第37話 妖力《ようりょく》の|息継ぎ《いきつぎ》
「そもそも、相手の土俵に踏み込み過ぎでごわすよ? おいどんに秘策ありでごわす!」
と言って山田富士は2本しっぽのサビ柄メスケットシーの前2メートルの位置で相撲を取る直前の中腰姿勢になって、右手に持った猫じゃらしを残像の見える速度で振り始めた。
「姑息だ! その上スキルが高くて参考にならない!」
勝野・丈治が、思わずと言った風に突っ込みを入れる。
2本しっぽのサビ柄メスケットシーはやれやれと言った風情で一瞬で距離をつめて猫じゃらしにせまるが、山田富士はすり足で横によける。
2本しっぽのサビ柄メスケットシーはその山田富士の動きにも反応して、山田富士が移動の時に止めた右手に持った猫じゃらしの先をハシッ!っと止める。
「みゃあ、悪くはにゃいのにゃが。ニャンをもてなす心を忘れているにゃ! 不合格! 出直して来るにゃ!」
「精いっぱいやってみたでごわすが……」
「いいにゃ! 参考になったにゃ!」
と言って僕は2本しっぽのサビ柄メスケットシーの前3メートルの位置で、ニャンの興味を引くよう意識した緩急をつけた猫じゃらしの動きでニャンを誘う。
「ニャンをもてなす心が解ってきたようだにゃ! おみゃあがうすにょろでないことを、いのってやるにゃ!」
と言って一瞬で僕の持った猫じゃらしに肉薄するが、僕は腰の回転とともに腕を持ち上げて安全地帯?に猫じゃらしを避難させる。
その安全地帯の猫じゃらしに2本しっぽのサビ柄メスケットシーは、ジャンプだけで再度肉薄する。
その動きに僕は猫じゃらしを数度波打たせて逃げると、2本しっぽのサビ柄メスケットシーは空中を2回蹴り追いかけた後地上に戻り背を伸ばして腕を高くして猫じゃらしを高く持った僕にたいして。
「ニャンがしっぽの数だけ空中を蹴ったらその後、しっぽの数×10秒間は高い位置に猫じゃらしを持っていくのは止めるにゃ! 妖力の息継ぎの関係で、ニャンが楽しめにゃいにゃ! まあ1回分の回復する、10秒でもいいのにゃが……」
その言葉に反応して僕は、2本しっぽのサビ柄メスケットシーに背中を向けてしゃがみ込み反対側に猫じゃらしを左右にぴょこぴょこふる。
すると2本しっぽのサビ柄メスケットシーは僕の肩に飛びつき踏み台にして、ちょうど中間地点にあった猫じゃらしをハシッ!っと止める。
「みゃあ、悪くはにゃいのにゃが。残念だったにゃ! 不合格! 出直して来るにゃ!」
「ダメだったにゃ……」
「藤咲さんも言葉がうつっていますね! フフッ」
「にゃあ、ミラーニューロンを働かせようと思ってるにゃ!」
「ああ! 模倣学習をしたり、共感して仲良くなったりとかですか? 盲点でした! 僕もやってみるにゃ!」
「俺! 俺も! ミラーニューロンを考えてにゃ!」
「フフッ。はいはい! 解っていますから! 2周目の順番が来ていますから、早く行ってくださいにゃ!」