第22話 |悲しき《かなしき》力《ちから》の代償《だいしょう》
「ほら!じゃないですよ!」
「ええ~~? じゃあ、話聞いてみるよ? 山田富士さんって、昔はどんな感じだったんですか?」
「おいどん6才で、身長170センチあったでごわす」
「ええ? 今、何センチですか?」
「169センチでごわす」
「身長ちぢんじゃったんですか?」
「1年前から、ときどきちぢむでごわす」
「インターネット無線接続装置の移植義務化……」
「そうでごわす」
「え? でもそれで、何で身長がちぢむの?」
「力の代償でごわす……」
「ええ? ちゃんこ鍋屋の3代目が、何の力の代償払ってるの?」
「おいどん、6才から12才まで全日本すもう選手権大会年齢の部で連続優勝したでごわす……」
「それはすごい!」
「すごくないでごわす、身長が高くて勝てただけでごわす。それが証拠に13才から15才まで、2位。16才から18才まで、3位だったでごわす」
「それって、大相撲入門に身長不問で入れる成績だったんじゃないの? 今、何センチから入門できるのか知らないけど」
「170センチでごわす! おいどんも170センチのはずの身長が169センチと測定されて『前日の真裏暗黒新式概念能力大相撲初代大会《しんうらあんこくしんしきがいねんのうりょくおおずもうしょだいたいかい》を覆面無しで出場して初代チャンピオン縦綱になった事のペナルティで、付け出し《だし》無効。日本大相撲協会の理事の投票全会一致で、今日から171センチに基準が上がりました』と言われた時に、大相撲入門の夢をあきらめたでごわす……」
「ええ? その真裏……」
「真裏暗黒新式概念能力大相撲初代大会《しんうらあんこくしんしきがいねんのうりょくおおずもうしょだいたいかい》でごわす」
「その大会って、どんな大会だったの?」
「基本は大相撲のルールなんでごわすが、相手に大けがをさせない範囲で概念能力の使用を推奨した大会でごわす。優勝賞金10億円で、飛び入り参加として大相撲の横綱2人や大関2人が覆面を付けて出ていたでごわす」
「ええ? その大会で優勝して縦綱ってのになると、大相撲の横綱よりも格上じゃない? なんで、大相撲の力士になろうとしたの?」
「子供の頃からの、夢だったでごわす……」
「そう…………。ほら!」
ぼくは山田富士の話に共感した寂しげな表情を引っ込めて、日名川・京太郎とナミアゲハの羽の方ちゃんを振り返ってドヤ顔をする。