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第二十一夜 遠いむかしの、はじまりの物語

 千日目。

 反乱軍が王城を取り囲んでいました。

 王がまっさきに逃げ出し、ハレムの妻たちも逃げましたが、反乱軍に捕まったと聞きます。


 城に残ったのは王子と王妃、吟遊詩人、僅かな兵だけでした。

 王妃……王子の母は王国軍を指揮するため先陣を指揮しています。

 吟遊詩人の足には、はじめのころつけられていた鉄の足枷がはめられています。


「このような状況でも、逃げないのですか」

「其方もな。自分のしたことの責任だ。それよりも、ほら、うたえ」


 吟遊詩人は、なぜ今の状況でまた王子が足枷をはめたのか、察しました。

 察したけれど、口にはしません。

 王子が吟遊詩人の言葉を望まないであろうことも、察したからです。

 それは、遠い遠いむかしのこと。

 世界を作った神の夫婦がいました。

 夫は恋多き男で、妻がいるのに愛人を侍らせていました。妻以外の女との間にも子が複数います。


 妻は嫉妬のあまり愛人を牢屋に入れ、自分の配下である金目の魔物に監視を命じます。

 百の目を持つ眠らぬ怪物なので、眠る隙を見て逃げるなんて叶わぬ話。


 愛人を大切に思う夫は、藍の髪の息子に魔法のライラを託しました。

 このライラを奏でて魔物を眠らせ、少女を逃してほしい。


 息子は少女が囚われている経緯を知らないので、父に言われるまま魔物に近づき、ライラを奏でて魔物を眠らせました。

 夫は魔物が眠る間に、愛人を連れて逃げました。


 これに憤った妻は、監視の役目を果たせなかった魔物と、愛人を逃してしまった息子に呪いをかけました。


 女神がいいというまで、必ず巡り合い死ぬ呪いを。


 息子と魔物は不幸な死を遂げ、その後何度も何度も生まれ変わり、巡り合います。

 

 

 そして巡り合って死ぬこと、千回。

 この世に神も魔物もいなくなったのに、呪いは生き続けました。

 二人のいる部屋に、いくつもの足音が近づいてきました。

 反乱軍たちが、眠る王子と吟遊詩人を見つけました。


 ただの女の子が、足枷をはめられこんなところにいるのです。

 仔細を知らぬ者の目には、暴君に幽閉されている可哀想な被害者にしか見えませんでした。


 吟遊詩人は故郷に帰らせてもらえることとなり、

 王子は、兵たちに捕らわれることとなりました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人の始まりの物語ですね。 あと、何回運命を交差すれば女神の呪いは解けるのでしょうか…。 そして、今の二人の運命にも別れが。 吟遊詩人は願い通り故郷に。 そして王子は……。
2024/06/07 19:41 退会済み
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