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テメェ

※気が弱く、意志をハッキリ伝えることが不得意なイエスマンの作者が、せめてエッセイの中でくらいは理不尽な周囲に言い返してやりたくて強い言葉で綴っていますが、生暖かい目で見て下されば幸いです。





これは、わたしが以前バイトで働いていた福祉施設でのいつだかの出来事です。





バイト先はユニホームがあるので、男女共に着替える為のロッカールームがあった。


勤務終了後、ロッカールームに一人、わたしはユニホームを脱いで私服のシャツに袖を通した。当時コロナ対策でマスクは必須だったが、ここにはわたし一人だけ。完全にプライベート空間。マスクを引きちぎる勢いで取り、ペットボトルのジャスミンティーに口をつける。




ごきゅっ!ごきゅっ!




ペットボトルのボディがへこむこともいとわずジャスミンティーを吸引し飲み干す。




プハッと限界まで喉にジャスミンティーを浴びせ、口端から溢れ垂れたのを手の甲で拭った。




生き返った。




この日の季節は夏場で、マスクしたまま休憩なしの6時間ぶっ通し勤務だった。




ガチャ…と疲れ果てた汗まみれのおばちゃんの顔が、ドアの向こうから登場する。




この人は同僚のおばちゃんスタッフ、y子さんだ。同じ時間に退勤予定だったが、シフトの件で責任者に呼ばれていたので今まで話していたのだろう。わたしは着替え終わり、休憩も挟んだのであとは帰るだけだ。




「おつかれさまです」


すかさずマスクを着用して挨拶すると、ビー玉のようなツヤツヤだが空虚な瞳をきょろりとさせ「オツカレー」と棒読みのy子。




ドテッドテッとカバのようにのんびりしているようでいて貫禄を醸し出しながら、マイロッカー前まで移動したy子はロッカーの扉を開けるといきなり口を開いた。




「今日は忙しかったわね」




わたしは若く体力もあり可愛いのでパワーが溢れいつもより軽く作業を終えましたよとか言えないので「そうですね〜」と相槌をうつ。




「わたし家が遠くて、帰宅するのも一苦労なのよ。今から憂鬱だわ」とか言ってるy子に対して、知ってます〜!社員とお局がy子さんの家のこと話してました〜!!ここの職場の最寄り駅から4つ先の隣町の駅のロータリーから出てるバスで20分かけて到着したバス停からさらに徒歩15分かかる山の近くのマンションにy子さんは住んでるって聞きました〜!!とも言えず「わ〜大変だ」と返答する。




「あなたは家までどれくらいかかるの?」


y子がこちらをじとーと見てくる。わたしは職場から家まで25分くらいなので「30分かかるくらいですかね〜」とギリギリ濁す。y子は嫉妬深いのだ。パート職員として同期で入った30も歳が離れた若い女の私が気に食わないらしい。先輩パートのお姉さんに「y子さんがあなたが優遇されてるって勘違いしてみんなの前で不満を言ってたのを社員達が叱った」と聞いていた。




「ふーん、最寄り駅から自宅までは?」


y子は目をあからさまに暗くして聞いてくる。聞いてくんなよどうせうらやましくなるだけだから掘り下げんなバカがよ。




めんどくせーと思いながらわたしは


「徒歩10分はかかるくらいです」と律儀に受け答えた。




「ああ…なんか、そうなんだ、うーん……………電車の音うるさいでしょう?そんなに線路と近かったら」





は?




y子は精一杯負け惜しんでいた。


わたしは呆気に取られていた。着替終わったy子はその隙に退散していった。




今すぐ追いかけてって、y子の肩を鷲掴み爪を立てながら、全然うるさくねえわ快適で閑静な住宅街だわぶち殴るぞって言いたすぎる。




言い逃げされた…。




y子は知らないのだ。




わたしの家のご近所さんに、この職場の大ベテランスタッフがいることを。




バーカと思いながら、わたしは軽やかに帰宅した。



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