第11話 ささくれは親不孝?
「何を見てるんですか? 藤咲さま♡」
「いや、風呂あがりのささくれチェック……」
ぼく専属メイドロボのイブさんの質問に、ささくれチェックの片手間で答える。
まわりには平均身長31.58センチ(人間換算157.9センチ)平均体重424グラム(人間換算53キログラム)のフェアリーが108匹、飛びまわっている。
「ささくれ、あったんですか?」
「あったよ?」
「ささくれが出来るのは親不孝者と言われていますが、親不孝なんですか?」
「僕には、親不孝の概念はないよ?」
「何でですか? 究極の親孝行なんですか?」
「僕には、親孝行の概念もないよ?」
「もしかして、試験管ベビーで親がいないとか?」
「いや母親は僕が小さい頃からガンで入退院を繰り返して最後は自殺して死んで、親孝行しようがないし。父親はほかの親が小学校入学初期の子供が勉強に興味を持つように勉強をさせようとする所を、『放任主義だ!』とかどや顔で言って僕が勉強嫌いになるのをずっと放置。中学生になって成績の順位を付けられるようになった所で、ゲームを禁止テレビも禁止そして殴って勉強をさせようとすると言う。勉強嫌いを作るための見本みたいなことをされたから、もう親だとは思っていない。僕は、子育てに放任主義なんて主義はないと思ってる。ただの虐待だ!」
「えい!」
そうしている間も広げていた僕の指先のささくれに興味を持ったモンシロチョウの羽を持ったフェアリーが、僕のささくれを1つ引っこ抜いた。
「ちょっと! ささくれは引っこ抜いちゃダメ! 感染症になっちゃうから、爪切りでとって!」
「ごめ~ん!」
「藤咲さま? 感染症を気にするのなら、爪切りも不潔です! キューティクルニッパーを使ってください! 薄い刃先が、ささくれの根元ギリギリまでカットしてくれます!」
と言って、キューティクルニッパーをわたされる。
「(中略108匹)「じゃあ斗真くん、おねが~い」(中略108匹)」とフェアリーたち。
「え? 何で?」
「フェアリーの小さい手じゃ、人間用のキューティクルニッパー?を使えないでしょ?」と、ヤエヤマムラサキの羽を持ったフェアリー。
「いや、そこは魔法とか?」
「魔法なんて使えないよ!」と、ウラクロシジミの羽を持ったフェアリー。
「え? 空飛んでるじゃん!」
「斗真くん? 君は蝶が飛んでいるのを見て、『魔法を使って飛んでいるのだ!』とでもいうのかね? 現実見なよ!」と、ナミアゲハの羽を持ったフェアリー。
「いや、羽出したりしまったりしてたじゃん!」
「斗真くん? 君はタンスに服をしまうのも、魔法だと言うのかね?」と、アオスジアゲハの羽を持ったフェアリー。
「いや、タンスとフェアリーの羽は違うだろ?」
「とにかく! ささくれとって!」と、クロアゲハの羽を持ったフェアリー。
「藤咲さま? フェアリーは、育つと世界樹にとって重要な存在になると言われています! 子育てに放任主義なんて主義はなくて、ただの虐待なんですよね? 藤咲さまは、きっと有能なパパになれます! がんばってくださいね♡」
僕は、108匹のフェアリーのささくれを取った後ぼくの指のささくれを取り爪を切っていた所フェアリーたちにせがまれて108匹のフェアリーの手足の爪も切った。
それだけで、5時間就寝時間が遅れた……。