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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾のその後の物語

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14:オムライス

 瞼を開けると夜の闇に浮かぶ宮殿が見えている。


 でもこの宮殿は、ルミナリア王国のものではない。レーガン王国のものだった。


「アマレット、転移出来るのはここまでです。基本的に一度行ったことがある場所には転移できますが、そうではない場合……」

「転移できても、確実な場所に到着できない、のですよね。それは仕方ないです。ここからは宮殿で働くバトラーとメイドのふりをすれば問題ないかと。レイールは育ち盛りで、毎晩夜食を頼みます。その夜食を運んで来たと思わせれば……大丈夫です!」


 宮殿の裏庭に何とか転移出来た。私の書いた地図を元に、一度もレーガン王国に来たことがないセルジュが、頑張って宮殿の敷地内に転移してくれたのだ。


(いざとなれば数名の兵士を気絶させることになったけど、そうはならずに済んだわ)


 そこでザッ、ザッ、ザッと行進する足音が聞こえてきた。


(安堵するのはまだ早いわ! 作戦はスタートしたばかりよ)


「警備兵が来ます! 厨房はこちらです!」


 そこで四人を連れ、回廊に向かう。


 ここからは堂々と、この宮殿で働く使用人のふりをする必要があった。かつ、この世界は男性社会なので、バトラーであるセルジュが先頭を進むことになる。


「セルジュ、右です」


 彼の斜め後ろ近くを歩きながら、私は小声で向かうべき方向を伝える。


 どちらへ進むか、わからない場合。どうしたってキョロキョロしそうなもの。でもセルジュは背筋を伸ばし、真っ直ぐ前を見て、実に堂々としている。


(この場所が初めてだとは……誰も思わないはず)


 何よりこの時間になると動いている使用人の数が減るので、普通にしていれば目をつけられることはない。


 そこでセルジュが軽く会釈をしそうになり、それは何とかストップすることになる。


 すぐそばに警備兵がいて、セルジュはいつもの習慣で、会釈しそうになったが……。


 レーガン王国の宮殿で働く使用人には、爵位の低い貴族の令息や令嬢も含まれる。対して兵士は全て平民。ゆえに宮殿の使用人が兵士へ会釈なんて……しないのだ。


 セルジュは王太子だけど、相手の身分に関係なく挨拶をするのが習慣になっている。そこは彼の美徳だと思う。しかしここレーガン王国では目立つ行動になる。


(良い行動なのに制限されるなんて! レーガン王国は本当にダメね)


 そんなふうに考えていると、いよいよ厨房が近づく。


「セルジュ、左に曲がってすぐが厨房です!」


 そこで厨房に着くと、予想通り。こんな時間までご愁傷様の料理人がひとり、レイールのための夜食を用意していた。


(毎晩のように夜食を食べてレイールがあの体型を維持しているのは、まさに攻略対象チートよね! 本来だったらぷっくりお腹間違いなしなのに!)


「遅くまでご苦労様です。レイール第二王子殿下の夜食を受け取りに来ました」


 セルジュが落ち着いた声で伝えると、料理人は驚きの声を上げる。


「あ、あ? 今日はザックじゃないんですか? それにそちらのメイドは?」

「ザックは腰痛がひどいと、早退しました」

「腰痛……?」


 料理人が首を傾げた瞬間。

 背後から近寄っていたスティが薬を染み込ませた布で料理人の口と鼻を押さえる。


「魔獣をも眠らせる薬ですから、明日の昼過ぎまでぐっすりのはずです」


 セルジュはそう言いながら、料理人を担ぐ。


「こちらが使用人の休憩室です! ソファもあるので、そこに寝かせ、テーブルに酒瓶を置いておけば……酔って寝たと思われます!」


 私の言葉にセルジュが頷き、休憩室へ向かう。

 手早く料理人をソファへ寝かせ、厨房へ向かうと、スティが見張りにつき、エリーとメディがワゴンに料理を並べてくれていたが……。


「……? え、二人分……?」


 用意されていた夜食はオムライスで、それは二人分。

 お皿も別々で盛りつけられていた。


(さすがにレイールが食欲旺盛でも、夜食でオムライス二人分は食べないでしょう。夕食を抜かしているならまだしも……)


 そこで私は一つの可能性に気が付く。


「もしかしたら一度で全てが済むかもしれません!」


 本当は二手に分かれて行動する予定だったが、どうやらその必要はなさそうだ。

 その代わりで厨房に見張りを立てることができる!


「スティはこのまま厨房に残って。もし第二王子の夜食を運ぶためバトラーが来たら、別の者が運んだと伝えて。騙し切れなかったら……」

「お任せください、アマレット様!」


 スティがウィンクする。


「準備ができたら合図を送ります、お姉様」

「ええ、頼んだわよ、エリー」


 グラマラス美女三姉妹は、魔術で連絡を取り合うことを約束。セルジュは、クローシュが被せられたオムライスの乗った皿が乗るワゴンを押す。私はその斜め後ろに再び寄り添うように続き、道案内。エリーとメディは仕事終わりのメイドを装い、あえてぺちゃくちゃとおしゃべり。


 警備兵はそこかしこにいる。だがセルジュを始め、全員が堂々としているので、彼らが怪しむ様子はない。


(結局、宮殿の使用人はシフト勤務を組んでいるし、人数も多すぎて、警備兵も全員の顔と覚えきれているわけではない。それに使用人は長く勤める者が多いけれど、警備兵は過酷な職務であり、入れ替わりも多々ある。大丈夫。このままバレないわ)


 このままいける!と思ったまさにその時。

 まさかのメイド長がこちらへ向かって来ていた――!


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