第100話 謎《なぞ》が|残る《のこる》、普通のママ
「カットイン先攻ディディウスモルフォの羽の方ちゃんさん! 後攻オオムラサキの羽の方ちゃんさん!」
「カットインの相手にあたしを指定して! なんだっていうの! あたしはあなたが世界樹の巫女だろうと、あなたのような乱暴者と話すようなことは何もない!」
「技あり! ディディウスモルフォの羽の方ちゃんさん30ポイント! 合計90ポイント!」
「ディディウスモルフォの羽の方ちゃん? あたしは世界樹の巫女ではなく、ディディウスモルフォの羽の方ちゃんのママよ?」
「技あり! オオムラサキの羽の方ちゃんさん30ポイント! 合計100ポイント!」
「(中略たくさん)「ええ~~~~?!」(中略たくさん)」
「(中略たくさん)「……いや。話の流れ的に、おどろくところなくない?」(中略たくさん)」
「(中略たくさん)「様式美があるんだよ! それにカットインポイントも、もらい続けないといけないし!」(中略たくさん)」
「技あり! その他のみなさん30ポイント! 合計90ポイント!」
「あなたは、オオムラサキの羽の方ちゃんはあたしのママじゃないわ! あたしのママは優しかったもの! あたしの記憶が薄れているからって、ウソを言わないで! どうやって産んで育てたか言ってみなさい!」
「あたしが数えきれない昼と夜を一番樹液の出る場所を独占して、不眠不休で世界樹の樹液を吸い続けると。いつのまにか、人間の妊婦のようにお腹が大きくなって。周期的に下腹部から腰にかけて、じょじょに痛みがましてね。そのうちその痛みが耐えきれない痛みになって無限と思えるぐらい痛みに耐えた後、羊膜に包まれた物体を産み落としたの。それでこれはまずいと思って羊膜を破って中の赤ちゃんを取り出して鼻と口の羊水と粘液を口で吸出し、赤ちゃんの呼吸を確認してからへその緒をどうするか困っていたら。へその緒と羊膜と羊水と粘液が、光る雪に変わって赤ちゃんに吸い込まれていったの。そしたら赤ちゃんが『ママのオッパイ』と言ったから、あたしの乳首をくわえさせて母乳をしばらくの間あたえていたのだけど。あるとき赤ちゃんが『離乳食』と言ったから世界樹の樹液をあたえようとしたら、『これじゃない』と言ってディディウスモルフォの羽を生やしてその場から消滅と言うかおそらくテレポートして姿を消したの。それが、赤ちゃんだったディディウスモルフォの羽の方ちゃんを見た最後よ」
「おぼえてる! 『ママのオッパイ』と言ったのも『離乳食』と言ったのも『これじゃない』と言ったのも! じゃあ、ママなの?」
「そうよ。あたしが、ディディウスモルフォの羽の方ちゃんのママよ」
「だまされないで! ディディウスモルフォの羽の方ちゃん! あたしが毎日朝昼晩と世界樹の樹液がたくさん出る場所を見回ってた時に、オオムラサキの羽の方ちゃんが妊娠出産子育てしている所なんて見てないよ!」
「そうなの? キチョウの羽の方ちゃん? だれかオオムラサキの羽の方ちゃんが妊娠出産子育てしている所を、見ていたって言う子いない?」
「(中略たくさん)「見てな~~い!」(中略たくさん)」
「じゃあ、オオムラサキの羽の方ちゃんが聞いた話をてきとうに言っただけ?」
「全部、自分の体験した事実よ!」
「じゃあ今の話は、『世界樹が未分化のエネルギーをくみ上げている世界』の話?」
「あたしは世界樹の巫女ではなく普通のママだから、そんな世界には行った事ないわよ?」
「じゃあ、ウソじゃん! そもそもあなたのような乱暴者、ママじゃない! ママは、優しかったもの!」
「ウソは言ってないし、赤ちゃんのディディウスモルフォの羽の方ちゃんを育てているあいだ人生で一番優しい気持ちになったし。ディディウスモルフォの羽の方ちゃんの事は、いつも優しい気持ちで見ているわ! そもそも、ディディウスモルフォの羽の方ちゃんとモブどもに対するあつかいが違うのなんて当たり前じゃない!」
「(中略たくさん)「……」(中略たくさん)」
オオムラサキの羽の方ちゃんの子育てについては、ノーコメントで……。
みなさんも、お願いしますね?