第21話 おすもうさん! 山田富士《やまだふじ》
「斗真く~~ん! おすもうさん!!!」
ナミアゲハの羽の方ちゃんが創作活動室の扉を開けて入ってくるなり、僕の近くに飛んできて意味不明な事を言い出した。
「なに? おすもうさんだけじゃ、わからないんだけど?」
「食堂に、おすもうさんがいたの!」
ナミアゲハの羽の方ちゃんが両2の腕を胴体のあたりで横に広げるような、太った人のジェスチャー?のような事をして必死にうったえてくる。
「ええ? 本当におすもうさんだった?」
「太ってて、髪を結ってて、浴衣着ていたよ!」
「ええ? それってただたんに、太って髪を結ってて浴衣を着ている普通の人かもしれないじゃん!」
「え? そんなことある?」
「あるある! よくあるよ?」
「そうなんだ? 知らなかった……」
「ちょっとまった~~!」
桜の花びらをふらせながら日名川・京太郎が、話に割り込んでくる。
「なに?」
「なに?じゃないですよ! あきらかに相撲取りじゃないですか!」
「そうかな?」
「それ以外いません!」
「じゃあちょうど昼飯の時間だから、みんなで食堂に行ってみようか?」
「良いですよ? スーパー量子コンピューターからログアウトしてから行ってみましょう!」
◆◇◆◇
「ほら! あの人!」
ナミアゲハの羽の方ちゃんが、太って髪を結ってて浴衣を着ている幼さを残した顔の20才手前ぐらいの男のもとに飛んでいく。
「こんにちは! ナミアゲハの羽の方ちゃんがあなたのことをおすもうさんだって言ってるんですけど、おすもうさんなんですか?」
「違うでごわす」
「おすもうさんのコスプレですか?」
「ある意味では、そうでごわす」
「ある意味ではって、どういう意味ですか?」
「おいどん、ちゃんこ鍋屋の3代目の山田・富士でごわす。この格好は、ちゃんこ鍋屋の制服でごわす!」
「山田富士って、本名ですか?」
「そうでごわす! 一族総出で考えてくれた、お気に入りのキラキラネームでごわす! どすこい!」
「どこ出身ですか?」
「名古屋でごわす! ごっつぁんです!」
「いやいや! 僕も名古屋出身ですけど、そんな方言じゃないですよ?」
「ちゃんこ鍋屋の、接客話術でごわす!」
「ほら~~」
ぼくは、ナミアゲハの羽の方ちゃんと日名川・京太郎を振り返る。
「ほら~~じゃないですよ! こんな変な人、普通にいるわけないじゃないですか! あきらかに、藤咲・アルヴィン・斗真さんの世界改変です!」
「ええ~~? 斗真くん! こんなことで世界改変しちゃったの? この人可愛そうじゃん!」
「ええ~~。ひどい言いがかりだ……。えっと、別に僕の世界改変の結果そんな風になったわけではないですよね?」
「そうでごわす! おいどん、昔からこんな感じでごわす!」
「ほら!」