第70話 ニコニコ老人《ろうじん》ホーム司令部《しれいぶ》決戦《けっせん》
「猫屋敷・キナコちゃん、到着~~~~!」
ニコニコ老人ホーム司令部とその玄関前に土俵と座布団のしかれた観客席が近づいてきた所で、一番槍の丈治がふいにふりむいたのに合わせて、後ろから猛スピードで走ってきた猫屋敷・キナコちゃんと7匹のケットシーたちをでむかえる。
ちなみに周囲を見渡すと、視界の届く範囲どこまでも遠くまで桜の花びらが降っていて。
桜の花びらが2倍の密度で降っているのが半径5メートルの範囲、と言うのはもとにもどる気配がない。
「わざわざ走ってきたんですか?」
「お菓子をお腹の中にしまうのに時間がかかりまして! いそいで歯磨きをしてまいりました!」
「お前たち! 山田富士以外は、土俵を最前列で見られる砂かぶり席に座れ!」
「いえ! 僕たち、急いでるんで!」
「俺の顔を見ても、そんな事を言えるかな?」
「いえ! 急いでるんで!」
「まあまて! 俺が、ニコニコ老人ホーム司令部の番人だ! 俺に山田富士が真裏暗黒新式概念能力大相撲初代大会《しんうらあんこくしんしきがいねんのうりょくおおずもうしょだいたいかい》のルールで勝てば、ニコニコ老人ホーム司令部のカギを開けて中を案内してやろう!」
屋根はあるが壁の無い土俵と観客席のある建物の中心にむかっていくと、土俵の上に筋肉質で2メートルはありそうな巨体の相撲取りの格好をした男が立っていた。
「だれ?」
「斗真くん! 現役大横綱の、千代の宇宙でごわす! 20才で横綱になってから35才の今まで全勝の大横綱でごわす! 現役の他の横綱と大関は千代の宇宙の1強で大相撲が盛り上がらなくならないように、しかたなく横綱や大関にされただけでごわす! 真の現役横綱は、千代の宇宙ただ1人でごわす!」
「いや! 全勝ではなくなった……」
「そんな! 横綱か大関のだれかに負けたでごわすか?!」
「いや、この覆面を付ければわかるか?」
そう言って千代の宇宙は、地球儀を模した覆面を付けて山田富士に視線を送る。
「その覆面は! 八千代の大地の覆面! やはりあなたが! どすこい!」
「八千代の大地って、だれ?」
「斗真くん! 真裏暗黒新式概念能力大相撲初代大会《しんうらあんこくしんしきがいねんのうりょくおおずもうしょだいたいかい》で、予選で飛び入り参加したまま決勝戦まで勝ち上がった覆面力士でごわす!」
「山田富士! 俺は、お前の火星行きを止めに来た!」
「なぜでごわすか?!」
「第二回真裏暗黒新式概念能力大相撲大会《だいにかいしんうらあんこくしんしきがいねんのうりょくおおずもうたいかい》の決勝戦で全力を出したおまえを、全力を出した俺が倒すためだ!!!」
「そんなの勝手に優勝して、縦綱になれば良いでごわす! おいどん火星で、ちゃんこ料理をふるさとの味にするでごわす! ごっつあんです!!」
「俺に負けたら日本に残って、真裏暗黒新式概念能力大相撲大会《しんうらあんこくしんしきがいねんのうりょくおおずもうたいかい》に必ず出て俺と全力の勝負を続けると約束しろ! ニコニコ老人ホーム司令部の番人として、それがお前に与える試練だ!」