表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/23

第七夜 冒険にあこがれる兄妹の物語

 王子は長椅子に横になり、自分の藍色をした髪をつまみながら問います。


「なぜ、お前の夜語りにはあいの者ときんの者が現れる?」

「……幼き頃から、夢に見るのです。このうたで王子が眠る理由もわかりません」


 吟遊詩人は正直に答えます。


「ふむ。もしかしたらお前は魔物ジンニーヤかもしれんな。それなら医者にも治せなかった俺が眠るのも納得だ」

「誰が魔物ですか!」


 さすがの吟遊詩人も腹を立てます。

 王子には友人と呼べる者がなく、人付き合いの経験が少ない……つまり、言っていいこと悪いことの区別がつきませんでした。

 ある港町に兄妹がいました。

 金の瞳の兄に、藍の髪の妹。

 兄妹が、港に来る旅行者から冒険譚を聞き、海の向こうの世界にあこがれるのは自然なことでした。


 成長した二人は、あこがれを実現するため冒険の旅に出ました。


 財宝が隠されているという渓谷があれば向かい、海底に宝を積んだ船が沈んだと聞けば探しに行きました。

 

 いつもいつも二人で、どこへでも。

 けれどある時、妹は足に大怪我をして旅を続けることができなくなりました。


 だから自分の髪をバッサリ切り落として布袋に入れ、兄に託します。

 わたしの代わりにこれを、持っていってほしい。

 一緒に旅をしている気になれるから。


 妹は町に残り、兄の無事を祈ります。

 数年後。妹は町の青年と結婚し、男児の母になりました。


 兄は旅から帰れば妹家族のところに顔を出します。

 息子は成長して、伯父の冒険譚に憧れ、自分も特別なものを見つけたいと願うようになりました。


 血は争えないとはよく言ったもの。

 息子は母の夢を繋いで、兄とともに旅立ちました。 


 海の向こう、大地の向こうにある、まだ見ぬ新しい世界を求めて。

 不眠の怪物(アルゴス)と揶揄される王子といえど、眠っていればそこらへんの若者と何も変わりません。

 吟遊詩人は苦笑します。

 きっとまだ、王宮や王都しか知らない王子。

 広い世界を見たら、王子も何か変わるでしょうか。

 自分勝手な暴君が変わる日が来るのを、吟遊詩人はどこかで期待していました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 王子もいつかお話の兄妹のように、広い世界を知れば色んな事に気づけるようになるのでしょうか。 吟遊詩人もそう願っているようですね。 しかし、女の子に魔物なんて言ったらあかーん(笑)
2024/03/27 22:16 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ