるライトノベルのプロット』が出来なくて下の階の人がうるさいような妄想にとりつかれて下の階のガラスを割って警察に行って父親が下の階の人と示談にして、僕は2回目の精神病院入院をしてたんだけど。その時に初対面で、『美形だね! 結婚しよう!』って言ってくる女性がいたけど。ほぼ何も話をすることもなく、なかよくなることもなかったことがあったけど……」
「藤咲さま♡ それ以外で!」
「父親の再婚とふいうちの引っ越し前の小学5年生だったと思うんだけど、学級委員長を決める投票でなぜか3位の票がどこからともなく集まって……」
「藤咲さま♡ それ以外で!」
「中学校時代僕は背たけが1番小さくてひげもはえずニキビも全くなかったんだけど、走っていると『かわいい~! 斗真く~ん! こっちむいて~~!』とか『斗真く~ん! 手ふって~!』とか言われるたびに軽い気持ちで笑顔をむけて手をふってたらものすごいことになって。でも中学校時代になかよくなった女の子はいなかったんだけど、中学校卒業まぎわになってまわりが『本気のやついたんだぞ?』って言ってたけど。特別なかよくなった女の子はいなかったから、僕にとっては判別不能だった」
「藤咲さま♡ それ以外で!」
「もうないよ?」
「藤咲さま♡ 連絡を取ってくる女性は、いませんでしたか?」
「ああ、あった。おぼえのない女性の名前で父親が僕に『お金がないから大学に行きたかったら1年まて』と言って建てたばかりの新築一戸建てに連絡して来た人がいたけど、よくよく思い出してみたら『小学5年生の時に男女2対2のダブルデートをしたうちの1人で、毎日ちがう手のこんだ髪形をして来てた方がそんな名前だったような気がする』と言う事があった!」
「それ! わたくしです! 藤咲さま♡」
「ええ? 富田林・イブさんの、基本人格と記憶の提供者なの?」
「いいえ、ちがいます! 藤咲さま♡ 本人です♡」
「ええ? 脳ミソ移植してるの?」
「いいえ、ちがいます! 藤咲さま♡ EVL-021としてありとあらゆる藤咲さまの情報をインストールしていた所、前世の記憶を思い出した転生者です!」
「ええ? 死んでるの?」
「はい♡ 16才から、メイド喫茶でアルバイトを始め。17才で、日本メイドコンテストで優勝。18才で、猫屋敷家でメイド長になり御曹司にプロポーズされ。そこで藤咲さまの連絡先を聞こうとして、まるっきり忘れられているのを知り。猫屋敷家の御曹司と結婚して、7人の子供それぞれもたくさんの孫を生み。曾孫が生まれ。玄孫が生まれ。さらにその子供が生まれ。98才に、笑顔で大往生をとげました♡」
「1番好きな人は、猫屋敷家の御曹司さん?」
「はい♡ 1人目の子供の相手をしているのを見て、1番好きになりました♡ ですので、藤咲さま♡ 安心してください! わたくしの藤咲さまへの好意は、応援的な意味です!」
イブさんのイラストの表情で、物語の補足説明になれば良いのですが。