第39話 覚醒《かくせい》したニャンをもてなす心の、|確か《たしか》な実力
「おいどん、順番に行ってくるでごわすにゃ!」
と言って山田富士は2本しっぽのサビ柄メスケットシーの前2メートルの位置で相撲を取る直前の中腰姿勢になって、ニャンの興味を引くよう意識した緩急をつけた猫じゃらしの動きでニャンを誘う。
「おみゃあは最初スキルを使ってたにょが、逆にハンデになってたにゃ! さあ! 覚醒したおみゃあの、ニャンをもてなす心見せてみるにゃ!」
2本しっぽのサビ柄メスケットシーが一瞬で距離をつめようと猫じゃらしにせまろうとするが、山田富士はすり足で横によけながら新体操のリボン演技のように低い空中をクルクルと猫じゃらしをまわす。
2本しっぽのサビ柄メスケットシーはその移動を続けるクルクル猫じゃらしの軌道を予測して飛びつくが、山田富士はすり足の向きとクルクル回転の向きを変幻自在に変えて対処する。
その一連の流れで2本しっぽのサビ柄メスケットシーは山田富士のおでこを足場にしたり左肩を足場にしたりして空中ジャンプの回数を節約したのだが、あっという間に空中ジャンプの回数を使い切る。
すると山田富士も心得たもので、緩急をつけた動きの猫じゃらしを地面すれすれでピコピコ動かす。
その猫じゃらしに2本しっぽのサビ柄メスケットシーは、いわゆる猫のやんのかステップで間合いをはかりチャタリングの素早い。
「カカカカ」
と言う鳴き声をはさんで、猫じゃらしにじゃれついていく。
その猫じゃらしを捕まえたいのかいじりたいのか分からない2本しっぽのサビ柄メスケットシーの閃光のような右手猫パンチに対応するように、山田富士は2本しっぽのサビ柄メスケットシーの右手手前と左手手前を緩急をつけた猫じゃらしの動きで行ったり来たりさせることで、2本しっぽのサビ柄メスケットシーに右手だけではなく左手も出させることに成功している。
そして2本しっぽのサビ柄メスケットシーの2回ある空中ジャンプの1回分が回復した所で、山田富士が自分の左指左手の甲左腕左肩と猫じゃらしを誘導し、2本しっぽのサビ柄メスケットシーを左肩からダイナミックジャンプをさせ猫じゃらしを低空飛行Uターンでもどってくる。
その山田富士の行動に2本しっぽのサビ柄メスケットシーは、せっかく回復した1回分の空中ジャンプを使い地上に降り、誘導ミサイルのような勢いで地上の猫じゃらしを追尾する。
それに対して山田富士はすり足の向きを変幻自在に変えて対処するが、スピードの乗った2本しっぽのサビ柄メスケットシーは地上をピコピコ動く猫じゃらしを難なくハシッ!っと止める。
「おみゃあのニャンをもてなす心、見せてもらったにゃ! 大満足にゃ! 次のにゃつも、なかなか甲乙つけがたいニャンをもてなす心の持ち主で楽しみにゃ!」
「初めての、『大満足にゃ!』いただいたでごわすにゃ!」
「おめでとうございますにゃ!」
「俺だけ、置いてきぼりにゃ……」
「フフッ、勝野さん? あなたの隣に仲間がいますにゃ! 勝野さんの半歩先にいるだけのニャンをもてなす心の持ち主、日名川・京太郎をお忘れなくにゃ!」
「俺も、次でニャンをもてなす心の習得まで行けると良いのですがにゃ……」