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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾:ドアマット悪役令嬢、ドン底からのハッピーエンドの物語

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19:私はリアリスト

 夕食には、バジリスクの肉料理が登場した。しかし原型なんて、一切とどめていない。アグネス様がかつて絶叫したという怪魚も、フリッターになってしまえば、ただの、美味しい白身魚。バジリスクも鶏肉みたいな味わいで美味しい!


 デザートは普通にストロベリーのタルトだったし、昼食から一転、私は大いに飲んで食べることが出来た。


「アグネス様が焼いてくださったパン、とても美味しかったです! ありがとうございます!」

「それは良かったわ! たまにね、今もパンは焼いているのよ。毎年、ホリデーシーズンにはシュトレーンを焼いているわ」


 これは驚きである。


 前世で友人の旦那さんはパティシエだったが、その彼が「シュトレーンは作るのが大変!」と言っていたのだ。


 なんでも生地にフルーツを均一に混ぜ込み、発酵管理するところ、仕上げまでにかける手間暇が半端ないのだとか。


(プロでも大変な上に、ここは魔の国。人間界の食材を手に入れるだけでも一苦労だと思うわ。それに前世のようなオーブンがあるわけではない。温度管理、火力調整、ムラなく焼くための工夫を考えると……アグネス様のその立場を鑑みても、シュトレーンを作っていることは奇跡に思えた。


 そんな夕食会の後は、そのまま舞踏会だった。


 会場の雰囲気、開会の挨拶、最初のダンスからの皆での一斉ダンスなど、そこは人間の舞踏会と変わらない。


「元々、舞踏会の文化は魔族たちにはありませんでした。人間との交流をきっかけに取り入れられたものです。ゆえに全体の構成、音楽、ダンスなど、すべて人間界と同じかと」


 それはまさにセルジュの言う通りだった。


 そして舞踏会で行われる社交も、人間界にそっくり。


「アマレット様、ご結婚おめでとうございます! 王太子殿下は魔族の女性たちの間でも大人気でした。陛下の伴侶になることが出来るなんて……羨ましいですわ!」

「殿下はあの通り、お若く体力もあります。人間より魔族の方が、スタミナがありますから、アマレット様のお体が持つか心配ですわ〜」

「でも人間と違い、ルミナリア王国では側妃を持つことも認められています。体力に自信がなくても、側妃に任せることもできるのです。そこは安心なさっていいのでは?」


 魔族の貴族令嬢の皆様は、人間界からやってきた花嫁を歓迎半分、妬み半分となっていた。そして聞いてもいないが情報をもたらしてくれる。


(側妃……。それは魔の国ならではね。人間界は一夫一婦制が大半。でも側妃が認められるなら、私がお飾り王太子妃となっても、お世継ぎ問題は勃発しない。彼女たちの言う通り、セルジュは若く美しい。お飾り妃に操を立てる必要はないし、側妃を娶ってもらって構わないわ)


 構わない──と考え、本当に?という疑問も浮かぶ。


 生贄からの花嫁へのジョブチェンは、あまりにも急なこと。理解のあるセルジュや魔王夫妻により、表向きは婚姻を受け入れ、王太子妃になるも、客人扱いをしてもらえる。かつ私は人間界から追い出されたようなものだから、ここで暮らせるだけで御の字と思っているのだけど……。


 セルジュと本物の夫婦になる……?


 想像して、即無理だと思う。


 そもそもイケメンは眺めるもので、リアル彼氏や夫にするべきではない。相手のスペックたが高ければ高いほど、こちらだってそれなりでないと恥ずかしい! 


(何より生まれる前から人間の女性を妻として迎えると定められ、恋愛の自由がなかった。でもあの美貌なら恋人の一人や二人がいてもおかしくない。なんなら彼を求める魔族の女性でハーレムができるだろう。そんな寵愛の競い合いなんて、私には無理だ。私は悪役令嬢の役目を終えた余生を、このルミナリア王国でのんびり過ごしたい!)


 と言うことで一瞬、ラブな展開も妄想したものの。私はリアリストなので、すぐに現実を踏まえ、妄想は夢物語で片付ける。


「アマレットお嬢様、そろそろ入浴といたしましょうか?」


 魔族の貴族からチクチク洗礼を受けていると、気を遣ってくれたのか。スティが声をかけてくれたが。


「えっ、もう!?」


 舞踏会といえばニ時間から三時間コースが当たり前。まだ一時間しか経っていなかった。


 驚く私にスティをはこんなことを言う。


「夜は長い方が、お二人のためです!」


 これには「それはもしや……!」と顔が赤くなる。客人待遇であることは、グラマラス美女三姉妹の侍女たちは知らない。


(結婚式はないし、文化の違いはあるけれど、魔族の婚姻でも初夜は……あるのね)


 あるとしてもきっと何もない! ただ形式的に一晩同じ部屋で……寝室で過ごすのだと思う。あの紳士的なセルジュが激変して私を襲うなんて……ない、ない!


 ということで深呼吸を一つして「分かりました。入浴をしましょう。……退出していいのよね……?」と問うと、スティがこくりと頷き、エリーが教えてくれる。


「魔族は昼間に婚姻のお祝いの食事を終えると、そのまま新郎新婦は寝所にこもることも珍しくありません。今回の夜の舞踏会は、人間の慣習に合わせただけのこと。あ、明日は、呼ばれるまで寝所には近づきませんので、ご安心くださいませ!」


 エリーの言葉にはいろいろツッコミどころが満載! 魔族は男女共にスタミナがあるようだ。


 とにもかくにも部屋に戻り、入浴となった。


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