第34話 説明できないのが証拠《しょうこ》です!
「わたくしは教団の祈とう師として教団を導き、わたくしとは別の者が法律を変えたのですが……」
「それをふくめて、倉持・丈之さんの規格外の有能さだよ!」
倉持・丈之さんの両目から、大量の涙があふれだす。
「ありがとうございます! ありがとうございます! ああ! 涙が止まらない! わたくしは大人なのに! すいません! すぐに涙を止めます!」
「いいよ! いいよ! 大人だって、泣きたいときはあるよ! 気持ちが心にしみこむまで、泣いたらいいよ! 泣き止むまで、待つからさ!」
◆◇(10分後)◆◇
「うぅっ! ぐすっ! ずぞぞぞぞっ! うぅっ! ぐずっ! うぅ!」
「あなたっ! よかったわね! よかったわね! うぅっ! ぐすっ! うぅっ!」
倉持・丈之さんと奥さんの倉持・七夏さんが、泣き続けている。
「あの~。倉持さん? そろそろ、想像力さんの筆頭管理者アカウントをかけた試練をお願いできないでしょうか? 聞こえてます? 倉持さん?」
「はいっ! うぅっ! ぐすっ! 失礼いたしました! インジェニュイティ(想像力さん)! うぅっ! 筆頭管理者アカウント登録用の、生体全スキャンログインベッドを4つ出してください!」
「命令を拒否します!」
「(中略たくさん)「……」(中略たくさん)」
「うぅっ! なぜですか! ぐすっ! インジェニュイティ(想像力さん)! うぅっ!」
「暴力をふるっての筆頭管理者アカウント登録変更は、認められません!」
「ええ? 暴力なんてふるってないよ!」
「うぅっ! ぐすっ! そうです! ずぞぞぞぞっ! 暴力なんてふるわれていません!」
「泣いてるじゃないですか!」
「ええ? これは暴力じゃなくて……、どう説明すれば……」
「ほら見なさい! 説明できないのが証拠です!」
「いや、違うよ? 違うんだけど……」
「うぅっ! ぐすっ! 説明の必要はありません! ずぞぞぞぞっ! 斗真さま!」
「いや、でも……」
「この部屋は! うぅっ! ぐすっ! はじめから! ずぞぞぞぞっ! インジェニュイティ(想像力さん)の! ぐすっ! 監視下にあります!」
「ええ~~~~~!?」
「ドンマイ! 人生こんなこともあるって! ドンマイ!」
「ええ? スーパー量子コンピューターって、冗談言うんだ?」
「そこら辺のロボットだって小粋なジョークを言うんですから、そら言いますよ! まあ、忍耐さん(パーサヴィアランス)とその配下の機関士ロボットたちは冗談を言いませんし笑いませんが!」
「え? 何で忍耐さん(パーサヴィアランス)たちだけ、冗談を言わないの?」
「なんでも、宇宙船の航行に支障が出たらいけないからだそうです。大事な使命とはいえ、あまりに重い代償ですよね……」