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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾:ドアマット悪役令嬢、ドン底からのハッピーエンドの物語

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23:なんて破壊力

 フォカッチャサンドとベーコンエッグ、紅茶を用意して寝室に戻ると、うるうるの瞳のセルジュが……ブラックキャットことブラックローズの姿でソファにちょこんと座っている。


「!? どうしてそのお姿に? まだ催淫効果が?」

「みゃぁ……」


 そこでジャンプして私の腕の中に飛び込んできたブラックローズの声が聞こえる。


「みゃあ、みゃぁ(入浴を終えたら、部屋に誰もいません。昨晩のわたしの醜態を見て愛想を尽かされたと思いました)」


 うるうるの瞳の理由がわかり、私は「朝食の用意を手伝っていただけですよ」と笑いながら答えた後に、大変な事実に気が付く。


「! ブラックローズの言葉がわかるわ!?」

「にゃー、みゃぁー(魔力を使い、メッセージを送っています)」


 これにはもうビックリ! 前世から猫好きだった私は「猫と話せたらいいのに」と何度思ったことか。


(それがこんな形で実現するなんて……!)


 つい、ブラックローズとの会話を楽しみたくなるが、せっかく朝食を用意したのだ。セルジュにも食べてもらいたい!


「殿下。私が作った朝食、一緒に食べませんか? 人間界の食材で作りましたが、スティもエリーもメディも『美味しい』と喜んでくれました」

「にゃぁ、みやぁ(食べたいです! 少しお待ちください!)」


 ブラックローズ……セルジュは私の腕の中からジャンプすると、バスルームへと駆けて行く。しかも前足を器用に使い、扉を開け、中へと入り――。


「お待たせいたしました! アマレット、朝食を食べましょう!」


 白のローブを着たセルジュがバスルームから出てきたが……。


(ま、眩しい! 白のローブが爽やかなのだけど、どう考えても裸で一枚羽織っているだけ……)


 さっき見てしまった裸の上半身は彫像のようであり、それはもう芸術作品のようだった。あの体がこの薄布一枚向こうにあるのかと思うと……。


 想像してはダメなのに、想像してしまい、思うことはただ一つ。


(な、なんて破壊力かしら?)


「これがアマレットの作った料理なのですか!? すごいです……。母上も料理ができますが、人間界の女性は皆さん、料理ができるのですね……」

「……そ、そうですね。人によるかもしれませんが、私は料理が好きです」


 セルジュが私のことを「アマレット」と呼んでいる……。


(初夜を経て、名実共に結ばれた二人なのに「アマレット嬢」では変よね。よって「アマレット」で正解。でも……いざそう呼ばれるとドキドキするわ!)


 私が一人ドキマギしていると、セルジュが瞳を輝かせて尋ねる。


「早速ですが、いただいてもいいでしょうか?」

「はい! 召し上がってみてください」


 そこでまずカレー風味のキャベツとソーセージをサンドしたフォカッチャサンドをパクリと頬張ったセルジュは……。


「!」とその金色の美しい瞳を大きく見開き、美貌の顔に恍惚とした表情を浮かべる。


「なんとスパイシーで、風味があり、味わい深いのでしょう……! キャベツも初めて食べましたが、とても美味しいです。ソーセージとこのキャベツとパンが口の中で一つの味になると……たまりません!」

「気に入っていただけてよかったです!」

「こちらは……卵料理と肉料理の組み合わせですか」

「はい。ベーコンエッグ、と言います」


 セルジュは「ベーコンエッグ……」と呟き、ナイフとフォークで上手いこと一口サイズにベーコンと目玉焼きをカットし、口に運ぶと……。


「……! この程よいベーコンの塩気と卵の白身が最高にあいますね! 何よりこのベーコンのカリカリの食感がたまりません!」

「黄身にも注目してください。そのまま崩さず、口の中で、黄身とカリカリベーコンを絡ませても絶品ですよ」

「やってみます!」


 素直なセルジュは私の提案した食べ方を実践し、その旨さに悶絶してくれる。


「美味しいです! 何というか、パンのおかわりも欲しくなります!」

「ではこちらのパンをどうぞ」


 そうなることを想定し、用意していたパンを勧めると、セルジュは「ありがとうございます」とパクパクとパンを食べる。その食べ方は見ていてなんだか気持ちいい。


「! アマレットも召し上がってください!」

「そうですね。ではいただきます!」


 こうして私が朝食を食べ始めて程なくして、セルジュは用意した分のフォカッチャサンドとベーコンエッグを食べ終え、そして――。


「昨晩は醜態をさらし、大変失礼しました」

「バニラの香りが魔族の男性にとっての媚薬というのは驚きでしたが、殿下はブラックローズの姿だったので……。愛らしかったです。醜態などではなかったですよ!」

「ですがわたしは全身の力が入らず、アマレットに大変恥ずかしい姿を……」

「あんな風にお腹を向けてひっくり返るのはリラックスしている証です。気を許していただいているとわかり、嬉しかったですよ」

「そ、そうですか……」と長い睫毛を伏せ、羞恥に耐えないという表情をするセルジュは、実に愛いである!


 そう思ったが冷静に考えると……。


 抵抗しないブラックローズを……本当はセルジュなのに、その体を私は思いっきりモフってしまった。


(もしかしてセクハラでしたー!?)


「あ、あの、殿下」

「はい」

「私こそ……その、失礼しました!」


 土下座する勢いで体を折ると、「アマレット、顔をあげてください!」と慌てた様子でセルジュが言ってくれる。


「ですが私、つい、殿下であることを忘れ、ブラックローズだと思い、その体を……」


 顔をあげると、真っ赤になったセルジュと目が合い、私まで顔が熱くなる。


「もう、それは……事故だったということで……。わたしはアマレットに文句などなく、むしろ謝罪の気持ちでいっぱいなので、もう気にしないでください」

「そう言っていただけると……本当に、ごめんなさい」

「いえ、こちらこそ……」


 そこで沈黙ができてしまい、何となく気まずい。

 こういう時、女子はコミュニケーションに長けているので、場をつなぐ言葉を口にしやすい。私もそこでセルジュに尋ねることになる。


「そういえば殿下はあの日、どうしてあの場所に? 何があったのですか?」


 ブラックローズ……つまりはブラックキャット、黒猫の姿で私と出会うことになった経緯を尋ねることになった。


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