13:たったの三日……!
「アマレットを噛んだ蜘蛛を怒りでその場で滅しそうになりましたが、何とか踏みとどまりました」
私を腕枕すると、セルジュはゆっくり昨晩の私が気絶して以降を語り始める。
「毒蜘蛛であるとわかりましたが、滅してはどんな毒を注入されたかもわかりません。それに冷静に考えると、あの場でアマレットの命を奪うことはセレノアにとっての最善策ではない。アマレットの命を奪われるかもしれない、だからその指示に従う。アマレットの命を奪えば、その図式は崩れる。ゆえに死に至ることはないはず――とわかりましたが、気が気ではありませんでした」
セルジュはグラマラス美女三姉妹の侍女と私を連れ、転移で宮殿に戻ると、すぐに宮廷医や学者を集め、蜘蛛を見せた。その結果、その蜘蛛は一時的に噛みついた相手を麻痺させる毒を持つものであると判明。だが私は麻痺というより、意識を失っている。その点については……。
――『おそらく精霊の力で、毒の力が強化されたのでしょう。それでもこのサイズの蜘蛛の毒です。明朝に目覚められるかと』
宮廷医や学者のこの見立ては正解だったわけだ。
一方のセルジュは蜘蛛と交渉することになる。
「わたしは蜘蛛に猶予を申し出ました。あまりにも急な話であること。わたしはこれでも王太子という身であり、いきなり姿を消すことはできないと」
「蜘蛛はどう反応したのですか?」
「セレノアは周到でした。わたしが猶予を申し出ると予想したのか、予見したのか。三日。三日間だけなら猶予を与えると告げました」
たったの三日……!
「何か算段はありますか?」
「父上が国中の学者に招集をかけてくれています」
そう答えるセレジュの表情は浮かない。
だがそれは一瞬のことで、すぐにいつもの表情となり、私に告げる。
「精霊にセレノアに魔術が効かないことはわかっています。ですが物理攻撃は通るかもしれません。諦めるつもりはないです。幼い頃より剣術の腕を磨いています。セレノアを倒し、アマレットの元に絶対に戻る」
昨晩見たセレノアは泉でその姿を形作っていた。剣で倒せるのだろうか。
私は……セルジュを失いたくなんてなかった。だって彼はこの世界で私の全てを受け入れてくれた唯一無二の存在。ぽっと出の精霊如きに奪われてたまるものか!
(セルジュのことは私が守る──!)
その体をギュッと抱きしめるとノックの音が聞こえる。
(これはグラマラスな三姉妹侍女たちね)
セルジュと私は顔を見合わせ、「「はい、どうぞ!」」と声を揃えた。
◇
古の精霊にセルジュを奪われたくない。
そこで私は考えることになった。
神にも等しい精霊に魔術は無効。
剣などの物理攻撃は意味がない気がする。
唯一わかっているのは聖なる力なら、通用するということ。
その時、私は閃いてしまった。
「皆様、会議中に申し訳ありません! セレノアからセルジュ様を守る方法を思いつきました!」
魔王やセルジュ、重鎮と学者たちの会議の場で、私は思いついた作戦を話した。
これを聞いた魔王は──。
「何という奇策。だがその方法なら……よし。まずは薬師を呼べ。そして作戦を決行するメンバーは……セルジュ、アマレット、そしてスティ、エリー、メディで良かろう」
「ありがとうございます、魔王陛下!」
こうして準備はあっという間に整えられる。
何せ猶予は三日しかないのだ。
もたもたしている暇はなかった。
「アマレット様、安心してください! 私たちの殿下を、泥棒猫になんか奪わせません!」
「そうです! 殿下のお相手はアマレット様、だだお一人。絶対にこの作戦、成功させて見せます!」
「私たち三姉妹、殿下とアマレット様に勝利を捧げます!」
エリー、メディ、そしてスティは俄然やる気になっている。
(でもこの三人が今回の作戦で要になるわ。頑張ってもらわないと)
三人は宮殿で見かけるような黒のワンピースに白のエプロン姿になっていた。
私もメガネに三つ編み、そしてそばかすとホクロをつけ、三人と同じ衣装を着てメイドに扮している。
セルジュはというと、カツラを被り、長髪となり、メガネで瞳の色が金色とはわからなくしていた。
(セルジュのメガネ男子! 似合い過ぎ! しかもバトラーに扮したその黒のテールコートが似合い過ぎている!)
性癖のど真ん中過ぎて興奮しそうになるが、今はそんな場合ではない!
「アマレット、出発しますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫です!」
「では、三人もこちらに集合」
セルジュが魔術陣を出現させ、五人で集合する。
静かにセルジュが呪文を唱え、私を抱き寄せているが──。
目を開けたら作戦開始だった。














