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第12話 はなさないで 夢オチ!



「さっきの食堂すごかったね~」と、ニコニコとゴキゲンなモンシロチョウの羽を持ったフェアリー。

「そうだね! 色んな花べつのハチミツが用意されてて!」と、キチョウの羽を持ったフェアリーが元気にハキハキと言う。

「フェアリーの小さい体じゃあ、なめきれない量のハチミツ!」と、ディディウスモルフォの羽を持ったフェアリーがウットリとしながら夢見心地で続く。


「はーい! フェアリーのみなさん!就寝しゅうしん時間です! しゃべってないで、眠ってください!」

斗真とうまくん! 明日が楽しみすぎて、眠れないかも!」と、ディディウスモルフォの羽を持ったフェアリーが興奮して鼻息荒く自己申告してくる。


「それでも、眠ってください! 朝食まで4時間しかありませんが、僕には訓練がありますので!」

 と言って部屋の照明しょうめいを消して、ベッドに入る。


「フフッ」と、モンシロチョウの羽を持ったフェアリーが楽しそうに笑い声をもらす。

「何笑ってるの! 斗真とうまくんに怒られるよ?」と言う、キチョウの羽を持ったフェアリーも楽しそうに怒る。

「だって~~」

「はなさないで!!!」

「は~い、フフッ」


 『はなさないで。 はなさないでか……』言葉の意味は違うが、あの子はどうしているだろう?


 僕には最初に精神病院に入院した時、急速に仲良くなった女の子がいた。


 僕が34才その子が19才、おそらくおたがいにひとめぼれだったからあれだけ急速に仲良くなったんだと思う。


 僕もその子もおたがいに美形で、なおかつ顔の系統が似ていたからさらに美形に見えたんだろう。


 それに僕は50才になっても、20代と間違われるぐらい心も体も若かった。


 僕はともかく、あの子が僕にひとめぼれをした理由についてはまだ心当たりがある。


「もしかして、エホバの証人しょうにん?」

 僕は一言二言しゃべっただけで、あの子の信じている宗教をあてた。


 それにも、もちろん理由がある。


 僕は子供のころガンで入退院を繰り返す母親に連れられてエホバの証人しょうにんの集会に通っていたのだが、母親が死ぬと共にエホバの証人しょうにんの教えをだいに個人主義に目覚め(めざめ)ていた。


 そしてエホバの証人しょうにん強調きょうちょうする教え『偶像崇拝ぐうぞうすうはいの禁止』これがあの子のしゃべった一言二言の中にすぐに出てきたので、僕はあの子に「もしかして、エホバの証人しょうにん?」と聞いたのだ。


 他にも僕はあの子に、チート能力複数持ちの超人だと思われていたのだと思う。


 小説を書くためのパソコンの練習のつもりで電子ピアノをヘッドホンを付けて(つけて)練習していたのだが、ピアノの先生をやっていたと言う入院患者さんの話では僕の習得速度は通常の3倍だったらしい。


「両手で練習しているから、習得速度2倍!」

 と僕が言ったら。

「いや3倍! 理由はわからないけど……」

 と言われた。


 まあとにかく僕は34才までぐったりと人生をむだづかいして小説家になって一発逆転するために小説家の学校へ行かせろと自殺騒ぎを起こして入院していたこともあり、あの子を口説くことが出来なかった。


 一時はしょっちゅう見つめ合って両思いなのがバレバレの状態だったのだが、僕が恋心に気付き(きづき)恋人になれないことを言ってからは、見つめ合っても心が通じ合わず胸が苦しいだけの状態になっていた。


 そんな状態でも、つながりを感じられることがあった。


 一緒に壁にもたれかかって話していた所から、僕が立ち上がってあの子の手を取って起き上がらせた時だ。


 あの子は僕がつないでいた自分の手のひらを、不思議そうな顔でまじまじと長い間見ていた。


 そして僕があの子を口説かない事に腹を立てて、「もっとひっぱんなよ!」と言っていた。


「はなさないで……」

 僕はこの言葉を、言えなかった……。



「うう~ん!」

 目が覚める(さめる)とフェアリーたちは、起きて静かに僕を見ていた。

「静かにしていてくれたんだね! ありがと!」

「うん……。斗真とうまくんが夜中じゅう、『はなさないで』って言ってたから……」

 と、こまったような表情のモンシロチョウの羽を持ったフェアリー。




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