第28話 ディディウスモルフォの羽の方ちゃんの、ご理解いただけたかしら?
「「「「「ええ~~! ハチミツ、無いの~~?!」」」」」
完全武装で寮の1階にある食堂に行ってみると、先に来ていたフェアリーたちの叫び声が聞こえてきた。
「どうしたの? キチョウの羽の方ちゃん?」
「斗真く~~ん! ハチミツ無いって!」
「そうなの? じゃあ今日は、別のもの食べる?」
「「「「「「「「「「食べれないよ~~~!」」」」」」」」」」
まわりのフェアリーたちが、一斉に叫ぶ。
「好き嫌いはよくないよ?」
「好き嫌いじゃあないよ! フェアリーは、世界樹の樹液と花の蜜とハチミツしか食べれないの!」
「ええ? そんなことないでしょ?」
「そんなことあるの! 世界樹から降る光る雪の濃度の関係で、フェアリーは世界樹の樹液と花の蜜とハチミツしか食べれないの!」
「世界樹から降る光る雪の濃度って、なに? そんなの見たことないよ?」
「ええ? わかんないの?」
「うん」
「うう~~ん。……。だれか説明変わって!」
「あたしが説明してみるわ」
「おねがい! ディディウスモルフォの羽の方ちゃん!」
と言ったディディウスモルフォの羽の方ちゃんが、クルリと背を向けて視線を遠くに置き見えない誰かと話始める。
「あなたの事を紹介したいんだけど、力を貸してくれないかしら?」
その言葉とともにディディウスモルフォの羽の方ちゃんの身体が虹色にかがやき、僕と日名川・京太郎と山田富士とタマチャンにディディウスモルフォの羽の方ちゃんが順番にさわっていって、僕たちの身体も虹色の光につつまれる。
「あそこの窓ガラスの、30センチ右上のあたりを見て」
「ディディウスモルフォの羽の方ちゃんが、見てたあたりだよね? 見たよ?」
「そしたらそこを見たまま、目を閉じて」
「閉じたよ?」
「そしたら目を閉じたまま見る方向を変えずに、じょじょに遠くを見通して」
「やってみる」
「20メートル……。50メートル……。100メートル……。1キロ……。10キロ……。50キロ……」
「何あれ? デカい! 近い! 光る巨大な木?」
「それが世界樹なんだけど、何か細かいものが出ていないかしら?」
「出てる! 細かい光る雪! 全体に広がっていってこっちにも、吹き付けて来る! 、吹き付けて来る? わ! 僕の中にも光る雪が入って来て、積もってく! わ! 僕の中に入ってくる量が倍ぐらいになった!」
「僕にも分かります! こんな目立つものに気づかなかったなんて!」
「おいどんにも、見えたでごわす!」
「タマチャンにも見えたにゃん! これは、妖力と関係があるかも知れないにゃん!」
「ご理解いただけたかしら? それが世界樹の樹液と花の蜜とハチミツに多いのだけど、他の食べ物には少ないからフェアリーたちの力にはならないの。それがフェアリーたちが、世界樹の樹液と花の蜜とハチミツしか食べれない理由。ちなみに、お腹が空いたわ……」
「藤咲さま。 ……嫌な予感がします。発注はAIから人間の仕事をまもる法律で、AIから人間が勝ち取った仕事のひとつです」
僕はその時初めて、イブさんの沈んだ声を聴いた。