↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
第三弾のその後の物語

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/120

11:目を逸らすことはできない

「私は……嫌です。セルジュが私以外の花嫁を迎えるのも。側妃を迎えるのも。だって私は――」


 心臓が信じられないぐらいバクバクして、このまま気を失うのではと思った。

 全身が熱く、呼吸も浅くなっている。


「アマレット、今の言葉の続きは……」


 セルジュがゆっくり力を抜き、再び彼と私は見つめ合う。

 端正で整った顔は、鑑賞するもの。

 遠くで愛(め)で、眼福とニマニマして満足だった。


(でも今は違う。私は……優しく思いやりがあり、他者を気遣えるセルジュが好き。最強なのに私の前ではブラックキャットの姿で甘えるセルジュが大好きになっていた。もうこの自分の気持ちから目を逸らすことはできない)


 その時、視界の端でヒュンと流れ星が横切った。

 それが合図のように、私は口を開く。


「セルジュのことが……好きです」

「!」

「私には勿体ない、恐れ多い、身の程をわきまえろ、自分……そう言い聞かせていました。でも……無理です。セルジュのこと、大好き過ぎて。もう気持ちを我慢できません」

「アマレット!」


 優しく顎を持ち上げられた瞬間。

 数多のアニメやコミックで見たシーンを思い出す。


 そこから先は夢を見ているようだった。


 唇に感じる温かさにもう心臓はスパーク寸前!


 人間界のような結婚式はなかった。

 だからこれはセルジュとの……ファーストキス……!


 大好きな人とするキスはこんなにもドキドキして甘いんだ。


 なんだか時間が永遠に止まったような気がして――。


(……うん、く、苦しい)


「アマレット!? もしかして息を止めていたのですか!?」


 セルジュの唇が離れ、指摘されて自覚する。


(確かに! 息を止めていたかもしれない!)


 道理で苦しいはずだ!


「大丈夫ですか、アマレット、呼吸を、呼吸をしてください!」

「は、はいっ!」


 ムード満点の中、告白をして、キスをされたのに。

 直後、酸素不足で「ぜーはー」しているなんて……。


(恥ずかし過ぎるわ!)


 だがセルジュは優しく私の背を撫で、落ち着かせてくれる。


「……ごめんなさい。キス……している時も呼吸をするんですね」

「……意識していませんでしたが、呼吸はするのだと思います。わたしは……していました。心臓は病気かと思うぐらいドキドキしていましたが、息は自然としていましたよ。鼻呼吸ですね」


 セルジュの真摯な回答に、私は笑顔になるしかない。


(今の言い方だとセルジュもキスは初めてなんだ……!)


 こんなにハンサムで性格もよく、強いのに。

 彼とキスしたいと願う女性は数多といそうなのに。


(セルジュのファーストキス、奪ってしまったわ!)


「アマレット、鼻で息を吸って吐くんです。わかりましたか?」

「? あ、はい」


 答えて顔をあげると、再びセルジュの唇が私に重なる。


(二度目のキス!?)


 喜びと驚きの中、でも理解する。


(セルジュはずっと私を好きでいてくれた。溢れる気持ちを何度も抑えてくれていたのだろう。すでに私と彼は結婚しているわけで、自分の立場、願望を押し通すこともできたはず。しかし彼はそんなことをしない。自制し、私の気持ちを最優先してくれた)


 彼の優しさに想いが募り、私はセルジュのことを思い切り抱きしめたが……。


 それは不意打ちになったようだ。

 キスに集中していたセルジュは、突然ぐいっと私に抱きしめられ、バランスを崩し。


 とさっと私は広げられたマントに仰向けとなる。

 セルジュは腕をつき、私を覗き込む姿勢となった。


(満点の宇宙のような星空を背景にしたセルジュは古の神のようだわ……)


 その神々しいばかりの美貌に目を細めたその時。

 セルジュの顔に緊張が走る。


 同時に。


 ざばーっと物凄い水音が聞こえ、「にわか雨!?」と驚くことになったが。


「な……これは……」


 セルジュが体を起こし、前方を見て、絶句している。

 私は彼の背に庇われ、前が見えない……前は見えないが、相手は巨大だった。

 それはもう突然目の前に富士山があらわれたような感じ。


「巨人!?」

「いえ、違います……この気配は……古の昔から存在するエルフよりも古い存在。これは……精霊です。自然の力との結びつきが強く、神にも等しいもの」


 その姿はまさに美しいガラスでできた巨大な女神であるが、絶え間なくその表面を水が流れ落ちている。つまり目の前の泉の水で体が形作られているようだ。


 そんなふうに状況把握に努めていると。

 視界に水柱が見え、こちらへと向かってくる!


「あぶない」


 セルジュに抱きしめられ、次の瞬間。

 転移して、野営地に戻っている。


 赤々と焚火が燃え、そのそばで子犬姿の従者がすやすやと寝息を立て、天幕の側にいる騎士は直立不動で守りの姿勢。


 離れた場所でこちらを伺っていたブラックウルフは、セルジュと私であるとわかると、すぐに姿を消した。


「あ、殿下、アマレット様!」


 スティ、エリー、メディが天幕から出てきた。


「戻られたのですね! 入浴の準備をします」

「お茶はすぐにご用意できます」

「どうぞ、中へ」


 三人の甲斐甲斐しい侍女により、天幕の中に入り、セルジュと並んで簡易ソファに腰掛けることになる。


「どうして突然、姿を現したのでしょうか……? なぜ攻撃されたのでしょう……?」

「女神というのは……この世界では嫉妬深いものとされています。もしかするとわたしとアマレットの姿を見て頭に来たのかもしれません」


 セルジュの言葉を聞いて「えええ」と思うが、前世記憶で思い出す。


 神奈川県にある島、吉祥寺にある公園。共に女性神が祭られている。デートで向かうと、公園の池のボートにカップルで乗ると、破局する……という話は有名だった。その理由は女性神が嫉妬するから、と。


(ただの都市伝説かもしれないけど、そういう噂は確かにあったわ)


 それだけではない。ギリシャ神話の女神は嫉妬深いことでも有名だ。出産を阻止しようとする女神もいれば、才能を妬み相手を蜘蛛に変えた女神もいる。


(精霊は女神の姿をしていた。セルジュの言う通り、嫉妬して目障りだと攻撃した可能性は高い)


「どうぞ、ハーブティーです!」


 エリーが出してくれたハーブティーを口に運びながら、一息ついた後、セルジュに問う。


「あの精霊は泉の主(ぬし)ですよね、きっと。もし泉の近くを開墾し、村を作ったら、家族で定住することもありますよね。そうするとさっきみたいに攻撃されるのでしょうか?」

「その可能性が高いです。独り身の男性だけ集めた稲作の村を作る……非現実的ですよね。それにそれはそれで精霊が何かしないか心配です。精霊は気まぐれで、美しい者を好むので……」


 魔族の男性はイケメン揃い。精霊は大喜びで手を出しそうだ。


「セレノア一帯に魔獣がいない理由がよくわかりました」

「精霊がいるから、ですか?」

「そうです。魔族の魔術は精霊に効きません」

「! そうなのですか!?」

「精霊の持つ力は神に近い力なので……。対抗できるのは聖なる力のみです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページやタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢は王太子直属の護衛騎士に~溺愛付きのジョブチェンなんて聞いていません~
『婚約破棄された悪役令嬢は王太子直属の護衛騎士に~溺愛付きのジョブチェンなんて聞いていません~』

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●完結●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』は
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●結末を知らないまま転生●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●短編集●
バナークリックORタップで目次ページ
浮気三昧の婚約者に残念悪役令嬢は華麗なざまぁを披露する~フィクションではありません~
『完結●浮気三昧の婚約者に残念悪役令嬢は華麗なざまぁを披露する~フィクションではありません~』断罪の場で自ら婚約破棄宣告シリーズ第四弾。

●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。