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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾:ドアマット悪役令嬢、ドン底からのハッピーエンドの物語

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20:……まいりました

(なんていい香り……)


 レーガン王国では、リッチな入浴タイムは薔薇風呂が定番だった。

 だがここ、魔族たちの国、ルミナリア王国では、特別な日にバニラの香りで入浴を楽しむのだという。


 甘い香りの湯につかり、同じ香りの石鹸で体と髪を洗ってもらった。その後につけてもらった香油もバニラの香り。もう髪からつま先まで、全身が甘やかな香りに包まれ、自分でもうっとりしてしまう。


 しかも白のシルクの寝間着に羽織ったのは、ミルキーピンクのガウン。


(まるで自分が極上のスイーツになった気分だわ! ストロベリー味のマカロン!)


 ご機嫌で寝室に置かれたソファに座ると、メディが“アグネスのお酒”こと、甘口の葡萄酒を運んでくれる。


「アマレットお嬢様、もし緊張されていたら、先に葡萄酒をいかがですか?」


 メディに問われた私は、これから初夜だというのにほぼ緊張感ゼロであることに気づく。


(それは間違いなく、この婚姻が形式的なものであり、今宵何もなく終わる……そう理解しているからだわ!)


 しかし冷静に考えると、ここは緊張して当然のように思える。


「そ、そうね。緊張しているから、一杯いただこうかしら……」

「はい! それがよいと思います。一杯程度であれば、アマレットお嬢様なら酔っ払いになることもないですし」


 こうして出された葡萄酒、やはり甘くて飲みやすいので、ついごくごくと飲み干しそうになり、「いかん、いかん」と心の中でつぶやき、「なにか摘まもう」と思い、銀の皿を見ると……。


「これは……」

「そちらはパイナップルと言われる南国のフルーツです。温室で栽培されたものですが、人間界でも珍しいと言われていますよね?」


 メディに問われ、「その通り!」とばかりにこくこく頷くことになる。


「そうね。レーガン王国でも温室で栽培できると聞いているわ。でもかなり難しいらしくて……。めったに食べることができない。……というか私は初めてだわ!」


 前世では食べていたが、この世界では初めて目にして、口にすることになる。


「このパイナップル、そしてこちらのアグネス様のお酒こと、甘口の葡萄酒を合わせると、最高なんです。パイナップルの甘酸っぱさが際立ちます!」

「いただきます!」


 ということでパクリとパイナップルをまさに頬張ったところで、セルジュが部屋に来ることを伝えられた。するとスティがキリッとした表情で告げる。


「アマレットお嬢様、ご準備を!」

「! あ、はいっ」


 残っていた葡萄酒を飲み干し、もう一口パイナップルを食べると、「歯を磨きましょう!」となり、最終準備となる。そして「ご準備は完璧です!」とエリーに言われたところでセルジュが登場。


 紺色の寝間着にクリーム色のガウン姿のセルジュは……。


 寝間着が開襟タイプなので、これまで見えなかった鎖骨が見え、それがなんとも艶っぽい! しかも黒髪のしっとりとした雰囲気といい、潤いを帯びた肌といい、全身から色気オーラがだだ漏れなのだ!


(これは本人無意識でこうなっているのかしら!? こうなると押し倒されても文句は言えないわよ!って、違うでしょう、私!)


「皆、下がるように。何かあれば呼ぶので」


 セルジュの指示でグラマラス美女三姉妹の侍女ほか、セルジュの護衛騎士や従者も退出し、部屋には私と彼の二人きりになった。


「客人としての待遇と言いつつ、表向きには必要なことで……。明日の昼頃まで、ここでわたしは過ごすことになりますが、よろしいですか?」


 変な想像をしてしまった私に対し、セルジュはあくまで誠実な対応をしてくれた。


(変な想像をしてしまった自分を……罰したくなるわ!)


「お気遣いありがとうございます。この慣習は人間界と同じですので、大丈夫ですよ。あ、どうぞ、座ってください」

「では失礼します」


 ソファが……寝室のソファは前室と違い、二人掛けのものが一脚しか用意されていない。必然的に横並びで座ることになるが……。


(あ、やっぱり甘いムスクの香水が……)


 うっとりする私にセルジュは……。


「……まいりました」

「?」

「バニラの香油を……つけていますよね?」

「あ、はい」

「……バニラは魔族の男性には催淫効果があるんです」


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