第14話 日名川《ひながわ》・京太郎《けいたろう》
「あ~~~。謎が解けた……」
創作活動室の扉を開けると創作活動室の真ん中で桜の花びらをどこからともなく生み出して舞い落ちさせている20才ぐらいに見える男を見た瞬間、概念重力訓練室からここまでの間にあつくしきつめられた桜の花びらの謎が解けて言葉が出た。
「やあ! あなたは、藤咲・アルヴィン・斗真さんだね! ここで待ってれば、会えると思っていたよ! 僕は日名川・京太郎! 概念重力の訓練を受けてから、桜の花びらを生み出し続けるようになった者さ!」
「これはご丁寧に、僕の自己紹介までしていただいてありがとうございます。所できれいな桜の花の下には死体が埋まっていると言いますが、桜の木の下に死体を埋めた経験とかがあったりしますか?」
「あっ、ありませんよ?」と、日名川・京太郎が明らかに動揺している。
「何でどもるんですか! あんた、人殺しなの?」
「世界樹騒動の時に人殺しはしましたけど、桜の木の下に埋めたのは人間じゃありませんよ? 事情があるんです!」
「そうですか人間ではなくペットを埋めたことがあるだけですか、でもそうすると何らかの思い出が特別な超能力には必要なのかな? ちょっと、桜の花びらに思い入れのある話を聞いても良いですか?」
「いいですよ? その黒猫と出会ったのは、森林公園内の穴場にあるまだつぼみの桜の木の下でその黒猫が猫サイズの穴を一心不乱に掘っている所に出くわしたのが最初なんです。穴場だけに穴を、フフッ」
と日名川・京太郎が、自分の言ったダジャレでこらえきれないように笑いをもらす。
「ダウト! いきなりウソじゃないですか! 話の中にダジャレを仕込んだつもりでしょうが、ぜんぜんうまくないですからね!」
「いやいや! ウソじゃないよ! 変わった黒猫だったんだってば!」
「分かりました! 100歩ゆずって、変わった黒猫がいたと言う事で手を打ちましょう。それで、話の続きはあるんですか?」
「ああ、その黒猫が僕に気づくと近寄ってきて身体を僕のスニーカーにこすりつけてきたからちょうど持っていた猫缶をやったんだ」
「ダウト! 猫缶をちょうど持っていることなんてありません!」
「いやいや! ウソじゃないよ! その時小学生1年生だったんだけど、おつかいで猫缶を買ってきたよりみちだったんだよ!」
「分かりました! 100歩ゆずって、たまたま猫缶を持っていたとしましょう。それで、話の続きは?」
「その黒猫は猫缶を食べるとお礼なのか、チンチンをしておじぎをしたんだ。ああ、チンチンというのは後ろ足で立ち上がる芸なんだけど……」
「ダウト! チンチンは犬の芸で、おじぎは奈良公園の鹿の芸です! 猫はやりません!」
「いやいや! ウソじゃないよ! 賢い黒猫だったんだ!」
「分かりました! 100歩ゆずって、賢い黒猫だったとしましょう。それで、話の続き!」
「それから毎日そこに通って、猫缶1つと引き換えにその黒猫は芸を1つずつおぼえていったんだ……。おすわり。お手。おかわり。ふせ。まて。とって来い。ターン。ジャンプ。ハイタッチ。ドリブル。足の間のジグザグ歩き。フリスビーキャッチ。ジャンプしての輪くぐり。ダンス……」
「ストップ! ストップ! ダウト! ダウトだよ! 猫は、そんな芸はしません!」
「いやいや! ウソじゃないよ! 理由があるんだよ! 話の続きをしゃべらせて!」