表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/23

第十六夜 天涯孤独な男と鷹の物語

 吟遊詩人が桃を食べていると、王子が問いかけてきました。


「其方に家族はいるのか」

「いたならば、娘を幽閉するあなたを殺しに来ているでしょう」

「そうだな。意味のないことを聞いた。……今宵の歌をうたえ」


 王子は話を変え、吟遊詩人を促しました。

 ある町に藍の髪を持つ男がいました。

 天涯孤独の身で、飼っている金目の鷹だけが家族でした。

 鷹は男の言葉を静かに聞いて、そばにいてくれるのです。


 ある日町を訪れた貴族が、ひと目見て鷹を気に入ります。

 貴族は、遊んで暮らせるだけの金をやるからその鷹を譲ってくれと言いました。

 男は唯一の家族を手放すなんてできません。

 大金を積まれても断りました。

 手に入らないとなるとますます欲しくなるもので、貴族は金に加え、娘を嫁にやるとまで言い出します。

 男は父の横暴で嫁ぎ先を決められてしまう娘が哀れになりました。


 だから貴族に言いました。

 僕はどんなに望んでも家族がいない。こんなことのために、家族を手放してはなりません、と。


 娘はその言葉を聞いて男に惚れ込み、自ら父の元を離れて男の妻になりました。

 娘に見放され、ようやく貴族は己のしたことの愚かさに気づくのでした。 

 うたい終わり、王子は眠る。

 吟遊詩人は部屋に戻ります。 

 人の命をたやすく奪える王子に親がいるのに、自分にはもう親がいない。

 眠るときにいつも頭をなでてくれていた母を思い出し、少し寂しい気持ちで横になりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 家族や愛は金では買えませんし、何より家族を対価として差し出そうとするなんて……言語道断な行いですね。 その愚かさに気づくのは失ってから。 遅いけど、気づけたのはよかったですね。失ってなお気…
2024/04/25 21:18 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ