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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾のその後の物語

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9:夕食後

「王太子妃殿下は『これで照り焼きを作れたらいいのに』とおっしゃっていましたよね。そこで残ったメンバーで照り焼きのレシピを考えてみたのです。勝手に貴重な調味料を使ってしまいましたが、漬けダレをベースに味を調整し、作ってみたのですが、いかがでしょうか……?」


 馬車と残りのメンバーが待つ場所に戻ると、なんとぶりの照り焼きのためのタレを、茶髪にそばかすの一番年齢の若い従者、サハラが作ってくれていたのだ!


 これはと味見をすると……。


「すごいわ、サハラ! 限りなく照り焼きの味に近いわ! これに……そうね。少し甘さを出すといいから、砂糖を入れましょうか。砂糖は貴重だから、入れてないのでしょう?」

「はい! 実はそうなんです!」

「砂糖を使っていいわよ」

「分かりました! 王太子妃殿下!」


 既にご飯も炊いていてくれたので、ならばとこの場で塩むすびを握ってしまう。これは私に作り方を習い、みんな「あちっ」「熱いっ、」と大騒ぎしながら、塩むすびを握る。


 完成した塩むすびを冷ましながら、移動スタートだ。


 馬車の中では行きと同じ。


 悪路を進むので、セルジュがずっと抱きしめてくれている。私は甘んじてその引き締まった胸に身を預け、彼の香水の甘い香りを堪能。そうしているとガタガタ揺れているに関わらず、私はウトウトしてしまう。


「アマレット、到着しました」


 優しいセルジュの声に目覚め、窓の外を見ると、茜色の空が広がっている。そのまま馬車を降りると……。


 懐かしい匂いを感じる。


 醤油に混じる香ばしい匂いは夕ご飯の時間を思い出させるもの。


「サハラ、照り焼きを焼いてくれていたのね!」

「はい! 王太子妃は率先して煮炊きを手伝ってくださいますが、本来それは我々使用人の仕事です。レシピもわかり、焼き方もアドバイス頂いたので、皆で手分けして焼いています!」


 簡易の竃は三つあり、そこでグラマラス美女三姉妹も参加して照り焼きをいい感じで焼いてくれている。


「アラ汁は既に完成しています!」


 農夫が笑顔でそう言ってくれる。


(みんな、和食文化にすっかり慣れてくれた! 怪魚の身も骨もこれで余すことなく楽しめるわね!)


 こうして夕食は私が動かずとも準備が着々と進み、あっという間に食事が出来る状態になった。


 日没後のまだブルーアワーの中、昨日と同じで焚き火を囲んでの夕食となる。


「みなさん、ありがとうございます! おかげでこんなにも早く、夕食をいだだけることに、感動です。今晩は皆さんが協力して作り上げた『怪魚の照り焼き』『塩むすび』『あら汁』です。どうぞ、召し上がりください」


 パチパチと焚き火の火が爆ぜる中、転生して初めての照り焼きを頬張ると……。


「この甘い辛いタレは……初めて口にしました! このタレが、怪魚の脂の身に絡まると……ジュワッと旨味が口の中で膨らみます! それにほのかに感じる焦げの味さえ、いいアクセントです。なんて美味しさなのでしょうか!」


 感極まってセルジュが叫ぶと、農夫の二人が追随する。


「殿下、その照り焼きと塩むすびをぜひ口の中で融合させてください! 濃厚なタレの旨みをライスが受け止めてくれます!」

「それだけではありません! 塩むすびの塩が、甘辛いタレの味を引き立ててくれます」


 これを聞いたセルジュは「なるほど」と塩むすびを頬張り「ううん! 素晴らしい組み合わせです!」と悶絶している。


 そこに私はとどめ(?)の一言を添えてみた。


「セルジュ様、そしてみなさま。照り焼きを食べ、塩むすびを頬張る。そこであら汁を一口どうぞ」


 私の言葉にセルジュだけではなく、皆が一斉に動く。


「これは……!」とエリーが唸る。

「白米にアラ汁の旨味が溶け込み、胃袋へおいしさを届けてくれます!」とメディが瞳を輝かせた。

「アラ汁の後味が、照り焼きの味をお想起させ、再び照り焼きに手が伸びます。そうなると塩むすびを頬張り、そしてアラ汁へ……」とスティが感極まった表情になる。


「これは無限に食べられる構図が完成しますね!」


 私の言葉に皆が頷く。


「アマレット。君が教えてくれた照り焼き、塩むすび、アラ汁は最高です。毎日美味しい食事で記録が上書きされます。これもそれもライスがあってこそ。この地にライスの一大産地を築きましょう!」


 セルジュの言葉に拍手が起きた。


 ◇


 大満足の夕食後、セルジュが食後の散歩を提案した。


「散歩……魔獣の森の中を、ですか?」

「いえ、正確にはアマレットが見たいと考えていたものを見に行くので、夜の森の中を練り歩くわけでありません」


 この言葉を聞いた私は「あ!」と理解する。

 この私の表情を見て、セルジュは優しく微笑む。


「転移するので、すぐに目的地に到達できます」

「ぜひ連れて行ってください!」

「お任せください」


 セルジュはそう言うとパールシルバーのマントを羽織り、私には薄手のショールを羽織らせるようスティに命じる。


「この季節、虫も増えますからね。何かに刺されたりしないように」

「お気遣い、ありがとうございます」


 準備が整うと、セルジュは魔術陣を展開し、そこに私をエスコートする。


「では、参りましょうか」


 ふわりと優しくセルジュが私を抱き寄せ、瞼を閉じ、風を感じ、目を開けると――。


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